鏡餅ってなんで飾るの?鏡餅の飾り方や食べ方。
峰亜由美
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年末になると準備する、お正月には欠かせない鏡餅。新年をお迎えする準備は終わられましたか?
お正月に飾る鏡餅には、新年の健康、幸運、長寿の願いや祈りの気持ちがギュッと凝縮された意味を持つ飾り物だということをご存知でしょうか?今回は鏡餅を飾る意味や一緒に飾られる飾り物の意味をご紹介します。
来年も健康で植物とともに豊かに楽しく暮らす一年であります様に。よいお年をお迎え下さい。
目次
鏡餅ってなんで飾るの?
鏡餅は年神様(としがみさま)が宿る神聖なお供え物として、お正月に飾られるお餅です。まるく大小と大きさの違う餅が重なり、まるい餅の形の意味は、まるい鏡、円満な人間の魂を表しているなどと言われ、ウラジロ(裏白)というシダ植物の上にどっしりと座っているような安定感のある朗らかな様子です。新鮮な米をついて年の瀬から家の中にお正月飾りの主役として飾られ、固い餅である事にも「歯固め」という意味が込められ、固い物を食べれる丈夫な歯で元気に食べて、長寿を願い「歯固めの儀」として平安時代から長寿や健康を祈る儀式として受け継がれ現在まで続いている日本の文化です。鏡餅には年神様が宿り、年神様から「年玉(年魂)」という幸運を鏡開きの時に餅を割って分けた事から、現在の「お年玉」をお正月にもらう風習へと発展したと言われています。
鏡餅の飾り方と飾るタイミング
鏡餅は三方(さんぽう)という、折敷(おしき)に台がついた器に、四方紅(しほうべに)又は奉書紙(ほうしょし)、紙垂(しで)、裏白(うらじろ)、ゆずり葉を敷き、その上に大小と大きさの違う、まるい餅を重ねて乗せ、昆布や橙(だいだい)、串柿(くしがき)を飾ります。
鏡餅を飾るタイミングは12月29日と31日は避け、29日は二重苦、31日は一夜飾りで葬儀と同じ事から縁起が悪いと言われ、12月28日までに飾るか、遅くなってしまった場合は30日に飾ると良いと言われています。
鏡餅を飾る場所は、リビングなど居心地の良い部屋の奥に飾り、飾る高さは背丈よりも高い位置飾り、高い位置に飾る理由は年神様を上から見下ろさない様に高い位置に飾ります。
飾る時は心を込めて、あたたかい気持ちで飾る事が何よりも大切です。
※奉書紙は、楮(こうぞ)というクワ科の落葉低木の樹皮の繊維に白土や白米の粉などを混ぜて漉いた白くてしっかりした厚手の和紙の一種です。
※四方紅(しほうべに)四方を紅色に縁取った和紙の事をそう呼びます。
鏡餅と一緒に飾られるお飾りの意味
四方紅(しほうべに)
四方紅(しほうべに)は天地四を方からの災いを祓い、一年の始まりに今年一年の繁栄を祈願し使われます。
紙垂(しで)
紙垂は奉書紙や美濃紙、半紙を使って、独特の裁ち方をして折られた紙で、その断ち方は色々な流派がありますが、どの流派も階段のようにギザギザとした形に折られます。形の意味は雷の光や稲妻を意味していて、落雷があると稲が豊作になる事からこの形になったといわれています。また落雷で邪気を祓うという意味を込められている為、鏡餅につけた場合は厄払いの意味が込められ飾られています。
鏡餅ではない場所でも、神社仏閣などで見かける事もあると思いますがこの場合は厄払いの意味とは違い、聖域を表す紙として使われているようです。
ウラジロ(裏白)
ウラジロはウラジロ科の常緑性多年草の大形のシダで、別名は穂長。葉の裏が白い事から、裏に持つ心が暗い事なく、潔白で清々しいという意味を持ち、また対に分かれている2枚の葉が夫婦むつまじく白髪になるまで幸せで過ごせます様にと長寿を願い飾られます。
ユズリハ
ユズリハは、ユズリハ科ユズリハ属の常緑高木で、古来から呼ばれる名前は「ゆずるは」と言います。名前の通り春に新芽が出てから、次の春に新芽が出る時にゆずる様に古い葉が落ちる事から、家長をゆずり、子や孫と代々途絶えず家が続いていく様にと、その様子から縁起物としてお正月に飾られます。
ダイダイ(橙)
ダイダイ(橙)はミカン科の常緑小高木です。冬に完熟してからも枝から落ちにくく、何年にも渡り枝に実り新しく実った果実も一緒に同じ木に実り続けます。この様子に見立てて長生きの家族として家族が健康に繁栄していく様に代々続いて行きます様にと縁起物としてお正月に飾られます。
昆布(こんぶ)
昆布は不等毛植物門褐藻属コンブ目コンブ科に属する海藻で古くから呼ばれていた名前は広布(ひろめ)といい、喜びが広がって行くという意味や「子生」という漢字を使って表す事もあり子宝に恵まれる様にと願いを込めて飾られます。
串柿(くしがき)
串柿は干した渋柿を串に刺したものです。干し柿は渋柿を干して作り、枝に実っている時は見向きもされない渋柿でも、手間と知識を使うと美味しく食べられる事から、学問、技能、芸術、人格、何事において心身ともに磨き鍛えあげる事によって、渋柿でも床の間に飾られる様になり、日々の努力は報われるという高い精神性を表します。
自宅でも簡単に作れる鏡餅
最近はスーパーにも並ぶ、様々な種類の鏡餅があります。鏡餅型をしたプラスチックの容器の中に小さなお餅が入っているタイプや鏡餅型をした真空パックがあったり、どれも簡単に飾る事が出来る便利さが良い所だと思います。もち米を蒸してウスとキネを使って餅つきをして作れたら楽しくて素敵ですが、現代の暮らしの中では餅つきを出来る環境も少なく、今回は日々忙しい中でも簡単に作れる手作りの鏡餅の作り方をご紹介します。
準備するもの
・市販の餅(作りたい大きさに合わせて個数を調整)
・片栗粉
・スプーン
・サランラップ
鍋に水を入れて、お湯を沸かします。
餅を適量準備します。準備する量は作りたい鏡餅の大きさに合わせて準備します。
鍋の湯が湧いたら、餅を柔らかくなるまで茹でます。
※蒸し器があれば、蒸しても出来ます。
柔らかくなった餅をボールに出します。
熱くて柔らかいうちにスプーン等で餅全体をまとめてひと塊にしましょう。
餅がまとまり、粗熱が取れたら、ひとまとめにして片栗粉をまぶしておきます。
まとめた餅を大、小、大きさを変えて2つにわけて丸めます。わけた後に片栗粉をまぶしておくと、手につかず扱いやすくなります。
2つにわけた餅はサランラップに包み輪ゴム等で止めて、このまま固くなるまで待ちます。
お餅の量にもよりますが、1~2日で固くなりますので、サランラップの上から餅を触ってみると固くなっているのが確認できます。固くなったらサランラップを外してみましょう。
サランラップから外した餅を重ねたら出来上がりです。
鏡餅を飾り終わったら?
鏡餅を飾る期間は地域によっての違いはありますが、各地域の松の内(まつのうち)と呼ばれる、門松やお正月飾りが飾られている期間に飾られます。
一般的には1月7日までとされ、松の内が明けた1月11日に鏡開きを行います。
鏡餅には年神様が宿り、年神様が宿った鏡餅を食べる事により、一年に一度、今年も一年元気で過ごせます様にと祈りも込めて、家族で神聖な生命力や良い運気、長寿をいただくという意味合いで、お汁粉やお雑煮などにして分かち合い食します。食べ方はどんな食べ方でも良いと言われ、お好みの食べ方で美味しくいただきましょう。
日本に古くから続く伝統的なおくゆかしい文化はいつの時代も、日本の心を運ぶ世界に誇りを持てる素敵な文化です。
鏡開きの時は餅に神様が宿っているため、刃物は使わず木槌などで叩いて割り、叩いて割る事を鏡を開くといい鏡開きと名がついたようです。
鏡餅を通してわかる、植物と共に生きる日本人
鏡餅を飾る其々の意味、いかがでしたか?鏡餅には家族の安全や子孫繁栄、家内繁盛など家族の幸せを願った様々な願いが込められて飾られています。
其々の飾り物が全て植物だと言う事にお気づきでしょうか?
餅は稲、橙(だいだい)という果実、裏白(ウラジロ)というシダ植物、昆布という海藻、奉書紙(ほうしょし)と紙垂(しで)、四方紅(しほうべに)は楮(こおぞ)という樹木の皮、ゆずり葉という樹木の葉、串柿は果実。其々の植物の生長の様子や特徴を自然に感じながら意味を見出し、寄り添い想いを馳せ、人々の暮らしに静かに取り入れて大切な日に祀る。
鏡餅と一緒に祀られた植物達にも年の神様が宿り、気持ちを込めて飾られている事にも日本人が自然を愛し、共に生きているロマンチックさを感じますね。四季を通して、桜の美しさを感じた時、日本の春の女神「此花咲耶姫(このはなさくやひめ)」の存在を感じたり、紅葉で色づく木の葉を見た時、秋の女神「竜田姫(たつたひめ)」を想ったり、日本の自然が織りなす様々な美しき景色の中には神様が宿ると信じられ、現在も文化や風習として語り継がれ大切にされています。日本の四季の中にはまだまだ素敵な神様がたくさん宿っています。四季の移り変わりの中で、自然の美しさを感じた瞬間が訪れたら、もしかしてこの美しさには日本の神様が宿っているかも知れないと、日本書紀や古事記を辿ってみると、自然の美しさの中に宿る、思いもよらない素敵な神様に出会えるかもしれませんね。
是非、お楽しみになって下さい。
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