昔ながらの知恵がつまったコンパニオンプランツ | エディブルガーデン4月
古幡真恵
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Illustration:小野寺葉月
自然界では、植物同士がさまざまな影響を与え合って共に生育しています。その植物の世界でも、人間の世界と同じように好き嫌いがあるんです。このように共に栄えて生育する植物のことを、欧米では「コンパニオンプランツ」と呼んでいます。
「コンパニオンプランツ」という言葉のイメージは、最近の新しい植物のように感じてしまいますが、じつはその逆です。昔は農薬や化学肥料が現在のようにありませんでしたから、いかに作物を元気に育てるかについて、試行錯誤しながら作物を育ててきました。その昔ながらの知恵の一つが「コンパニオンプランツ」なんです。
目次
育てて実感!コンパニオンプランツの効果
便利で有効な農薬や化学肥料を使用する現代の農業において、コンパニオンプランツを活用する機会が少なくなりましたが、有機農法や自然農法、安心安全な家庭菜園を求める声で、コンパニオンプランツが再注目されています。
農薬や化学肥料がなかった時代から、農家の方が経験によって集めた農業の知恵「伝承農業」のノウハウが、この育てて実感するコンパニオンプランツの効果について教えてくれます。
実際にコンパニオンプランツを組み合わせて育ててみると
コンパニオンプランツの威力を感じた組み合わせで、一番驚いたのは「トウモロコシ」と「枝豆」の組み合わせです。
屋上菜園のスタッフをしていたときの経験で、同じ敷地内に会員の方がさまざまな組み合わせで作物を育てていたのですが、そのなかで「害虫の被害が多いトウモロコシ」と「被害の少ないトウモロコシ」の存在に気が付きました。なぜ、被害に差が出るのか観察してみたところ、被害の少なかったトウモロコシの隣で育てていた作物が、枝豆だったことに気付いたのです。
あとでコンパニオンプランツのことについて調べてみると、「トウモロコシ」と「枝豆」の組み合わせは、お互いの生育を助けるだけでなく、互いに被害を及ぼす害虫を忌避する作用があったことを知りました。
同じように枝豆についてもトウモロコシ同様に、「害虫の被害が少ない枝豆」と「被害が大きい枝豆」があることもわかり、それ以来コンパニオンプランツを抜きに栽培計画が立てられないくらい、コンパニオンプランツにハマってしまいました。
コンパニオンプランツの良い組み合わせって?
植物にはそれぞれ特性があります。日光を好む植物もあれば、湿った薄暗い場所を好む植物もあります。自然界では、その特性に合わせて、自然淘汰されながら、植物が生きやすい環境でそれぞれが相互的に絶妙な関係を保ちながら生育しています。
家庭菜園のケースで考えてみると、「同じ畑(プランター)」という条件の中で、植物同士が足りないところを補い合い、助け合うことで、作物が健康に育つことを目指すためにコンパニオンプランツは存在します。
では、どんな組み合わせを考えながら作物を植え付けてあげればいいのでしょうか?家庭菜園に取り入れやすい植物の6つの特性を利用した組み合わせについて紹介します。
「家庭菜園に取り入れやすい!」植物の性質を利用した6つの良い組み合わせ
1. 日光を好む植物と日陰を好む植物
2. 根を深く張る植物と根が浅く張る植物
3.余分な栄養分を吸収してくれる植物
4. 虫が好む植物と虫を遠ざける植物
5. 育てながら病気を防ぐ植物
6. 益虫を呼ぶ植物
以上の条件を頭に入れて、実際に共に育ててよく育つコンパニオンプランツについて詳しくみていきましょう。
1. 日光を好む植物と日陰を好む植物
日当たりを好むサトイモ
日光を好む植物といっても、強すぎる直射日光を好むというわけではありません。洗濯物を干したり、日向ぼっこして気持ちの良い日当たりが、日光を好む野菜にとって心地の良い光といえます。そういった意味では、植物を育てるのは子育てや動物を飼うことに似ているような気がしますね。
日陰を好むショウガ
反対に日陰を好む植物を育てるときには、木漏れ日のお昼寝にちょうど良い環境といったところでしょうか。心地の良い風が通り抜ける環境で、日陰を好む植物は気持ち良く育つのです。
草丈の高くなる日光を好む植物の下に、日陰を好む植物を植えることで、植物が好む環境を私たちが作ってあげましょう。
2. 根を深く張る植物と根が浅く張る植物
根を深く張るナス
水分が大好きなナスは、深く根を張り土の中から十分な水分を吸い上げますので、用意するプランターは深めの方が大きく育ちます。
細かな根が広がって育つニラ
水分が大好きなナスの根を守るために、根が広がって育つニラなどを育てることで、ナスの根の乾燥を守るマルチのような効果もあるので、根の深い作物と根が浅く広がる作物の相性は良いのです。
3.余分な栄養分を吸収してくれる植物
肥料の与え過ぎに気を付けたいミニトマト
実をつけるはずの作物なのに、葉や茎ばかりが生長する「つるぼけ」は、多すぎる肥料が与える原因のひとつです。
例えば、花が咲く前のミニトマトの苗を肥料がたっぷり施された土に植え付けると、この「つるぼけ」という状態になってしまいます。その他にも肥料の量が多いことで、奇形の葉ができたり、茎に穴が開いたりなど、多すぎる肥料を好まない作物もあります。
ミニトマトにとって余分な肥料を吸収するバジル
ミニトマトの肥料の過剰摂取を防いでくれるのが、コンパニオンプランツであるバジルの存在です。ミニトマトの苗の隣にバジルを植えることで、多すぎる肥料をバジルが吸収してくれます。バジルは「つるぼけ」にはならない、葉を収穫するハーブですからね。
4. 虫が好む植物と虫を遠ざける植物
キアゲハの幼虫の大好物イタリアンパセリ
病害虫被害を押さえる効果が期待できるネギ類やパセリ、セロリなどのセリ科、ハーブ類のような匂いの強い野菜で害虫を遠ざけます。
害虫をよく観察してみると、イタリアンパセリには「キアゲハの幼虫」が寄って来るのですが、モンシロチョウの幼虫である「アオムシ」はイタリアンパセリに寄り付かないのですから不思議です。虫にも好き嫌いがあるなんて、なんだか親近感がわいてきます。
アオムシが大好きなアブラナ科のケール
同様に、「アオムシ」が大好物のケールなどのアブラナ科野菜には「キアゲハの幼虫」は寄り付きません。このことから、セリ科とアブラナ科を組み合わせることで、お互いの害虫を忌避する作用があります。この組み合わせに、さらに虫が寄付きづらいレタスやシュンギクなどのキク科の作物を合わせることで、害虫忌避効果もアップしますよ。
5. 育てながら病気を防ぐ植物
おとり作物の大根
大根を育てて収穫できるだけでもうれしいものですが、大根を栽培するだけで土も健康にしてくれることをご存知ですか?
キャベツやブロッコリーなどのアブラナ科に発生する根こぶ病という土壌病菌があります。同じアブラナ科の野菜でもあるダイコン類には、根こぶ病の病原菌に対し抵抗性が高く、感染したとしても発病することがありません。そのため、大根は根こぶ病の「おとり作物」として育てることで、土壌中の根こぶ病の病原菌を減らすことが可能です。
コンパニオンプランツの代表格のマリーゴールド
コンパニオンプランツの代表格ともいえるマリーゴールドやネギ類の根にも病害を防いだり、減らしたりする働きがあります。
特にマリーゴールドはネコブセンチュウ(植物寄生性線虫)などに対する殺虫効果、作物に対する病害の抑制にも効果があると考えられているため、一緒に植えたり緑肥として土にすき込むのに使用される植物です。
6. 益虫を呼ぶ植物
アブラムシを食べてくれるテントウムシ
虫嫌いの人でもテントウムシなら怖くないという人も多いかもしれませんね。この可愛いテントウムシは、害虫のアブラムシを食べてくれる益虫です。お庭でテントウムシを見かけたら、アブラムシに襲われている野菜にそっとのせてあげましょう。
ポリネーター(花粉媒介昆虫)のミツバチ
マリーゴールド、ナスタチウム、ボリジ、カモミールなどを植えると、受粉を助けてくれるハチやアブなどを集めることができます。
ポリネーター(花粉媒介昆虫)と呼ばれるミツバチなどは、スイカやズッキーニなどの受粉が結実に欠かせない作物の良い助けになってくれます。
食べるとピリリと辛いエディブルフラワーのナスタチウム
そう考えてみると、野菜やハーブだけでなく、家庭菜園にエディブルフラワーも一緒に育てることでポリネーターたちが集まる良い環境づくりができますね。
組み合わせNGのコンパニオンプランツって?
こうしてコンパニオンプランツの効果をみてくると、作物同士さまざま組み合わせで育ててみたくなりますが、なんでもOKという訳にはいきません。一緒に育てることで、逆に生育が悪くなる場合もあるので注意しましょう。
作物名 | NG作物 | 被害・障害 |
ジャガイモ | トマト・キャベツ | 相性が悪く、生育も悪くなる。 |
トウモロコシ | ナス | 相性が悪く、生育も悪くなる。 |
レタス・イチゴ | ニラ | 相性が悪く、生育も悪くなる。 |
タマネギ・ニンニク | マメ類 | マメ類の生育を阻害する。 |
キュウリ・スイカ・メロン | インゲン | センチュウが多くなる。 |
ニンジン | インゲン | センチュウが多くなる。 |
ダイコン | 長ネギ | ダイコンの根が曲がり、生育が悪くなる。 |
野菜類 | ローズマリー | 生育が悪くなる。 |
参考文献:木嶋利男(2012)『野菜の品質・収量アップ 連作のすすめ』 家の光協会.
すぐに真似できる!おすすめコンパニオンプランツ
家庭菜園も本格的に始まる4月になりました。自宅の家庭菜園で実際に作物とコンパニオンプランツを育ててみましょう。
セリ科・アブラナ科・キク科の黄金トリオ(ニンジンとラディッシュとレタス)
セリ科作物の害虫キアゲハの幼虫は、アブラナ科作物には近づかず、反対にアブラナ科作物の害虫モンシロチョウの幼虫アオムシなどは、セリ科・キク科作物には近寄らないことから「セリ科・アブラナ科・キク科」の相性が良いといわれています。
良い環境を与え合う(ナスとパセリ)
パセリはナスと一緒に植えることでナスの根の乾燥から守り、ナスはパセリの生育に丁度良い日陰を作ります。
昔ながらの伝統農法(ネギ・ニラとウリ科)
古くからウリ科を栽培する際に、昔の農家の知恵として一緒にネギが植えられていたようです。
共に生育が良くなる(ジャガイモとインゲン)
一緒に植えることで、良い生育関係を築くことができるといわれ、海外でもこの組み合わせで育てられているところがあります。
その他にもおすすめなコンパニオンプランツと作物の組み合わせ
作物名 | コンパニオンプランツ | 効果・効能 |
キャベツ | トマト | トマトがキャベツの害虫「アオムシ」を忌避。 |
ソラマメ | タマネギ | タマネギがソラマメの害虫「アブラムシ」を忌避。 |
スイカ | トウモロコシ | トウモロコシがスイカの害虫「ウリハムシ 」を忌避。 |
キュウリ | ラディッシュ | ラディッシュがキュウリの害虫「ウリハムシ 」を忌避。 |
ホウレンソウ | 葉ネギ | ホウレンソウの硝酸濃度が低下し品質が向上。土壌病害を防ぐ。 |
ピーマン | 長ネギ | 長ネギがピーマンの土壌病害を防ぐ。 |
アスパラガス | ニンニク | 相互の生育を促進。 |
インゲンマメ | ルッコラ | 相互の生育を促進。 |
参考文献:木嶋利男(2012)『野菜の品質・収量アップ 連作のすすめ』 家の光協会.
人間が同じ場所で生活して作物を作る「農業」が生まれ、その農業の「ノウハウ」は現代まで受け継がれてきました。
しかし、後世に伝えられてきた農業は作物を作る「ノウハウ」だけではありません。農業を通じて、自然の恵みに感謝する心「宗教的文化」、天災に合わないよう願いを込めて行われる祭りなどの「芸能文化」、収穫した作物をおいしくいただく「食文化」、このように作物を育てることを通して、農業は地域独自のさまざまな知恵を盛り込み、生活に根ざした日本の文化をつくってきたんですね。
▼参考文献について
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