【植物と暮らす4コマ】「フタバちゃん」-お盆と精霊馬編-
小野寺葉月
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お盆に飾る精霊馬はナスが「牛」、キュウリが「馬」。今年はフタバがミニトマトで「タマちゃん」も作ってくれた!
東京のお盆、フィリピンから思うこと
こんにちは、イラストレーターの小野寺葉月です。もうすぐ東京はお盆を迎えます。東京出身で親戚もほとんど東京におり、田舎がなかった私はお盆というのはずっと7月13日から16日までのものだと思っていました。近所にショッピングセンターもなく、スーパーでも8月の時にお盆のコーナーなどはなかったような気がします。就職して働いてるときも「お盆の流入・流出」などと上司に言われても全く理解できず、「8月?お盆7月に終わったよね?」と思っていました。世間知らずですよね。
うちのお盆はお墓の掃除とお参りがあります。仏壇も掃除をし、盆提灯を出し、お供えの果物やハスの葉やほおずき、お花、キュウリとナスで作った精霊馬(しょうりょううま)を飾ります。お坊さんが家にお経をあげに来てくれます。盆提灯が暗い部屋できれいに回るのを見てるのが好きでした。クリスマスツリーのライトがチーカラチーカラ点滅するのと同じくらい好きでした。「チーカラチーカラ」というのは母が使っていたオノマトペで、今回コラムを書いていて指摘されるまで違和感なく使っていましたが、あまり(・・・というか全く)一般的ではなかったようですね(笑)。
家族間でしか通じないオノマトペや呼び方ってストーリー、つまり家族の歴史が詰まっていて面白くて大好きです。きっと方言や文化はその延長線上なんだろうと思っています。
迎え火の時は玄関で、精霊馬を家の中に向けて置き、麻がらを焙烙(ほうろく)という素焼きのお皿の上で焚きます。玄関で火を見ながらしばし家族とともにぼうっとして「おかえり~」「今年も帰って来たね~」などと言いながら火が消えないうちにお線香に火をつけ、お仏壇にあげに行くのです。
その時の煙にご先祖様がのって帰ってくるんだよ、と教えてもらったのをよく覚えています。
何もしないでぼうっとしている時間、というのは意外と少ないものです。焙烙の上で麻がらが燃えていく火を見つめながら、今は一緒にいない家族のことを想う時間は宝物だと今になって気が付きました。子どものころから面倒だなあ、テレビ見たいなあなんて思いながら過ごしてきた来たお墓参りやお盆の行事は、今日本を離れて海外で暮らしている私にとってとても大切なものになっています。
精霊馬について、関東では飾るけれど西日本では飾らない、などいろいろな違いがありますね。みなさんのおうちやご実家ではどのようにお盆を過ごすんでしょう?ちなみに精霊馬のオーソドックスなタイプはナスとキュウリをつかったものですが、最近はフタバのようにトマトなどいろいろな野菜を使って作ることもあるようです。
ここフィリピンでも「先祖が返ってくる」お祭りがあります。80%以上がキリスト教カトリック信仰なので、ハロウィンの10/31日の真夜中、0時を過ぎると万聖節(All saint’s day)と言ってカトリック諸聖人の日となります。天国にいるカトリックの聖人をたたえるお祭りです。この翌日が死者の日(All spiul’s day)です。この二日間は祝日で、会社も学校もお休み。お墓に行ったり先祖のことを想いながら家族でご飯を食べたりするそうで、まさにフィリピン版お盆というところです。
この4コマを描きながら、娘に精霊馬のことを説明しました。日本にいたときに何度か一緒に迎え火や送り火を焚いているのでうっすら覚えているようです。世界には様々な信仰があり、習慣があり、家族があり、その数だけストーリーがあります。亡くなった人のことを大切に思う気持ちはみな変わらないのだということを娘に伝えていきたいなと思うのです。
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