冬に咲く花20選~冬の花散歩

金子三保子
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自然界の中では花が少ない冬に咲く花をご紹介します。
落葉樹は落葉し、葉が少ない木々の景色の中で咲く花は、ひときわ目を引きます。寒い季節ですが冬の花を探しに出かけてみませんか。
目次
冬に咲く花木
1.山茶花(サザンカ)、2.椿(ツバキ)
サザンカ
とてもよく似ている花のサザンカとツバキ。サザンカの開花時期は晩秋~2月ごろ、ツバキの中でも寒椿(カンツバキ)と呼ばれる種の開花時期は11月~2月の冬に開花します。どちらも花の少ない冬に、木一面にたくさんの花が開花します。
ヤブツバキ
サザンカとツバキの見分け方はいくつかありますが、開花中なら見分け方は簡単です。ツバキの花は花ごとぼたっと落ちるのに対して、サザンカは花びらが散るように落ちるので木の下に落ちている花で見分けることができます。
▼サザンカとツバキの詳しい見分け方はこちらをどうぞ
3.イチゴノキ
イチゴノキは、ツツジ科の常緑の低木でイチゴのような実がつくことから名づけられました。イチゴノキの花は、晩秋から12月の冬にかけて白い花が開花します。花の形は同じツツジ科の庭木である、ドウダンツツジやブルーベリーの花に似た、白くて小さな壺型の形状をしています。
イチゴノキは冬に咲いた花が翌年の秋に実になることから、花と実を同時に見ることができる珍しい花木です。
4.冬桜
あたみ桜
桜の開花宣言で用いられるのは「ソメイヨシノ」という桜ですが、桜にはたくさんの種類があり、中には晩秋から冬に咲く桜もあります。
写真のあたみ桜は開花が1月~2月の冬で、開花期間が長いのが特徴の桜です。
晩秋から冬に咲く桜は他にもたくさんの種類があります。「十月桜」という年2回咲く桜もあり、10月~1月くらいまでが開花時期です。
5.梅
寒い季節に咲く花木の代表のような梅は中国原産の落葉高木。冬の終わりから早春にかけて開花します。梅には白梅から紅梅まで、様々な品種があります。また、梅には花を楽しむ「花梅」と初夏になる実を楽しむ「実梅」があります。
▼梅の品種や花梅、実梅についてはこちらをどうぞ
6.蝋梅(ロウバイ)
蝋でできたような花を咲かせる蝋梅(ロウバイ)は、12月~2月が開花時期の花木です。蝋梅(ロウバイ)の魅力と言えば香り。花が少ない冬の自然の甘い香りはとても貴重な存在です。
7.マルバノキ
丸い葉っぱがかわいらしくてシンボルツリーとしても人気のマルバノキは、紅葉した葉が落葉した後の冬に小さな花を咲かせます。一般的な落葉樹は、花~葉~紅葉~落葉の順が一年の生長の流れですが、マルバノキはそれとはまったく逆。葉が落葉した最後に花が咲くという特徴があります。
8.ヤツデ
古くから庭木として、縁起木として庭に植栽されているヤツデ。小さくて目立ちませんが、晩秋から冬にかけて花が開花します。写真はつぼみの状態です。
ボール状の一粒、一粒が花火のようにはじけて小さな花が開花し、その後緑の実となります。実の状態のヤツデは、最近は切り花としても流通するようになりました。
9.タイワンツバキ(ゴードニア)
タイワンツバキはナツツバキに似た白い花が12月~2月に開花します。ツバキ科ですが属は違い、ツバキとは葉の形が違うので見分けることができます。
10.ユリオプスデージー
ユリオプスデージーは秋、冬、春の11月~5月にかけて、マーガレットに似た黄色い可愛らしい花を咲かせます。苗で流通している時点では草花風ですが、ユリオプスデージーは常緑の低木で、何年か経つと主軸の茎は木化してきます。冬の花が少ない季節に長期間開花する草花は貴重な存在です。
11.マホニア・コンフューサ
マホニア・コンフューサはヒイラギナンテンの仲間で、冬に黄色い花が開花します。最近、マンションや戸建て住宅のエントランスの植栽などにもよく使われています。
冬に咲く草花
1.クリスマスローズ
性質が強く、寒い冬から早春にかけて開花する人気の花、クリスマスローズ。毎年新品種が登場し、色や咲き方などがとても豊富でマニアも多い常緑多年草です。原産がヨーロッパなので寒さにもとても強い花です。
クリスマスローズという名前は、ヨーロッパのイギリスやドイツのような気象だと、クリスマスの頃に咲くことから名前がついています。実際にクリスマスの頃に咲く品種は、原種の「クリスマスローズ・ニゲル」などです。
その他、色々な系統がありますが、流通しているクリスマスローズのほとんどの開花時期は年明けとなります。流通としては、ニゲル種がクリスマス前の11月中旬以降くらいから開花苗が出回り始め、年明けに様々な品種が流通します。年内に開花し始めるニゲル種と春に開花するその他の系統のクリスマスローズをうまく組み合わせると、12月~春まで常にクリスマスローズが咲いているという植栽を作ることができます。
クリスマスローズ
クリスマスローズは、クレマチス、ラナンキュラス、アネモネなどと同じキンポウゲ科の植物です。クリスマスローズは、冬の花が少ない時期に花を咲かせる常緑の植物です。
日本ではヘレボルス属を全てひとくくりにクリスマスローズと呼びますが、本来のクリスマスローズはクリスマスの頃に開花する「ヘレボルス・ニゲル」を指す名前です。
他には咲き方や色が豊富な「ヘレボルス・オリエンタリス」や、グリーンの特徴的な花の形状が面白い「ヘレボルス・フェチダス」等、たくさんの種類があります。
クリスマスローズにはグリーンの葉を低く繁らせた中から茎を長く伸ばす有茎種と、茎の低い無茎種があります。
クリスマスローズ・ニゲル
▼クリスマスのころに花が咲くクリスマスローズ ニゲル
2.ポインセチア
日本ではクリスマスをイメージする植物の筆頭のポインセチアは、クリスマスが近づく頃になると、街のディスプレイや庭や室内の彩としてあちこちで見かけることができます。クリスマスの花として定着し、寒い季節の植物だと思われがちですが、ポインセチアは本来は熱帯の植物。鉢植えを購入したら、日の光が当たる暖かい室内で管理しましょう。
ポインセチア
ポインセチアは、トウダイグサ科トウダイグサ属の常緑性低木です。赤と緑が特徴的なポインセチアは、クリスマスの定番の植物として冬になると多くのお店で飾られ、街を彩ります。花屋さんや園芸店で鉢植えのポインセチアが出回るのもこの時期です。
ポインセチアの赤く色付いた花に見える部分は苞で、その中央に小さく黄色に集まった部分が花です。花の周りの苞は生育期の夏の間は緑色をしています。日照時間によって色づく性質のため、10月頃から短日処理という育成方法で段ボール箱などを被せ16時くらいから12時間真っ暗になる環境を作ってやると、12月頃に葉を赤くすることができます。
ポインセチアは冬に見かけることが多いため、寒い季節の植物だと思われがちですが、実は熱帯の植物なので、冬は室内で育てるのが適当です。室内でも玄関や窓辺の暖房が切れた後に気温が低くなる場所では寒さで枯れてしまうため、置き場所に気をつける必要があります。
ポインセチアは、日本では鉢植えで育てる事が多く草丈も低く小さなサイズですが、本国メキシコのポインセチアは、地植えで数メートルの高さもあり野趣あふれる樹木です。日本でも沖縄などでは地植えで数メートルの高さに育ち、庭木としても楽しまれています。
3.パンジー、ビオラ
パンジー、ビオラは本来は春の花ですが、最近では苗は10月くらいから園芸店に並び始め、流通のピークとしては冬の間となっているため、公園や公共施設の冬の花壇で一番よく見かける花のひとつです。寒い季節は花が少ないですが、気温が緩みだすと一気に花が増えてきます。冬から春まで長く足元を彩ってくれる草花です。
4.ツワブキ
ツワブキは晩秋から12月の冬の始まりごろに花が咲くキク科の常緑多年草です。日本全国で見かけることができ、葉が斑入りの園芸品種もあります。
ツワブキ(石蕗)
ツワブキ(石蕗)は、関東以南の海岸部や山林に自生するキク科の多年草です。秋になるとキクに似た黄色い花を咲かせます。花の盛りが長く日陰でも良く育つので公園や庭園でよく見かけます。タンポポのように綿毛をつけた種子が風に飛んでいくさまもまた風情があります。 岩の上など厳しい環境でもたくましく育つことから、「石蕗」と書いてツワブキと読ませます。日本原産だけに育てやすく、塩害や日陰にも強い丈夫さが特長。
ツワブキ(石蕗)は斑入り種や八重咲種もあり、盆栽として愛でられている他、樹木の下草やグランドカバーにもよく用いられています。 九州を中心に山菜として広く食用になっており、宮崎県・日南市では市の花に指定されています。
5.ハボタン
キャベツのような見ためで、昔から花が少ない冬の花壇やお正月の装飾として使われてきた葉牡丹(ハボタン)。最近は新品種が次々に作り出され、従来のイメージを覆すような品種もでてきました。
以前は葉牡丹(ハボタン)と言えば鉢もののイメージが強かった植物ですが、最近は切り花としても多品種が出回っていて、葉の色やフォルムが素敵な葉牡丹(ハボタン)がたくさん流通しています。植栽としては葉の状態の冬に使いますが、春暖かくなるととう立ちして黄色い花が開花します。
冬に咲く球根の花
1.シクラメン
原種シクラメン
冬のガーデニングの代表花のようなシクラメン。シクラメンもたくさんの品種がありますが、庭で育てるなら「ガーデンシクラメン」や「原種系のシクラメン」、室内で育てるなら鉢ものとして出回る「シクラメン」と、どこで育てるかによって種類を選ぶことが大切です。次から次へと花芽が上がり、ワンシーズンでたくさんの花が咲くので冬の花が少ない季節を華やかにしてくれる存在です。
ガーデンシクラメン
ガーデンシクラメンとは名前からもわかるように、シクラメンを品種改良した品種です。シクラメンは冬に室内で楽しむ鉢花の代表ですが、ガーデンシクラメンは、耐寒性があり寒い冬も屋外で楽しむことができます。寄せ植えなどに使う冬のガーデニング植物の定番として良く用いられます。
寒さに弱いシクラメンのウィークポイントを克服するため、ミニシクラメンの中から特に耐寒性の強い系統を選抜し、冬に屋外でも育てられるように改良されたものがガーデンシクラメンです。冬から春にかけて次々に花を咲かせ、花の少ない時期のお庭を明るく盛り上げてくれます。花の色はシクラメンとほぼ変わらず赤や白、ピンクなどがあります。花形もバリエーションが豊富で、選ぶ楽しみが広がっています。
2.水仙(スイセン)
日本水仙(ニホンズイセン)
たくさんの品種がある球根の花、水仙(スイセン)。品種によって、秋咲き、冬咲き、春咲きなど、開花時期が違います。
冬に咲く代表的な品種としては、房咲きで咲く「日本水仙(ニホンズイセン)」。お正月の生け花の花材として、切り花でもたくさん流通しています。
水仙(スイセン)
水仙(スイセン)は、早春に花を咲かせる春を告げる球根植物のひとつです。白と黄色以外にピンクや緑、オレンジなど、色とりどりの花が咲きます。水仙(スイセン)の園芸品種の数は数万品種もあり、とても種類が豊富です。品種によって一本の茎から一本の花が咲く種もあれば、日本水仙のような房咲き種もあります。最近では八重咲種など、新品種の水仙(スイセン)が毎年のように登場します。水仙(スイセン)は、主に冬咲きと春咲きの品種が多いですが、中には秋に咲く品種もあります。
水仙(スイセン)は、数年間は植えっぱなしで管理でき、環境が合えば球根が年々増えていくのでガーデニング初心者にはおすすめの球根の花です。球根をまとめて植え付けておくと、年々分球し、とても見事な空間となります。日本全国には、たくさんの水仙(スイセン)の群生スポットが存在します。
3.スノードロップ
別名「待雪草」、「雪のしずく」、「雪の草」などの名前を持つスノードロップは、冬の終わりから春の入り口のまだ寒いころの雪の残る中でも花茎をすっと伸ばし、うつむくように一輪ずつ花を咲かせます。スノードロップの草丈は10~20cm。地面をよく見ていないと、見逃しそうなくらいひっそりと開花する姿がとてもかわいい球根の花です。
4.ネリネ(ダイヤモンドリリー)
ネリネはヒガンバナ科の球根植物で、ヒガンバナはお彼岸の頃の秋に花が開花するのに対して、ネリネは11月~12月ごろの晩秋から冬に開花します。ネリネの花弁は、光に当たるとキラキラと輝くことからダイヤモンドリリーの別名があります。球根植物は花の開花期間が短い花が多い中で、ネリネはひとつの花がとても長持ちするのも冬に咲く花ならでは。
ネリネ
ネリネはヒガンバナに良く似た、秋咲き球根植物です。切花でも鉢花でも流通しています。花びらに光沢があり、キラキラと光るので、ダイヤモンドリリーという名前でも親しまれています。開花期間も長く、冬の花が少ない時期に庭に彩りを与えてくれます。
ネリネの花は、小さなユリの花の集合体というような形状をしています。花びらが反り返ったように開き、雄しべと雌しべが花芯から外に飛び出すように咲きます。その咲き方はヒガンバナに似ています。
花後、葉が伸びてきます。この葉は光合成を行い、翌年の為に球根を太らせます。10月~12月の寒い時期に開花しますが、冬が苦手な植物なので、霜に当たらないように注意する必要があります。ネリネは、夏の加湿と冬の霜に気をつければ、数年植えたままで花を咲かせます。分球でも増えていくので、長く楽しめる植物です。
枯れ木のように見える落葉樹が多い冬の景色の中で咲く冬の花は、凛としてひときわ引き立つ存在です。少し時間をとって、冬の花を探してお散歩してみませんか。
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