祈りの植物|2月~家族を守る庭木
LOVEGREEN編集部
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2月の祈りの植物は家族を守る庭木。家族を災いから守る魔除け、厄除けに用いられた植物をご紹介します。
目次
魔除けの植物の3つの特徴
日本人は古来、さまざまな祈りを込めて、植物を生活に取り入れてきました。家族を災いから守る魔除け、厄除けに用いられた植物には、主に3つの特徴があります。
①とがった葉やとげを持つ植物
②香りの強い植物
③赤い花や実をつける植物
とがった葉やとげ、強い香りは、それを嫌う悪い鬼を近づけないため。また、赤色は疫病を除ける色と考えられていました。
もちろん、家族が暮らす家の周りに植える庭木にもこうした風習が伝わっています。邪気が入り込む不吉な方角である鬼門と裏鬼門に、それぞれナンテンとヒイラギが植えられたのもそんな風習のひとつです。
鬼門と裏鬼門の方向は?
現代では、鬼門と裏鬼門をあまり意識することはありませんが、古くから日本人はその方角を恐れてきました。鬼門とは、家の中心から見て北東の方角。裏鬼門は、その対角線にある南西の方角を指します。
この鬼門、裏鬼門につくってはいけないとされたのが、玄関や門、トイレや風呂、台所などの水回りの場所です。江戸時代や明治、大正、昭和前期の住居の造りを考えれば、これは理にかなった設計といえます。
日が当たらない北東にトイレや風呂があれば、寒くて風邪をひきやすかったはず。日が当たる南西に台所があれば、食物が傷みやすかったでしょう。鬼門、裏鬼門を考えた建築は暮らしの知恵でもあったのです。
難を転じる縁起のいい植物
庭の鬼門、裏鬼門に植えられた祈りの植物も、ある意味、理にかなったものが使われています。鬼門に植えられたのはナンテン(南天)。その名が「難を転じる」ということに通じると縁起物の植物になりました。
メギ科の低木で日陰にも強く、防腐効果がある葉は赤飯などに添えられます。この葉は、日当たりがいいと色が悪くなってしまうことがあるため、半日陰~日陰になるような鬼門の方角に植えたほうがいいのです。
さらに、さびしい北側の庭に、ナンテンは真っ赤な実で彩りを与えてくれます。寒風に揺れる赤い実は、私たちに元気をくれます。鬼門から入ろうとする邪気から家を守ってくれていると考えれば、なおさらですね。
魔除けのトッププレイヤー
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そして、裏鬼門に植えられたのがヒイラギです。モクセイ科の小高木で、日陰でも育ちますが、どちらかといえば日向を好みます。南西に植えるには適した植物で、これも植物の性質から見て、理にかなっています。
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ヒイラギが魔除けに使われたのは言わずもがな、鋸歯(のこぎり状の切れ込み)を持つ葉が、悪い鬼を近づけないと考えられたからです。加えて、花には香りもあります。魔除けの二刀流、トッププレイヤーなのです。
ちなみに、鋸歯は動物から食べられないための植物の自衛策です。人もうかつには近寄れません。その特徴を使って、ヒイラギは泥棒が入ってこないように生け垣にも利用されました。これも一種の魔除けといえるでしょう。
節分のしつらえや草花遊びにも
ヒイラギは、2月3日の節分にも活躍します。冒頭に紹介した写真は、ヒイラギの葉とイワシの頭を組み合わせた「ヒイラギイワシ」。玄関に飾り、葉のとげとイワシの臭いで鬼を家に入れないための節分のしつらえです。
こうした伝統的な風習が、今は忘れられがちです。魔除けや厄除けは迷信かもしれませんが、そのために使われた植物には何らか、確かに人に役立つ理由がありました。庭に植えられた木々の意味をもう一度見直したいですね。
昭和の子どもたちは、庭に植えられたヒイラギの葉を親指と人差し指でつまんで、息を吹きかけ、風車のようにくるくると回して遊んでいました。そんな光景も、今は見かけることがありません。やっぱりちょっとさびしいです。
観賞性の高い植物を植えることは暮らしを豊かにします。でもそれだけでなく、日本人が大切にしてきた祈りの植物を見直せば、人と自然はもっと近づけるのではないでしょうか。家族の暮らしはより豊かになるはずです。
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