山茶花(サザンカ)の剪定方法と害虫「チャドクガ」について

小野寺葉月
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秋から冬にかけて開花する山茶花(サザンカ)。今回、山茶花(サザンカ)の剪定方法とつきやすい害虫「チャドクガ」の対策についてご紹介します。
目次
剪定(せんてい)とは
樹木の枝を切ることで形を整えたり、風通しを良くしたりすることの総称です。庭木のお手入れの中のひとつです。見た目を美しくするだけではなく、木が栄養を効率よく吸い上げたり、生長を促進したり、病害虫の繁殖を予防することもできます。剪定時期は木の種類によって異なります。
山茶花(サザンカ)の剪定時期
山茶花(サザンカ)の剪定に適しているのは2月から4月にかけてです。花が終わった後、剪定に取り掛かるのが良いでしょう。ただ4月は後述しますが害虫も動き出す時期ですので、虫が苦手な方は3月ごろが剪定にちょうど良い時期です。
剪定してはいけない時期
春から6月ごろまで新しい枝が伸びていく時期なので、6月以降は花芽(つぼみがついている芽)を形成する時期です。この時期以降は花芽を落としてしまい、花が咲きにくくなる可能性があるので、花を楽しみたい場合は時期を考えて剪定しましょう。
山茶花(サザンカ)の剪定方法
山茶花(サザンカ)は花が終わった後新しく伸びた枝の先に、翌年花を咲かせます。なので、剪定をしなくとも花は咲くのですがそのままにしておくと樹冠がどんどん大きくなってしまったり、枝が込み合ってしまいます。枝が込み合っていると風通しが悪くなるので、害虫発生しやすくなってしまいます。あらかじめ剪定する形を決めて、毎年同じくらいの樹形を保つのがオススメです。
自然樹形に近い形で仕立てる時
枝ごとに赤い印のところで剪定して、樹形を整えていきます。
丸いフォルムに樹形を整えた山茶花(サザンカ)です。
山茶花(サザンカ)を剪定する手順
①不要枝を剪定
②交差している枝、幹の方に向かっている枝、下方に下がっている枝(=不要枝)を根元から剪定
③枝ごとに葉を3枚ほど残す程度で、葉のすぐ上で剪定
生垣で使う場合や形をしっかり作りたい時(楕円形仕立てなど)
①全体の形を決めて刈り込みばさみなど剪定
②生垣を作るときは角を意識して作ると綺麗に見えます
生垣などで刈り込みばさみを使用するときは、ハサミを持つ左手を固定し、右手だけ動かすようにすると、刈り込みすぎることもなく、安定して刈り込めます。
刈り込んだ後、枝が生垣のさきに出ている場合は少し内側で枝を切っておきます。
チャドクガには要注意!
サザンカやツバキにはチャドクガが付きやすく、また葉がところ密集したところや、葉裏に卵塊がついていることがあるため、剪定時には十分に注意します。葉をチェックして、葉に虫食い跡があれば慎重に。剪定を進めましょう。
チャドクガ発生カレンダー
1~4月ごろは葉裏に卵がついています。卵は、キャメル色のモヘアの毛糸が付いたような状態です。この毛に触れるだけでもかぶれてしまうことがあります。また、4月~5月ごろ、気温が上がってきたころに幼虫が発生し始めます。6~7月ごろには幼虫が成虫になり、卵を産み付けます。その卵が8~9月に幼虫になり、10月に成虫になったチャドクガがまた卵を産み、そのまま越冬します。
剪定する前に木全体をよく見ます。虫食いの跡があったら要注意です。
穴あきだけでなく、葉が茶色く透けているところも虫食いの跡です。こういった跡がある葉も要注意です。
チャドクガに刺されないために
チャドクガに刺されないためには剪定時の服装が大切です。
チャドクガの幼虫はあごの力がないので集団で行動することで、葉を食べることが出来るのです。
チャドクガに刺されないためにサザンカを剪定するときは服装にも気を付けて実施しましょう。なるべく素手ではなく、手袋をしたり、首にタオルを巻くなど肌の露出を抑えます。
チャドクガに刺されない服装はこれだ!!!
①肌の露出はなるべくしないようにします。
長袖長ズボンはもちろんのこと、手袋、首にタオルを巻く、長靴をはくようにし、顔の周りも皮膚が出ないように帽子、メガネ、マスクをつけましょう。割りばしなどがあるとチャドクガが補殺しやすいです。
②風の強い日は作業はしない
チャドクガは毛に毒があり、毛に触れると肌が荒れてしまいます。毛は抜けやすく、風が吹くと飛んでいきますので、風が強い日は作業しないほうが良いでしょう。
③毎年花が終わったとに剪定する
定期的に剪定を行うことで、虫が発生しにくくなりますし、剪定しておくことで木の変化に気づきやすくなります。
幼虫がすでに発生している場合はどうする?
また、幼虫がすでに発生している場合は、無理に作業をせず、まずは薬散などで対応しましょう。薬はベニカX、ベニカXスプレー、ベニカXファインスプレー、ベニカJスプレー、オルトランCなどが有効ですが、スプレータイプがおススメです。その後、時間をおいて剪定することをお勧めします。
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剪定するべき枝とその名前
まず外側から、と行きたいところですが、慣れてない場合は内側や幹周辺から生えている不要な枝から落としていきましょう。剪定時期や剪定方法は種類によって異なりますが、剪定するべき枝はほとんど同じです。
剪定するべき枝のことを「不要枝(ふようし)」「忌み枝(いみえだ)」などといいます。新芽がついているものもあるので気を付けて切っていきます。
画像左上から、反時計周り順で説明します。
①懐(ふところ)枝
幹付近から伸びた枝。日が当たりにくく、空気もこもりがちなため、害虫の温床になりやすい。
②徒長枝
枝から真上に伸びすぎてしまった枝。雨風などで折れやすいことと、害虫の温床になりやすい。
③かんぬき枝
主幹をかんぬきのように横に貫いて左右対称に生えている枝。全体の樹形のバランスを見ながら、左右どちらかを剪定する。
④交差枝
他の枝と交差してしまっているもの。樹形を考慮して、不要な枝を剪定することが必要。
⑤からみ枝
その名のとおり、枝が絡み合ってしまっているもの。
⑥下がり枝
垂れ枝ともいい、横に伸びた枝から下に向かって伸びている枝。
⑦胴吹き枝
幹吹きともいい、幹の根元付近から上に伸びた枝。樹木の上部分に栄養がいかなくなってしまうため、早めの選定が必要です。
⑧ヤゴ・ひこばえ
樹木の根元から生えてくる枝。樹形の見栄えが悪くなるとともに、胴ふき枝同様、樹木の上部分に栄養がいかなくなってしまう。また、躓きやすくなる。
⑨立ち枝
通常横に広がるはずの枝がまっすぐ伸びてしまったもの。樹形に悪影響があります。
⑩車枝
枝の一部分から多数の枝が出ているもので、車輪状に枝が伸びているもの。
⑪平行枝
複数の枝が平行に伸びてしまっている枝。そのままにしておくと下の方の枝の日当たりが悪くなってしまう。
⑫腹切枝
幹と交差する太い枝のことを言います。
⑬逆さ枝
幹に向いて生えてしまっているもの。
以上の不要枝を落とすだけでも、すっきりすることがあります。
剪定のいろいろ

透かし剪定
不要枝を落としても、まだ込み入っている枝スペースがある場合は、全体が均一になるように透かし選定をしていきます。
伸びすぎたり混みすぎたりしている枝を適度に透かす剪定方法です。枝の密度を適度にすることで、日当たりや風通しが改善できます。風通しを良くすることで病害虫の予防にもります。樹形を良くすることが出来ます。大きくなり過ぎた樹木を小さくすることを目的とした強剪定と、枝先の不要な枝をおとす弱剪定があります。
剪定に必要な道具
剪定バサミ
花卉の茎から直径1.5㎝くらいまでの枝なら剪定が可能。手になじみが良いもので、軽めのものを選ぶようにしましょう。通常サイズより1回り小さい女性用のものや、左利き用のハサミもあります。
植木バサミ
刃先がとがっており、刃部分も細いため、剪定バサミより細かい作業に適しています。込み入った枝の剪定などに。直径1cmの枝までが限度です。無理に太い枝を切ろうとすると刃がこぼれやすくなるので気をつけましょう。
刈り込みバサミ
生垣やトピアリーなどの広い面積を刈り込むのに適しています。柄は真中程を持つようにします。
高枝切りバサミ
高いところの枝を切るためのハサミです。慣れない場合はグリップを握って使用するタイプが使いやすいです。
高枝ノコギリ
高枝切りバサミのハサミ部分がノコギリになっているタイプです。ハサミタイプよりも太い枝の時に使用します。その際は、枝が自分の方へ落ちてこないよう、注意しながら進めます。
脚立
あると何かと便利な脚立。使用する場合は切りたい枝の真下に置くのではなく、少し手前に引いた位置に置くこと。切りたい部分を斜めに見上げるようにして使います。
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いかがでしたか?
山茶花(サザンカ)を毎年きれいに咲かせるためには毎年の花後剪定が大切です。剪定は植物を楽しむために必要な知識です。剪定をするようになると、植物のことをおのずと観察するようになるので、きっとたくさんの発見があると思います。植物ともっと仲良くなって素敵なボタニカルライフを!
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