ラン(蘭)の教科書|育て方・種類の紹介・豆知識など
LOVEGREEN編集部
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葉、花、バルブに根。360度、全て楽しめるラン。飾って、見て楽しむことはできても、育てることは難しそう……。今回はそんな方々に向けてランの育て方や種類の紹介、豆知識など、ラン情報満載でお届けします。これを読めば今よりもっと「ランのある暮らし」を楽しめるはず。
*写真協力:アザブナーセリー
監修
清水 柾孝 (しみず まさたか) さん
9歳の時から洋ラン栽培を始め、現在は自宅と温室で栽培・育種に取り組む。2020年で栽培歴20年、全日本蘭協会所属。多数の展示会にて入賞暦、審査員経験あり。メディアでも活躍し、ランを身近に楽しめる方法を伝えている。
目次
- 洋ラン(洋蘭)の育て方 基本の「き」
- 冬と夏の管理方法
- もう一度、花を咲かせるために
- ラン(蘭)カタログ:トレンドはこれ!タケノコ系ラン
- ラン(蘭)カタログ:見た目が個性派ラン
- ラン(蘭)カタログ:今、注目のランはこれ!
- 実は知られていない。ラン(蘭)の豆知識
- 編集部おすすめ!ラン(蘭)グッズ
洋ラン(洋蘭)の育て方 基本の「き」
ランを育てるのは「難しそう、枯らしそう」と思っている人も多いのでは。実はそんなことはないんです。大事なポイントは4つ。まずはこれをしっかり覚えておきましょう。
水やり「基本は乾いてから水やりをする」
湿りっぱなしではなく、湿乾のメリハリをつけること。基本は乾いたら水やりをします。生長具合によって水の与える量は変わりますが、乾き具合は植え込み材料を触ってみましょう。スプレーで湿度を高めることは育てるのに有効です。
温度「人が生活する温度帯で管理」
多くの洋ランは熱帯生まれ。そのため寒さには敏感。最低温度は10℃以上の環境で多くのランは育てられます。種類によっては高温を好んだり、寒さに耐えたりします。種類ごとの好む環境を知ることは大事なポイントですが、基本は人が生活する温度帯で十分管理出来る植物です。
日当たり「日光は必須。季節に合わせて工夫を」
ランの生長に日光浴は欠かせない。種類ごとに光の強さは変わりますが、明るい環境は大好きです。夏の直射日光は避けましょう。冬は陽射しの入る窓辺で管理、冬の日当たりは咲く時に影響するので意識しましょう。
風「室内でも風通しが大事」
自然界で生きている際は、適時風に触れています。室内でも風通しの良い場所での管理が理想的です。ランは夜間にCO₂を吸収する種類が多いため、夜も少し通風があるとよいです。サーキュレーターを使って空気を循環させるとベター。
冬と夏の管理方法
1年中、管理が同じというわけではないんです。基本の管理も時間や場所を変えることが必要です。合言葉は「夏は外、冬は内」。夏と冬の管理方法を覚えておきましょう。
夏「直射日光はNG!水やりは夕方以降に」
ランにとっても日本の猛暑と陽射しは辛いもの。日光は50~60%の遮光ネットを使って調節し、庭木がある場合は木漏れ日の下で育てるのもよいです。夏は乾きが速いため、晴れが続くときは毎日水やりをしてもよいでしょう。日中の水やりは株が蒸れて弱る原因になります。水やりは夕方以降に行うこと。株全体も湿らせ、冷やしてあげましょう。
冬「室内で最低温度を意識!その温度に合わせた冬越しを」
ランにとって、夏よりも辛いのが冬の寒さです。室内に取り込んでも光は必須。陽射しがよく当たることでランの体温を上げます。夜は最低温度を意識して、株が冷えないよう暖かい場所へ移動しましょう。冬は乾燥もします。霧吹きでこまめに葉水をするか加湿器を使うと効果的。水を与える際、冷水ではなく30~40℃のぬるま湯で大丈夫。お風呂場でのシャワーはランにとっても気持ちよいです。
1年中室内で育てるときは?
自然界で生きている際は、適時風に触れています。室内でも風通しのよい場所での管理が理想的です。ランは夜間にCO₂を吸収する種類が多いため、夜も少し通風があるとよいです。サーキュレーターを使って空気を循環させるとベター。
もう一度、花を咲かせるために
花が咲き終わると、次の開花に向けて再スタートとなります。長期間咲き続けるランはその分エネルギーを使います。なので、生長期にエネルギーを蓄えることが大切です。また、生長がゆっくりなこともランの特徴です。そのため、焦らずにじっくり育てましょう。株の元気が良いのに全然咲かない!っというときは何か刺激を与えてあげてみるとよいでしょう。
日光
日照は本当に大切です。着生ランは高い木の上部に住んでいます。そんな場所は陽射しが当たらなくても明るい環境です。最低でもレースカーテン越しの日差しは浴びさせるようにしましょう。真冬は陽射しも弱くなるため、場合によっては直射日光でも大丈夫。
肥料
鉢という狭い空間の中で育つためには栄養補給も必要です。しかし、栄養のバランスを考えないと花も咲いてくれません。花や蕾になる主な成分はリン酸です。株が充実して育った秋に、窒素分が少なくリン酸分が多い肥料を与えましょう。
*写真協力:ヒロタインターナショナルフラワー
ラン(蘭)カタログ:トレンドはこれ!タケノコ系ラン
今、最も注目され、人気急上昇中のランがタケノコ系。花の色彩は豊かで、株のわりに立派な花を華やかに多数咲かせるのが特徴です。しかし、それ以上に「タケノコ」のような立派な茎(バルブ)の姿が映えることで人気が上昇中。丈夫で咲きやすい種類が多いこともうれしい。立派に太るバルブの過程も楽しめるランは育ててみたくなるはず。
フレッドクラーケアラ・アフターダーク‘エスブイオーブラックパール’
Fredclarkeara After Dark ‘SVO Black Pearl’
世界中に衝撃を与え、ラン業界で話題となったアメリカ発の漆黒の花。今では展示会で入手しやすく、丈夫で育て易いため人気は高い。
シクノチェス・ワーセウィッチ ‘ビッググリーン’
Cycnoches warscewiczii ‘Big Green’
本属の中でも最大級の花で、ライムグリーン色が美しい。香りも強く見応えがありますが、増えにくいのが惜しい。
シクノデス・スーパースワン
Cycnodes Super Swan
タケノコ系の最新交配種。大柄な黄金色に輝く花を何十輪も咲かせる姿に迫力あり。気持ちが明るくなる美しさ。
フレッドクラーケアラ・ターニングポイント
Fredclarkeara Turning Point
深みのある濃いグリーン色で濁りのない色彩が美しい交配種。個体数が少なく現在は非常に高価。展示会でも見ることは稀。
カタセタム・ピレアタム
Catasetum pileatum
カタセタム属で最も人気があり、入手しやすい原種。大きなお椀上のリップが特徴的。不定期咲きで年に数回咲くことがある。
シクノデス・タイワンゴールド ‘タイワンオレンジ’
Cycnodes Taiwan Gold ‘Taiwan Orange’
艶のある赤褐色が目立つ花。ジャスミン系の香りも楽しめる。輪数も多く咲きやすいため、写真のような咲く姿も夢じゃない。
クロウェシア・グレースダン ‘チャズフォード’
Clowesia Grace Dunn ‘Chadds Ford’
タケノコ系で最も普及している品種。淡いピンク色が美しく香りも良い。類似品種のレベッカノーザンと共に小型で育てやすい。
カタセタム・サッカタム
Catasetum. saccatum
南米に自生する原種で、細長い焦げ茶色の花弁が特徴的。リップの花型が独特で何かの生き物の顔に見えなくもない面白さ。
*写真協力:小野敬一、清水柾孝、万花園(兵庫)、ワカヤマオーキッド(和歌山)、オーキッドバレーミウラ(神奈川)
ラン(蘭)カタログ:見た目が個性派ラン
ランと言えば、可憐に咲き誇る花のイメージが強い方も多いのでは。これもランなの?と、思ってしまう個性的なランを集めました。
デンドロビウム・リケナストラム
Dendrobium lichenastrum
オーストラリアに自生し葉が多肉質で豆粒サイズのラン。愛くるしい見た目が人気で花も可愛い。
プロステケア・未同定種
Prosthechea sp
赤紫に色づいたまん丸のバルブがブドウの様な姿で、並んでいる様に育つ姿に見惚れる。
マキシラリア・エクイタンス
Maxillaria. equitans
造形美を感じる佇まいは、まるでサンセベリアのよう。コロンビアなどに自生している。
グッディエラ・ヒスピダ
Goodyera hispida
葉脈の際立った模様が美しく芸術品のような地性ラン。東南アジアに自生し、湿った環境を好む。
デンドロビウム・セニレ
Dendrobium. senile
モフモフ具合にぞっこん!洋ラン随一のバルブに白い軟毛が生える。東南アジアに自生。
アングレカム・レオニス (マダガスカルタイプ)
Angraecum. leonis (Madagascar Type)
多肉質な分厚い葉がギュッとまとまりある姿で可愛らしい!花も純白で香りのある美花。
オエセオクラデス・スパスリフェラ
Oeceoclades spathulifera
なんだこりゃ!と言いたくなる模様の葉と甘栗のようなバルブ。爬虫類っぽい姿もまたいい。
*写真協力:中藤洋蘭園(東京)
ラン(蘭)カタログ:今、注目のランはこれ!
洋ラン栽培歴20年の審美眼が光る!これから流行りそうな洋ランを清水さんがセレクト。どんな種類があるのか要チェック。
ファレノプシス・シレリアナ
Phalaenopsis schilleriana
フィリピンに自生する原種のコチョウラン。グレーの斑模様が特徴な葉で、不思議な美しさを奏でている。板やコルクに着生させると雰囲気が尚よい。桜と見間違えるような、透明感のあるピンク花を枝打ちした茎から咲かせた姿は実に見事。
ペクティリス・ハウケシアナ
Pecteilis hawkesiana
タイやミャンマーに自生し、2002年に発見された比較的新しい地性ラン。鮮やかな黄色の唇弁と白色の花弁の姿がアヒルの様に見えるため、「ダックオーキッド」の愛称で密かに人気。扁平で地面を這う様な見た目の葉はランとは思えない。
ドラキュラ・ロタックス
Dracula lotax
エクアドルに自生するミニチュアオーキッド。花の中心部がサル顔のように見えるため「モンキーオーキッド」の愛称で親しまれている。ドラクラ属は暑さに弱い種類ばかりだが、このロタックスは耐暑性があり、風通しが良い環境で育てやすい。
*ご紹介したランは市場の流通量がまだ少ないです。お求めの際は、洋ラン展や植物関連イベントでお探しください。
*写真協力:新垣洋らん園(沖縄)
実は知られていない。ラン(蘭)の豆知識
「これで合っているよね?」と思っていても、実は間違った解釈をしていることがあります。ここでは清水柾孝さんが、ランについての正しい豆知識を伝授。正しい情報を取り入れてランを元気に育てていきましょう!
水苔は「A」の数で選ぶのが肝
販売されている水苔はランク付けされており、品質が大きく変化します。産地はニュージーランド産とチリ産(または南米産)の2タイプ。ニュージーランド産のほうが太さ・長さ・弾力性に優れます。また、ランク付けは「 A 」を5段階表記する場合が多く、Aの数が増えるほど不純物が少なく、保水力や日持ちが明らかに変わります。大事なランの植え替えは、AAA 以上のニュージーランド産がおすすめ。
ノビル系を咲かすには10〜12℃
デンドロビウムのノビル系は、10~12℃の低温に3週間さらされることで花芽を作り出します。ポイントは、低温になる前にバルブを充実させることが大切。また、低温と同時に乾燥気味に管理し、よく日光浴させることで花芽形成が向上します。
実は間違っている日陰の解釈
ランを育てる際に「半日陰」という言葉を耳にしますが、間違った認識で広まってい ることが多いのも事実。本来の意味は「日向の場所で光を遮った空間」を指します。およそ50%遮光させることでランが好む陽射しになり、長時間日光浴させられます。午前中に光が当たり、午後に日が当たらないという環境は「半日日陰」といいます。
根の先端で生長具合を見極める
ランの生長具合は、根の先端の状態で見分けることが可能。活発に生長しているときの根の先端は艶のある黄緑色、または赤褐色になっています。先端以外は白い状態ですが、根の生長が停止すると、先端も白い表皮に覆われます。このように根の変化を確認し、夏の生長期に多くの根の先端が色付いていたら、水やり頻度を高めても良い合図になります。
新芽の反対から日を当てる
室内でランを管理していると、新芽や花芽が太陽光の方向(主に 窓際方向)に斜めに伸びてしまう…… 。そんな経験はないでしょうか?対策としては、新芽が出ている反対側からしっかり光を当てるようにします。そうすることで、新芽が真っすぐに伸びて、見た目のバランスも向 上。古い葉の光合成効率も高められます。
編集部おすすめ!ラン(蘭)グッズ
ランを育てるためには、それ相応の知識やアイテムが必要不可欠。育て方を失敗しないための便利グッズをご紹介します。
洋ランの植え付けに大活躍
ニュージーランド松ラジアータパインの樹皮を粉砕・堆積・加工・選別し、醗酵工程を加えてタンニン等を除去したバークです。30年来、醗酵バーク(オーキッドバークに窒素と水分を加えて醗酵させたもの)の名称で生産されてきた実績ある商品です。
ランの植え付けに。水で膨らむ水苔
コンパクトモスは製法特許を取得した高圧縮の板状水苔です。圧縮されているので保管場所もとらず、劣化が少なく長期保存も可能。洋ラン愛好家にも愛用者が多い水苔です。
ランの生態や育て方など、内容盛りだくさんのバイブル
今回の監修者、清水柾孝さんの著書。美しいものから珍しいものまで、ランの魅力を目一杯詰め込んだ最新バイブル。生態や種類、育て方など、ランを愉しむための要素が満載。
いかがでしたか?皆さんも是非、この記事を参考にして「ランのある暮らし」を楽しんでください♪
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