椿(ツバキ)の育て方、病害虫についてとサザンカとの違い
峰亜由美
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日本人の美意識と伴奏するように寄り添う代表の様な花、椿(つばき)。椿は縄文時代から現在まで、様々な時代背景に馴染みながら人々に愛され続けている植物です。今回は椿によく似た花、山茶花との違いや、素敵な花言葉、育て方、病害虫についてをご紹介致します。
目次
椿ってどんな植物?
日本を代表する花「椿」。その種類は6000種以上。
椿は常緑性の樹木で15m~20mの高さになるものもあります。庭木として見られるものは5m~6m程で生長は遅く寿命が長い樹木です。
花の色や形も多く、一重咲き、二段咲き、八重咲き、獅子咲き、列弁咲き、牡丹咲き、連華咲き、唐子咲き等があり、花の大きさは、極大輪(13cm~15cm)大輪(10cm~12cm)中輪(7cm~9cm)小輪(4cm~5cm)極小輪(4cm以下)があります。
椿は日本では古くから愛され、縄文時代に遡り6000年前には花だけではなく櫛としてその材料が使われました。万葉集でも多く詠われ、室町時代に茶の湯が全盛期を迎えた頃には茶花の主役としても愛されました。江戸時代に入ると多くの大名達がその愛好家として250年も椿を愛でる文化を楽しんだ様です。18世紀には西洋に渡り西洋でも人気を博し愛された椿。あのココシャネルが一番愛した花とも言われています。
現在も日本だけではなく西洋でも椿は愛され続け、その美しい花は人々の心を魅了し続けています。
植物名 | 椿 |
学名 | Camellia japonica |
英名 | Camellia |
科属 | ツバキ科ツバキ属 |
原産国 | 日本 |
椿の花言葉
日本でも古くから愛され、西洋でも愛されている椿。日本と西洋では花言葉も違う様です。
椿を見かけた時、ふと素敵な花言葉が頭の中に浮かんだら嬉しいですね。
<赤い椿の花言葉>
日本「控えめな素晴らしさ」「謙虚な美徳」
西洋「You’re flame is heart(あなたは私の胸の中で炎の様に輝く)」
<白い椿の花言葉>
日本「完全なる美しさ」「至上の愛らしさ」
西洋「adoration(愛慕 崇拝)」「loveliness(愛らしい)」
<ピンクの椿の花言葉>
日本「控えめな美」「控えめな愛」
西洋「longing(恋しく思う)」
椿(つばき)とよく似た花、山茶花(さざんか)との違い
椿(つばき)と山茶花(さざんか)どちらも庭木として親しまれている植物ですが花も葉もよく似ていています。これは?椿?山茶花?と迷ったときの簡単な見分け方をご紹介します。
先ずは開花時期ですが2つを比べてみます。
椿は寒椿(11月~2月)と椿(1月~5月)
山茶花は春山茶花(2月~4月)と山茶花(11月~2月)
山茶花も椿も11月頃から5月頃まで、入れ替わり立ち代わりバトンタッチするように開花時期が続きます。花が咲いている時期の見分け方は椿は花が丸ごと落ちますが、山茶花は花びらが一枚づつ散ります。
寒椿(かんつばき)は花びらが一枚づつ散り、春山茶花(はるさざんか)も花びらが一枚づつ散ります。寒椿の花は小ぶりで山茶花との見分け方が難しいく、何だかナゾナゾの様になってきましたが、その場合、葉で区別します。
葉の裏を見ると椿はツルツルなのに対して山茶花の葉は裏は中央脈(葉の真ん中にある脈)に褐色の繊毛(産毛の様な毛)が生えています。
この見分け方で、花が咲いていない6月~10月の期間も区別する事が出来ます。普段はあまり気にする事もない葉の裏の小さな世界に目を向ける楽しさもまた、植物と過ごす素敵な時間です。
椿の育て方
選び方
椿は花が開花する1月~2月が苗の購入の適期です。花の形や色合いなど、直接確認し自分の好みの品種を探しましょう。病害虫に侵されておらず、葉の色が濃くてつやのあるものを選びます。実生苗や挿し木1年生など小さな苗を購入する場合はあまり花が咲いていないものの方が良いです。極端に花数の多い株は株が弱っている可能性がありますので注意しましょう。目的の品種がある場合、少し割高ですが接ぎ木苗を購入すると失敗がありません。
種まき
椿の種まきは種が成熟して黒くなる9月~10月に採り撒き(種を採りそのまま撒く事を採り撒きと言います)します。採り撒きできない場合は湿らした川砂に種を入れ、冷蔵庫で保管し春にまくようにしましょう。赤玉土単体か赤玉土と鹿沼土を等量混ぜたものに種の3倍の深さの穴をあけて種をまき土をかぶせます。発芽率はさほど良くないので、少し多めにまいたり殻にペンチで少しだけひびを入れておくと良いです。発芽後は1本ずつ分けて植え替えます。この時、根を半分程度切ってから植えると側根が伸びやすくなり、強い苗に育ちます。
種まきの場合、種から同じ花が咲くとは限らず、接ぎ木した元の花が咲く場合が多くあります。
現在咲いている花の椿を増やしたい場合は、挿し木で育ててみる事がおすすめです。
植え付け
椿の植え付けは花後の3月~4月、または花芽が固まった9月~10月が適期です。地植えの場合は根鉢の倍程度の幅の穴を掘り、土を調整した後に根鉢を崩さないように植え付けます。この時に深植えにならないように注意し、根鉢の表面が地と同じ程度になるように調製します。水極めをしてしっかり植えた後は根が活着するまで支柱で支えてあげると良いでしょう。鉢植えにする場合はポットの大きさよりやや大きめの鉢に植え付けます。目安としては1~2号ほど大きいもので、あまり大きすぎると株が弱る原因になります。鉢底には大粒の鹿沼土を敷き水はけを良くするとともに、酸性に傾けます。植え付けた後は1~2週間程度日陰で養生し、その後徐々に日に慣らしていきます。
剪定・切り戻し
椿は樹形が乱れることはあまりないですが、だんだん枝が込み合ってきますので花が終わった後4月~6月に剪定を行います。剪定は懐枝や分岐している枝を間引くように分岐部分から切ってあげます。また、頂点も切り戻してあげると高さを抑えることができます。6月になると花芽の形成が始まりますので、花後できるだけ速やかに剪定してあげると花数が落ちません。強剪定は株を弱らせますので、毎年少しずつ形を整えていくようにしましょう。切った枝は挿し木の挿し穂にすることができます。
増やし方(株分け、挿し木、葉挿しなど)
椿の花が咲くころに旅行先や近くの家で美しい椿に出会うことがあります。そんな時はお願いして少し枝を分けてもらいましょう。実の場合は同じ花が咲くとは限りませんが、枝を挿し木にすることで同じ椿を増やすことができます。適期は6月~7月ですが、室内で管理すれば確率は落ちますが一年中、挿し木が可能です。その年に伸びた若い枝を10~20cm程度に切り、大きな葉は蒸散を防ぐために半分に切り取ります。鉢に小玉の赤玉土を入れ十分に給水させた後、枝を水揚げして挿します。その後、鉢ごとビニール袋で包んで数か所空気穴をあけて湿度を保ちながら明るい場所で管理します。また、枝を切らずに発根させる「とり木」もできます。枝の樹皮を2cm程度はぎとり、水を吸わせたミズゴケでその部分を包み込み、ビニール袋で密閉します。乾かないように管理するとミズゴケから根がのぞきますので、株から切り取って土に植えてあげましょう。
病害虫
椿につく害虫はチャドクガというガの幼虫が花後と夏場に発生します。葉の裏や新芽の部分に群がって葉を食害します。この幼虫や幼虫の死体の毛に少しでも触れると痛痒い発疹が出てしまうので絶対に素手で触らないように注意しましょう。葉の裏に黄色い卵塊を見つけたら葉ごと切り取って処分します。また、幼虫を見つけた場合はピンセットなどで捕殺するか枝ごと処分すると良いです。この時も肌の露出を極力抑えるようにし、発疹がでたら皮膚科を受診するようにしましょう。また、カイガラムシも椿につきやすい虫です。カイガラムシはすす病を誘発するので、5月~6月にかけてカイガラムシやチャドクガ、病気予防のために殺虫剤や殺菌剤を散布するようにします。
病気は花期に花腐菌核病が発生し、花びらに茶色い斑紋がでて落ちてしまいます。花が落ちても菌は生きているので、花期中は下に落ちた花をこまめに処分するようにしましょう。また、すす病は見た目も悪くなりますし、光合成も抑制されるので、原因であるカイガラムシを早めに駆除します。その他にも褐斑病やもち病、炭疽病などが出る場合がありますが、椿自体は病気に強い植物ですので、発生初期に罹患した葉や枝を取り除いて様子を見ましょう。
褐斑病:最初褐色の小さい斑点がぽつぽつできます。某気が進行すると、同心円状に斑点が広がっていきます。被害は下葉から発生しますが、新芽に感染するとさらに被害が大きくなってしまいます。
もち病:ツツジ類、ツバキ類だけに発生する担子菌に属すカビです。発生時期は春から秋、雨が続いて日当たりが少ないと発生します。若い葉が餅のように肉厚になり、球状に膨れてきます。表面はつやのある薄い緑色をしています。日が当たると薄赤く変色します。病気が進むと、モチ状になっている表面は白いかびに覆われて、その後つぶれたように干からび落葉してしまいます。
炭疽病:炭疽病(たんそびょう)は、カビが原因となっておこる病気のこと。様々な野菜や植物の葉や果実に、黒や灰色のカビの斑点が発生し、葉には穴が開き、果実は窪みます。広がってしまうと元に戻るのは難しいので、早期発見することがカギになります。
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