誰のものでもない草花…野草・雑草図鑑~都市近郊編
LOVEGREEN編集部
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みなさんが小さい頃から親しんできた植物は何ですか?
チューリップ?パンジー?ひまわり?
でも、本当に小さいころから親しんできたのは、いつでも手にすることができる、誰のものでもない草花たち「雑草」だったのではありませんか。
時には可憐な花を咲かせ、幼いころにはおままごとに、虫取りカゴをもってその中に分け入り、大人になった今その手入れで悪戦苦闘している、そんな名前も知らない誰のものでもない草花「雑草」のことを見つめてみませんか。
雑草の一般的な定義として「私たちの生活する範囲に、私たちの意図にかかわらず、自然に繁殖する植物」のことを指します。
農業の立場からみても、「作物に害をもたらし、生産を減少させる存在」です。
人間にとってなんともやっかいな存在にされてしまった雑草ですが、一つ一つ見れば本当に素敵な植物たちなのです。
1年中いろいろな場所で存在する雑草の中でも、主に都市近郊で見かけることのできる「雑草」の種類についてご紹介します。
(春を1~5月、夏を6~8月、秋を9~12月、周年に分けてご紹介します。なお、開花期が季節をまたいでいる種類もあります。)
※一年草は、種子から発芽して一年以内に生長して開花・結実して、種子を残して枯死する植物。
※越年草は、秋に発芽し越冬し翌年に枯れる植物。
※二年草は、種子~枯死までが1年を超えて2年以内でのものをいう。
※多年草は、個体として複数年にわたって生存する植物のことである。
目次
春の野草・雑草
季節の花々も私たちに四季を告げてくれますが、春の雑草たちも道行く私たちにいち早く春の訪れを知らせてくれます。
スギナ
別名 | ツギナ、ツクシ、ツギメドオシ、ツクシンボ |
科 属名 | トウサ科トクサ属 |
学名 | Equisetum arvense |
英名 | Field Horsetail, Common Horsetail |
原産地 | 日本、北半球の暖温帯地域 |
分布(日本) | 日本各地 |
植物分類 | 多年草 |
草丈 | 10~60㎝ |
早春のまだ肌寒いころ、自分自身は春を感じていても何だか確証が持てないけれど、道端に顔を出すツクシをみてやっぱり春なのだと納得する。
そんな春を告げてくれるスギナです。2~3月にツクシが芽生え胞子を出します。3~4月に地下茎から地上茎が伸びてスギナが発芽・生育を開始します。
名前の由来は、草の形が杉に似ていることから「杉菜(すぎな)」という名がついたという説があります。
スギナの別名であるツギナは、節のところで抜いても継ぐことが出来ることから「継ぐ菜(つぐな)」が転訛(てんか)して「ツギナ」になり、ツクシはツギナに付いていることから「付く子(つくこ)」がツクシに転訛(てんか)したと言われております。
スギナは、スギナ茶またはホールステールという名でハーブショップなどで売られており、ハーブティーとしても人気です。そのスギナ茶を煮出したものは、入浴剤の代わりにも使用できます。
また、ツクシは10㎝程度のものを採取して、「はかま」といわれるつくしの葉の部分をとり除き、茎をゆでて、煮物や汁の具、酢の物や胡麻和え、つくだ煮にして食すことができます。
スギナは酸性の土壌を好んで生育するといわれているので、多く繁殖している土地は酸性に傾いている目印にもなります。
ナズナ
別名 | ぺんぺん草、三味線草 |
科 属名 | アブラナ科ナズナ属 |
学名 | Capsella bursa-pastoris |
英名 | Shepherd’s-purse |
原産地 | 東ヨーロッパ、西アジア |
分布(日本) | 日本各地 |
植物分類 | 越年草 |
草丈 | 20~50㎝ |
春の七草でも知られている「ナズナ」ですが、別名の「ぺんぺん草」という呼び方にも親しみを持つ方も多いのではないでしょうか。
同じく別名である三味線草も、三味線のバチのような果実を模したものです。この果実が熟すと中から小さな種子が出てきます。
他にもガラガラという別名もあり、果柄を下に引っ張り全ての果実をぶらぶらの状態にして、耳元でぐるぐる回すと音がするため、子供のおもちゃ「ガラガラ」になります。
ナズナという名は愛でる草という意味で、撫菜(なでな)からきていると言われています。たくさんの別名と愛でる草という由来からも、ナズナは昔から人々に愛された植物なんですね。
七草がゆの食材「春の七草」の一つとしても知られているナズナですが、古くから薬草として用いられてきたそうです。
日本では古代より年初に雪の間から芽を出した草を摘む「若菜摘み」という風習があり、これが七草の原点とされています。古き良き風習を受け継いでいきたいものですね。
ナズナの根
ちなみに春先のまだ葉だけの小さな状態のナズナの根は、生で食すことができます。綺麗に洗って食べてみるとごぼうに似た味で、噛めば噛むほど甘みがあり衝撃のおいしさです。
生食以外にも、スープやきんぴらなどの炒めものにしても美味しくいただくことができます。
かなりの根の長さですが、畑の土がふかふかならばスルッと抜けます。
スズメノカタビラ
別名 | ハナビグサ、ホコリグサ、ビンボウグサ |
科 属名 | イネ科イチゴツナギ属 |
学名 | Poa annua |
英名 | annual bluegrass , annual meadow grass, annual poa |
原産地 | 世界各地 |
分布(日本) | 日本各地 |
植物分類 | 越年草または一年草 |
草丈 | 5~30㎝ |
太古の昔から変わらずそこに存在してきて、原産地も定かでないほど世界中に広まっているスズメノカタビラ。
どこを旅しても見つけることができるスズメノカタビラにロマンを感じてしまいます。
スズメノカタビラの由来は、花穂をスズメの衣類=帷子(かたびら)にたとえたものです。別名に「ハナビグサ」という名もありますが、小穂の感じが花火によく似ている素敵なネーミングですね。
ハコベ
別名 | ヒヨコグサ、トキシラズ、ハコベラ、ピヨピヨグサ、アサシラゲ |
科 属名 | ナデシコ科ハコベ属 |
学名 | Stellaria |
英名 | Chickweed |
原産地 | 世界各地またはヨーロッパ |
分布(日本) | 日本各地 |
植物分類 | 越年草または一年草 |
草丈 | 10~30㎝ |
ハコベと言えば、小さいころ飼っていた小鳥のご飯として摘み取った思い出を持っている方も多いのではないでしょうか。
セリやゴギョウ、ナズナ、ホトケノザ、スズナ、スズシロとともに「春の七草」に数えられる「ハコベラ」としても有名です。
カナリアの 餌に束ねる ハコベかな 正岡子規
ハコベは「ハクベラ」という名で万葉集にも載っており、ハクは綿布のことで、ベラは群がること。細かい茎に葉がついている様子が綿布が群がっている様子から名づけられ、そこからハコベという名がつけられたようです。
ハコベは昔から「血の道を司どる」植物として知られ、血を浄化するものとして婦人の産前産後に用いられていたそうです。
ハハコグサ
別名 | オギョウ、ゴギョウ、ホオコグサ |
科 属名 | キク科ハハコグサ属 |
学名 | Pseudognaphalium affine |
英名 | Jersey cudweed |
原産地 | 日本全土 中国中南部 朝鮮半島 東南アジア |
分布(日本) | 日本各地 |
植物分類 | 越年草 |
草丈 | 10~40㎝ |
ハハコグサは別名である「ゴギョウ」という名で「春の七草」の一つとして古くから親しまれている植物です。
老いて尚 なつかしき名の 母子草 高浜虚子
ハハコグサの名前の由来は、葉や茎が白い綿毛に覆われている姿を母親が子を包み込むように喩えた説や、葉や茎が白い綿毛に覆われているところからホウケタような状態に見えることから「ホウコグサ」が転訛してハハコグサになったとも言われています。
ハハコグサの花の色は黄色。「チチコグサ」もありますが花が茶色く、野の花としては見劣りします。草花の世界でも、お父さんはお母さんを輝かせる存在なのでしょうか。
このハハコグサは、以前はお餅のつなぎとして用いられていました。そのため昔は草餅と言えばハハコグサでした。
しかし、「母と子を臼と杵でつくのは縁起が良くない」として、平安時代ごろからヨモギに代わったようです。
ハハコグサの草餅って一体どんなお味がするのでしょう?ちょっと食べてみたいですね♪
カタバミ
別名 | スイモノグサ |
科 属名 | カタバミ科カタバミ属 |
学名 | Oxalis corniculata |
英名 | Wood sorrel |
原産地 | 温帯地方から熱帯地方に広く分布する |
分布(日本) | 日本各地 |
植物分類 | 多年草 |
草丈 | 10~30㎝ |
晴れた日の午前中に花が開き、夕方には眠るように花びらを折りたたむカタバミ。
このカタバミは、多年草で根が深く張り巡らされ繁殖力に優れているため、一度根付くと駆除が難しい雑草です。
武家の間では強い繁殖力のあるカタバミのように、家がいつまでも絶えず続いていくという願いを込めて家紋によく使われ「日本の五大家紋の一つ」となっています。
カタバミの名前の由来は、葉の一方が欠けるように見えることからつけられたようです。
別名の「スイモグサ」は、葉や茎に酸味があることから付けられました。
カタバミに含まれているシュウ酸を活用して、カタバミの葉で古い十円玉を磨くと、黒ずみがとれ綺麗になります。
カタバミは魚料理やサラダに用いて食べることができますが、シュウ酸が含まれているので過剰摂取は避けましょう。
ヒメジョオン
別名 | ヒメジオン |
科 属名 | キク科ムカシヨモギ属 |
学名 | Erigeron annuus |
英名 | annual fleabane、eastern daisy fleabane |
原産地 | 北アメリカ |
分布(日本) | 日本各地 |
植物分類 | 越年草 |
草丈 | 30~150㎝ |
明治初期に渡来し、各地に広がった帰化植物ですが、現在は大正初期に渡来したハルジオンにおされているようです。
ヒメジョオンの方が草丈が高く、花は小さくて数が多く、葉柄はギザギザとしています。
ハルジオン
ハルジオンの草丈は低く、花は大きくて少ない、蕾は下を向いて項垂れ(うなだれ)ているような特徴があります。葉柄はヒメジョオンに比べて丸みを帯び茎に抱きつくように生えています。
茎もハルジオンは空洞なため、折ってみるとヒメジョオンとの違いがはっきりと分かります。
名前の由来は、女苑(ジョオン)という中国名を持つヒメシオンと形態が似ていることから名づけられたようです。
\次は夏の野草と雑草です/
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