桜の種類や咲く季節を紹介!飾り方、食べ方、香り、お酒、文学作品まで
山田智美
このライターの記事一覧
日本の春を代表する花、桜。桜にはどんな種類があるのでしょう。身近で見られる桜の種類を、花が咲く季節と共にご紹介します。他にも桜の生け方、花の食べ方、香り、お酒、桜が美しい文学作品まで。桜の魅力をとことん追求します。
目次
- 桜とは?桜の基本情報
- 桜の咲く季節はいつ?
- こんなにある!桜の種類や品種
- さくらんぼになる桜の種類を紹介
- 桜の枝の生け方、飾り方
- いくつ知ってる?桜の食べ方
- 桜のお酒を楽しもう
- 桜の香りの香水をご紹介!
- 桜がテーマの文学作品
桜とは?桜の基本情報
染井吉野(ソメイヨシノ)
- 学名:Cerasus
- 英名:Sakura, Cherry blossom
- 科名:バラ科
- 属名:サクラ属
- 分類:落葉低木、高木
桜は美しい花を咲かせることで有名な、日本を代表する落葉高木、低木の花木です。たくさんの種類や品種があります。
毎年桜の開花を心待ちにしている人は多いでしょう。数ある桜の中でも私たちが春の代名詞のように親しんでいる桜は染井吉野(ソメイヨシノ)という品種です。
桜の咲く季節はいつ?
染井吉野(ソメイヨシノ)
春の代名詞のように日本人から愛され続けている桜。染井吉野(ソメイヨシノ)を代表とする桜の開花時期は春です。早咲きの河津桜などは2月頃から咲き始めます。その後を追うように次々と3月の末から染井吉野(ソメイヨシノ)、八重桜の類が咲き続け、およそ5月頃まで桜の花を楽しむことができます。
春の桜にばかり気を取られていると見逃してしまいがちですが、秋から冬にかけて咲く品種も存在します。冬桜(フユザクラ)は春と秋の2回開花します。
こんなにある!桜の種類をご紹介!
染井吉野(ソメイヨシノ)
日本に自生する桜の原種は約9種あるそうです。その他に自然交雑でできた品種や、人工的に作られた品種もあり、栽培されている桜の品種は200種とも300種とも言われています。さらに里山では、自然交雑でできた新しい品種が発見されることもあり、全てを把握するのは困難です。
たくさんある桜の品種のなかから、身近な場所で見かけることの多いものを紹介します。
染井吉野(ソメイヨシノ)
染井吉野(ソメイヨシノ)
- 開花期:3月下旬~4月上旬
- 花色:淡いピンク
- 咲き方:一重咲き
私たちがお花見を楽しんでいる桜のほとんどは染井吉野(ソメイヨシノ)です。日本で桜と言えば染井吉野(ソメイヨシノ)と言っても過言ではないほど人気の桜です。うっすらピンク色の花びらは可憐で美しく、夜には暗い空を背景に枝を広げる姿も夜桜と呼ばれ親しまれています。
染井吉野(ソメイヨシノ)は大島桜(オオシマザクラ)と他の桜の交配種です。花期は3月下旬から4月上旬。実生では増えないため、人工的にが接木で増やしてきた品種です。
染井吉野(ソメイヨシノ)は若木でも花を咲かせるので、戦後焼け野原になった日本にたくさん植えられました。今では桜の代名詞のようになっています。花付きが良く、花後に葉が出てくるので、開花中は樹全体が花で覆われたかのようになり、桜の華やかさを存分に楽しめるのも特徴です。
染井吉野(ソメイヨシノ)は風雨で花びらが散りやすく、桜の花を待ち焦がれてやっと咲いたと思ったら風や雨であっというまに散ってしまう儚さも人気の理由です。
河津桜(カワヅザクラ)
河津桜(カワヅザクラ)
- 開花期:2月中旬~4月上旬
- 花色:はっきりとしたピンク
- 咲き方:一重咲き
ピンク色の花びらが人気の早咲きの桜です。自然交雑種で、伊豆の河津町で発見されたことが名前の由来とされています。自然はなんて素敵な桜を作ったのでしょう。早咲きで明るいピンク色をした桜ということで人気があり、街路樹や公園の植栽として利用されています。
染井吉野(ソメイヨシノ)よりも開花が早く、3月くらいから咲き始めます。花期が長いのも特徴で、1ヶ月くらい咲き続けます。染井吉野(ソメイヨシノ)と違い、風で花びらが散りにくいようです。
寒緋桜(カンヒザクラ)
寒緋桜(カンヒザクラ)
- 開花期:2月中旬~4月上旬
- 花色:赤に近い濃いピンク
- 咲き方:一重咲き、下向きに咲く、花びらが散らない
河津桜(カワヅザクラ)と同じころに咲く桜です。緋桜といういわれるように、緋色が美しい品種です。花は俯くように咲きます。満開になると緋色の密度が増し、遠目からでも目を惹きます。風で花びらが舞い散ることが無く、花首からぽとりと落ちるように散る姿が印象的な桜です。
沖縄では染井吉野(ソメイヨシノ)は咲かないため、この寒緋桜(カンヒザクラ)を桜として愛でるそうです。
大島桜(オオシマザクラ)
- 開花期:3月下旬~4月上旬
- 花色:白
- 咲き方:一重咲き
原種の桜です。花は染井吉野(ソメイヨシノ)に大きさや形がよく似ていますが、花色は染井吉野(ソメイヨシノ)よりも白いのが特徴です。染井吉野(ソメイヨシノ)と違って開花中から葉を出し始めます。葉の色は少し赤味がかっています。桜餅に使われているのは、この大島桜(オオシマザクラ)の葉です。優しい芳香があり、大島桜(オオシマザクラ)の樹の下にいると時々風に乗ってふわりと香りがしてきます。大島桜(オオシマザクラ)を見かけたら、香りも楽しむことも忘れないでください。
山桜(ヤマザクラ)
- 開花期:3月中旬~4月中旬
- 花色:白~淡いピンク
- 咲き方:一重咲き
山桜(ヤマザクラ)というと山に咲く桜の総称のように思えますが、桜の1品種の名前です。文字通り山に咲く原種の桜で、自然に異種交配が行われているためか、突然変異が多く、花や葉の色に違いがあるようです。山桜(ヤマザクラ)は花と葉がほぼ同時に出てきます。
「吉野の桜」とは、京都の吉野山を桜が埋め尽くすように咲くことを指す言葉ですが、その吉野の桜の多くは山桜(ヤマザクラ)です。
陽光桜(ヨウコウザクラ)
- 開花期:3月上旬~4月上旬
- 花色:はっきりとしたピンク
- 咲き方:一重咲き
寒緋桜(カンヒザクラ)と他の桜の交配種で、染井吉野(ソメイヨシノ)よりも少し早い時期に咲き始めます。花は大輪で、葉が出てくるのは花後です。染井吉野(ソメイヨシノ)よりもピンクが濃く花も大輪なので、切り花として生けると見栄えがします。
鬱金桜(ウコンザクラ)
- 開花期:4月中旬~5月上旬
- 花色:薄黄色~薄黄緑色
- 咲き方:大輪、八重咲
染井吉野(ソメイヨシノ)よりも少し遅れて4月中旬に開花する品種です。花色が薄黄色と、桜の中では非常に珍しい花色をした品種です。花色が珍しいうえに大輪八重咲きなので、桜だと気づかない人もいるようです。あまり馴染みがない桜ではありますが、染井吉野(ソメイヨシノ)が散った頃に咲く薄黄色の八重桜なので、注意して探していればすぐに見つかります。
西洋実桜(セイヨウミザクラ)
西洋実桜(セイヨウミザクラ)
- 開花期:3月下旬~4月上旬
- 花色:白~淡いピンク
- 咲き方:一重咲き
西洋実桜(セイヨウミザクラ)は、さくらんぼが実る桜です。開花時期は染井吉野(ソメイヨシノ)と変わりません。花と同時に葉が出てきます。花も染井吉野(ソメイヨシノ)や大島桜(オオシマサクラ)とよく似ています。
江戸彼岸(エドヒガン)
- 開花期:3月下旬
- 花色:淡いピンクから白
- 咲き方:一重咲き
日本に自生する原種の桜です。春のお彼岸の頃に開花することからこの名前がついたと言われています。
枝垂桜(シダレザクラ)
枝垂桜(シダレザクラ)
- 開花期:3月下旬~4月上旬
- 花色:濃いピンク、淡いピンク、白
- 咲き方:一重咲き、八重咲き
枝垂桜(シダレザクラ)は、枝が垂れ下がっている桜の総称としても使われています。花は小ぶりで白か濃いピンク、八重咲きの品種もあります。花期も長く見応えのある桜です。
十月桜(ジュウガツザクラ)
- 開花期:4月、10月
- 花色:白
- 咲き方:八重咲き
十月桜(ジュウガツザクラ)は、その名の通り秋に咲く桜です。正確には春と秋の年2回開花します。春に咲く染井吉野(ソメイヨシノ)に比べて小ぶりな花をしています。十月桜(ジュウガツザクラ)の春の開花は他の桜に紛れて目立ちませんが、秋の花が少ない時期に満開になっているのを見かけると溜息が出るほどの美しさです。
冬桜(フユザクラ)
- 開花期:3月、11~12月
- 花色:白
- 咲き方:一重咲き、八重咲き
冬桜(フユザクラ)も初春と秋から冬の年2回咲く桜です。花は小ぶりで、遠くから見ると枝に羽毛が舞い散っているような印象を受ける可憐な桜です。
さくらんぼがなる桜の品種をご紹介
西洋実桜(セイヨウミザクラ)
さくらんぼが桜の果実だから「桜ん坊」だということを忘れてしまっている方も多いのではないでしょうか。さくらんぼは「西洋実桜(セイヨウミサクラ)」という品種の桜の果実です。これは、ヨーロッパ原産の品種で、果実を食用にする桜です。
そのままでは酸味が強く食用には向かないので、甘く食べやすいように品種改良されたものがさくらんぼとして出回っています。
私たち日本人が好んで観賞している桜も実が付かないことはありませんが、食用ではありません。染井吉野(ソメイヨシノ)などは、初夏に真っ黒に売れた果実を実らせますが、食用にはなりません。
さらに街路樹の桜は必ず薬剤が散布されていますので食べないようにしてください。桜の実は、食用と明記されている品種のものか、市販のさくらんぼを食べるようにしましょう。
桜の枝の生け方、飾り方
染井吉野(ソメイヨシノ)
春になると染井吉野(ソメイヨシノ)が咲き始めるよりも早く、切り花の桜が出回り始めます。桜の枝をお家にも飾ってみませんか。自宅でお花見が楽しめます。
あまり大きな枝は難しいかもしれませんが、自宅で桜を上手に生けるコツをご紹介します。
用意するもの
- 枝切用ハサミ
- 花瓶(安定感のあるもの)
- レンガなど
桜の枝は非常に固く切り辛いので、購入時にはあまり枝の太くないものを選びます。枝を枝切用ハサミで生けたい長さにカットします。このとき、実際に飾る予定の場所で、花瓶の高さに合わせて長さを決めるといいでしょう。
好みの長さにカットしたら、水の吸い上げがよくなるように枝の芯を割るという作業を行います。カットした桜の枝の切り口に、縦にハサミを当てて枝に裂けめを入れます。この作業を「枝を割る」と言います。枝の中心部にある芯を割ると水の吸い上げが良くなります。うまくこの芯の部分にハサミが入ると気持ちがいいくらいパキンと割れます。
桜を生けるコツ
切り口を割った枝を花瓶に生けます。花瓶はたっぷりとした大きさの安定感のあるものを選びましょう。口が広がった形の花瓶は、枝の重心が外側に向かうので、花瓶が倒れやすくなります。気をつけてください。
花が付いている桜は水をたくさん必要とします。花瓶にはたっぷりと水を入れてください。水の重みで花瓶は安定しますが、桜の枝の方が重いように感じたら、花瓶の中にレンガなどを入れてバランスを取ってください。
いくつ知ってる?桜の食べ方
染井吉野(ソメイヨシノ)
桜が花開く季節、桜の花を体内に入れたくなりますよね。私たち日本人は春になると菜の花の蕾を食べたり、蕗の蕾に当たるフキノトウを食べたり、お花を食べて楽しむことを知っています。桜を使った飲み物や食べ物をご紹介します。体の中から春を感じてください。
桜の塩漬け
桜の花の塩漬けです。簡単に自宅で作れて、塩漬けだから保存も可能です。長く桜を楽しめます。
桜のお茶
毎年春になると登場する桜の紅茶。毎年春になるといろんなところから発売になる桜のお茶。その年によってブレンドが変わったりするのも魅力です。紅茶に桜のフレーバーが付いているものや、緑茶に桜がブレンドされているものなど。春だけの限定商品であることが多いので早めにチェックしてみましょう。
桜のジャム
摘んできた桜の花を洗って他の果物と一緒にジャムにすることで、桜のジャムを作れます。ただし、街路樹や公園の桜は薬剤が散布されていますので、食用には向きません。
桜のジャムも桜のお茶と同じく市販されています。桜の花がそのまま入ったジャムはお菓子に添えたり、お茶に溶かしたりと楽しみ方のバリエーションも豊富です。
桜のお酒を楽しもう
河津桜(カワヅザクラ)
ちょっと大人な楽しみ方をご紹介します。桜にちなんだお酒です。
カクテル・チェリーブロッサム
桜をイメージして作られたカクテルです。実際に桜のエッセンスなどは入っていません。色も桜の花というよりも桜の果実のような鮮やかな色をしています。
ブランデーにオレンジリキュール、グレナデンシロップなど混ぜて作られるショートカクテルです。アルコール度数も25度以上と高めですので、お召し上がりの際は気をつけてください。
ジンジーニャ
ポルトガルの「ジンジャ」というさくらんぼから作られたお酒です。ジンジャとは、スミノミサクラという品種の桜の果実です。このジンジャをアグアルデンテ(ブドウの皮からできたブランデー)とお砂糖に漬け込んで作られます。
このスミノミサクラはセイヨウミザクラの近縁種ですが、非常に酸っぱくて食用には向かないため、ジャムにしたりお酒にしたりして利用されます。
色が鮮やかなワインレッドで甘く飲みやすいお酒です。ポルトガルでは街の中に、このジンジーニャが飲めるジンジーニャの立ち飲み屋さんがあるんですよ。
桜の香りの香水をご紹介!
枝垂桜(シダレザクラ)
■GUERLAIN Aqua Allegoria [Flora Cherrysia] ゲラン アクアアレゴリア 「フローラチェリージア」
花の香りが豊富に揃う、ゲランのアクアアレゴリアシリーズに桜の花の香りが登場しました。名前もストレートに「フローラチェリージア」です。
■CHRISTIAN DIOR [SAKURA] クリスチャン・ディオール 「サクラ」
ディオールにも桜の香りがありました。その名も「SAKURA」というフレグランスです。日本の桜の花をモチーフにした香りです。気になります。
■L’Occitane [Cherry Prism] ロクシタン 「チェリープリズム」
ロクシタンからチェリーブロッサムに加えて、新しく「チェリープリズム」が登場です。桜の花と果実のエッセンスが入ったフレグランスです。この「チェリープリズム」に使用されている桜はスミノミザクラと言って、ヨーロッパを中心に分布している桜です。
桜が美しい文学作品
染井吉野(ソメイヨシノ)
桜の花の美しさは文豪も魅了してきました。桜が登場する小説は多々ありますが、その中でも取り分け桜らしく妖艶な色気を堪能できる作品をご紹介します。
桜の樹の下には 梶井基次郎
「…屍体が埋まっている!」は有名なフレーズです。桜の季節になると繰り返しあちこちで耳にする台詞かもしれません。短編ですが、桜の妖艶な魅力が伝わってきます。
桜の森の満開の下 坂口安吾
こちらも「桜と言えば、坂口安吾」というくらい有名な小説です。満開の桜の森の中で見たのは夢か現か。桜にも小説にも飲み込まれていくような美しい小説です。
桜の魅力を満喫していただけましたか。眺めているだけじゃ満足できないくらい美しい桜の花。桜を生けたり食べたり飲んだり、そして小説で心の中まで桜の花で満たしてください。
▼おすすめ記事
関連ワード
今月のおすすめコンテンツ
「桜の種類や咲く季節を紹介!飾り方、食べ方、香り、お酒、文学作品まで」の記事をみんなにも教えてあげよう♪