知っておくと管理しやすい!エアプランツの生態や基礎知識
LOVEGREEN編集部
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エアプランツ(エアープランツ)って存在は雑誌やテレビ、SNSで知ってるけど、どんな植物なのかよく分からないですよね。
実際に育てているけど詳しくは知らない…。という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回はエアプランツの基礎知識をご紹介します。
目次
エアプランツってナニモノ?
エアプランツはブロメリア科(Blomeliaceae)ティランジア亜科(Tillandsioideae)ティランジア属(Tillandsia)に分類されている中南米原産の着生植物のことです。
エアプランツは俗に言う流通名で、正式名称はティランジアと言います。また、発音上の問題でチランジア、チランドシア、ティランドシアとも呼ばれています。
学名のTillandsiaはスウェーデンの医師・植物学者であるエリアス・ティルランツ(Elias Tillandz)氏が由来になっています。
流通名のエアプランツについては、エアプランツの生態が由来になっていると言われています。
では、エアプランツの生態とは一体どんなものなんでしょうか?
エアプランツの奇妙な生態
エアプランツは中南米に分布している着生植物ですが、とても奇妙な生態をしているんです!植物界広しと言えどもここまで奇妙な生態を持った植物はそうそういないと思います。
目次
生えている場所が奇妙!
エアプランツは主に中南米に分布していますが、生えている場所がとても奇妙なんです。
冒頭から出ている着生植物というワードですが、皆さんご存知ですか?
土には根を張らずに、樹皮や岩に根を張って生えている植物のことを着生植物と言います。エアプランツだけでなく、蘭の一部やビカクシダなんかも着生植物に分類されています。
普通、植物が生えている場所と言えば森や山ですよね。しかし、エアプランツは違います。
エアプランツの生えている場所
・アマゾン等のジャングル
・標高3000m地点の岩場
・谷の絶壁
・砂漠(生えているサボテンや転がっている岩など)
・沿岸部の断崖絶壁
・雲霧林(夜明け頃に濃霧が発生する標高の高い森)
・街中(電線、街路樹、家屋の屋根など)
このようにエアプランツは砂漠のような極地から街中と言ったとても身近な場所に生えているんです。
ではどうして砂漠とジャングルのように正反対の場所で生きていけるのでしょうか。それはエアプランツの水の吸収の仕方と草姿に秘密があったんです!
エアプランツの水の吸収の仕方が奇妙!
エアプランツは根から水を吸収するのではなく、葉から水を吸収します。
よくエアプランツは葉から空気中の水分を吸収するので水やりは必要ないということを耳にしますが、これは大きな間違いなんです。
確かに、雲霧林に生えているエアプランツは朝方に発生する濃霧の水分を葉から吸収しています。しかし、日本では普通、朝方に濃霧は発生しません。そのため、霧吹きやシャワーで葉を濡らしてあげる必要があるんです。
また、エアプランツは夜にしか水を吸収しないので夜に水やりをすると言いますが、乾燥していれば昼間でも水を吸収します。
この夜に水やりをするというのは、夜に行った方が乾燥がしにくく気温も低いため蒸れにくい、というのが主な理由です。
また、砂漠に生えているエアプランツは多肉植物のように葉に水を溜めることができるので、乾燥に強くなっています。
エアプランツの草姿が奇妙!
エアプランツは葉から水分を吸収すると言いましたが、実はその葉にも秘密があるんです…!
エアプランツの葉の表面にはトリコームと呼ばれる毛が生えています。このトリコームは水を長い間葉に留めておくという役割がありあます。
乾燥地帯に生えているエアプランツほどトリコームが長く、湿潤地帯に生えているエアプランツほどトリコームが短くなっています。
画像は砂漠に生えているティランジア・テクトラムです。トリコームが非常に長く、もふもふしています。
こちらは雲霧林に生えているティランジア・ブラキカウロスです。トリコームが短く、緑色に見えます。
エアプランツはトリコームの量と長さで銀葉種と緑葉種に分けられます。
トリコームが長く、白く見えるエアプランツを銀葉種、トリコームが短く緑色に見えるエアプランツを緑葉種と呼んでいます。
銀葉種は乾燥に強いものが多く、緑葉種は乾燥に弱いものが多いです。
銀葉種
緑葉種
また、ティランジア・キセログラフィカのように、葉と葉の間に水を溜めるエアプランツをタンクタイプと呼びます。
葉と葉の間に水が溜まっています。
このようにトリコームの長さや葉と葉の間に水を溜めたりすることで様々な環境に適応することができているんです!
エアプランツのタネが奇妙!
エアプランツのタネを見たことがありますか?
実はとっても面白いんです!
まるでタンポポのタネみたいですよね♪
エアプランツは遠くまでタネを飛ばすためと、樹皮や岩にタネが絡みつきやすくするために綿毛がついているんです。
蟻と共存する姿が奇妙!
エアプランツの中には蟻と共存して生活している種類(アリ植物)がいます。
主に壺型と呼ばれる胴体部分が壺のように膨らんでいるエアプランツがアリ植物になります。
蟻と共存する主な理由は、肥料と害虫駆除です。蟻がエアプランツの中に住み着くと、糞をします。その糞から栄養を取り出して吸収しているんです。
さらに、蟻はハダニやカイガラムシといった害虫を駆除してくれるガーディアンのような存在となっています。
画像は蟻が住み着いたティランジア・カプトメデューサエです。青丸が蟻で、赤丸の内側には蟻の卵が付いています。
アリ植物のエアプランツ
エアプランツの管理方法
目次
■日光
■置き場所
日光
【屋外】
屋内から屋外に出した直後に直射日光を当ててしまうと、刺激が強すぎて葉焼けを起こしてしまいます。最初は日陰に出して徐々に日光に慣らしていくか、30%~50%の遮光をしてください。
遮光するときに遮光ネットや寒冷紗を使用すると簡単に遮光することができます。遮光ネットと寒冷紗はホームセンターや園芸店だけでなく、100均でも購入することが出来ます。
オリーブなどの大きめの庭木を植えてある場合は、コルクに着生させたティランジアを庭木の枝に掛けることで遮光できます。しかし、時間帯によって直射日光が差し込む場合はやめてください。
【屋内】
屋内で管理する場合は日光不足になり、徒長してしまうことが多いのでなるべく日光が当たる場所に移動してください。
室内でも直射日光は厳禁です。レースのカーテン越し程度の日光を当てて下さい。 レースのカーテンが無い場合は、直射日光に当たると葉焼けを起こす可能性があるので30%~50%遮光した風通しの良い場所に置いておくと安心です。
日光が当てられない場合は、植物育成ライトやメタルハライドランプを導入するなどして補ってください。。
ライトやランプの種類によっては本体が高熱になり、火災の原因となることがあるので、取り扱いには充分注意してください。
置き場所
置き場は室内室外関係なく、日当たりがよく、風通しの良い場所に置いてください。風通しが悪いと水やり後に蒸れてしまい、腐って枯れてしまいます。
水やりの仕方
霧吹きで週に2、3回たっぷりとスプレーします。夏場や乾燥が気になる時期には回数を増やします。
水やりのあとは風通しのよいところで管理し、風に当ててください。
ティランジアはどの種類も共通して2~3時間濡れている状態がベストです。
【屋外】
最低気温10℃以上の季節は毎日~2、3日に一度のペースで、夕方~夜の涼しい時間帯に水やりを行ってください。
屋外は蒸れる心配がないので、水やり後に株を逆さまにする必要はありません。午前中に雨が降った日は水やりをしなくて大丈夫です。
最低気温10℃以下の季節は週に一度のペースで午前中に水やりを行ってください。夕方~夜の気温が下がる時間帯に水やりをしてしまうと、凍ってしまい最悪の場合枯れてしまいます。
【屋内】
最低気温10℃以上の季節は2,3日に一度のペースで水やりをしてください。
水やり後に風通しの悪い場所に置いておくと蒸れてしまい、腐って枯れることがあるので株を逆さまにして置いておくか、扇風機やサーキュレーターで風を当てて下さい。
最低気温10℃以下の季節は耐寒性を上げるためと、徒長を防ぐために、週に一度のペースで午前中に水やりを行ってください。夕方~夜の気温が下がる時間帯に水やりをしてしまうと、凍ってしまい最悪の場合枯れてしまいます。
冬に乾燥してきて部屋の湿度が極端に下がってきたら加湿器を使って過湿するか、霧吹きを使ってティランジアを置いてある場所付近の湿度を上げて下さい。 自然乾燥させます。 また、暖かい室内で月に1回ほど最大6時間水に漬けこむソーキングをすることもできます。ソーキングの後も風に当ててきちんと乾かしましょう。
肥料のやり方
肥料はなくても育ちますが、施肥をした方が生長が早く、花のボリュームも多くなります。
ティランジアはどの種類も葉からしか吸水することができません。そのため、肥料は液体肥料を使う必要があります。どうしても固形肥料を使いたい場合は水に適量を溶かしてお使いください。
肥料は正しい希釈倍率で使わないと、肥料焼けという葉焼けに似た状態になってしまいます。
ティランジアの希釈倍率は約1000倍です。施肥は水やりの2,3回に一度のペースか、週に一度のペースで行ってください。
施肥をした次の日の水やりでは、葉の表面に残っている液肥を洗い流すイメージで、たっぷりと行ってください。
【施肥するときの注意点】
屋内から屋外へ出した直後に1000倍希釈の液体肥料を施肥してしまうと、刺激が強すぎて肥料焼けしてしまいます。
そのため2000倍希釈から始めるか、屋外の環境に充分慣れたタイミングで施肥してください。 真夏や冬場は生長が緩慢になるので施肥の必要はありません。
病害虫の種類と対策
エアプランツが被害に遭いやすい病害虫の種類と対策方法をご紹介します。
ハダニ、アブラムシ、カイガラムシ、ナメクジ、ダンゴムシについてはLOVEGREEN内で対策方法が詳しく書かれているので、そちらを参考にしてみてください。
【ハダニ】
黄緑や赤い体色をした0.5mmほどの小さな害虫です。葉の裏側に潜み吸汁します。ハダニに吸汁された箇所は白い斑点状になるのですぐ分かります。そのまま放置しておくと最悪の場合枯れてしまいます。
【アブラムシ】
アブラムシは2~4mmほどの小さな害虫です。幼虫、成虫ともに葉や蕾を吸汁します。群生していることが多く、早めに対処しないと手遅れになる場合があります。
アブラムシはスス病などのウイルス病の媒介者で、吸汁されてしまうとそこからウイルスがティランジアの中に侵入し、病気を発症させます。
また、発症しなくても吸汁されたことで体力がなくなり、そのまま枯れてしまう場合があります。
【カイガラムシ】
3mmほどの小さな虫で、白い綿毛のようなものを背負っています。吸汁して生長していくと、身体からワックスなどを分泌し、身体を守ろうとします。
カイガラムシに吸汁されると株が弱ってしまい、そのまま枯れてしまうことがあります。
【ナメクジ】
葉や花芽など、食べれる場所ならどこでも食害する性質の悪い害虫です。
大食漢でもあるので、梅雨時などナメクジが発生しやすい時期は夜に見回りをしてください。
少し食害された程度なら生長に問題はありませんが、葉の大半を食害されたり、ティランジアの根元付近の基部を食害された場合は枯れてしまう可能性があります。
【ダンゴムシ】
柔らかい花芽や発芽したての株、トリコームを食害します。ナメクジより食害される可能性は低いですが、地面の近くにティランジアを置いている場合は注意が必要です。
一度食害されたトリコームは復活しないので、注意してください。
【ヤスデ】
柔らかい花芽やトリコームを食害します。ナメクジより食害される可能性は低いですが、地面の近くにティランジアを置いている場合は注意が必要です。
一度食害されたトリコームは復活しないので、注意してください。
忌避剤や誘引剤を使って退治するか、割り箸などで見つけ次第捕殺してください。
【バッタ】
イナゴなどのバッタは葉の硬さに関係なく食害します。また、食害する量も多いので気付かないでいると手遅れになっていることがあります。
割り箸などで見つけ次第捕殺してください。防虫ネットも有効です。
【黒カビ】
梅雨時など湿度の高いときに風通しの悪い所に置いておくと、黒カビが繁殖して黒い斑点が葉に出ることがあります。
少量なら気にする必要はありませんが、黒カビが大繁殖して葉を覆ってしまうと枯れてしまいます。
繁殖させないようになるべく通気性の良い場所に置いて下さい。気になるようなら、カビに侵された葉を切り取ってください。
夏越しと冬越し
【夏越し】
気温が40℃以上になった場合は日陰に移動してください。30~50%程度の遮光をすると葉焼けを防止することが出来ます。
水やりは毎日~2、3日に一度のペースで夕方~夜に行ってください。
午前中に行うと暑くなり煮えてしまいます。 活力剤を1000倍に希釈して水やりの2~3回に一度のペースで行うと夏バテを防止できます。
【冬越し】
気温が10℃以下になったら耐寒性を上げるためと、徒長を防ぐために水やりを週に一度のペースで午前中にたっぷり行ってください。
気温が10℃を切らないように室内に入れるか、温室内でファンヒーターなどを使って保温してください。ファンヒーターなど暖房器具を使う場合は火事に注意してください。
活力剤を1000倍に希釈して水やりの2~3回に一度のペースで行うと耐寒性を上げられます。
植え付け方と着生方法
いかがでしたでしょうか。エアプランツの基礎知識が少しでもお分かり頂ければ幸いです!
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