ユリ|花の季節や香り、種類、歴史や日本原産といわれる理由
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ユリの花について、特徴、花の季節や香り、歴史や日本原産といわれる理由、種類、名前の由来を紹介します。
目次
ユリの特徴
- 学名:Lilium
- 科名・属名:ユリ科ユリ属
- 分類:多年草(球根植物)
ユリの特徴
ユリは、ユリ科ユリ属の球根植物。ヨーロッパでは、バラに次いて人気のある花で、古くから栽培されていたことが確認されています。優雅で美しい花は、紋章や絵画、彫刻など、たくさんの芸術作品の中にも、その姿を残してきました。ユリのなかでも真白な花を咲かせるマドンナリリーは、聖母マリアの花として有名で、清らかさや純粋さを象徴する花として愛され、多くの絵画に描かれています。
ユリの球根は、根の塊ではなく葉が肥大化したもので、チューリップや玉ねぎと同じ鱗茎です。球根の中心から茎を伸ばし、頭頂に大きく印象的な花を咲かせます。
花はラッパのようなフォルムで、中心からしべが飛び出すようについています。ユリの花は通常6枚の花被片で構成されています。花被片とは、花びらとガクを合わせた呼称で、どちらも美しく、区別が難しいときに使われます。ユリの外側3枚の花皮片はガクに相当し、内側3枚の花被片が花びらです。おしべは、内外の花被片それぞれに3本ずつ、計6本あり、中心のめしべは1本で先端は軽く3裂しています。花粉の色が濃いオレンジや黄色で、衣服に付くと取れにくいことから、花を生ける際に花粉を取るようにします。花色は白、ピンク、赤、オレンジ、黄色、グリーンなど。品種が豊富で、八重咲きや花が開ききらない種類などもあります。
ユリの名前の由来
ユリという名前の由来は、茎に対して花が大きく、風が吹くと揺れることからユルが変化したという説、鱗片葉が寄り集まっているからヨリが変化したという説など、諸説あります。また漢字の百合という名前は、鱗片葉が何重にも重なっていることが由来とされています。
ユリの花言葉
ユリの花言葉は「純粋」「無垢」
種類別のユリの花言葉
ヤマユリの花言葉
テッポウユリの花言葉
マドンナリリーの花言葉
オニユリの花言葉
ササユリの花言葉
ユリの花の季節と香り
ユリの花の季節は、6月~8月。品種によって差がありますが、ユリの花が咲くのは概ね夏です。気温が上がり、夏の気配を感じ始める頃、茎をすっと伸ばして、その頭頂に1個から数個の花を咲かせます。咲き方は、横向きに咲くものや、上向きに咲くもの、うつむくように咲くものなどがあります。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という慣用句にもある通り、山の中の斜面でもすっと茎をのばして大きな花を咲かせているユリは、美しい人を思わせるような優雅さです。
ユリの香りの成分
ユリの魅力の1つは、香りです。ユリの香り成分は、リナロールやシスオシメンなど。リナロールは、沈丁花、クチナシ、キンモクセイを始めとする香りの良い花の多くに含まれる成分です。熟した桃のようなフレッシュな香りと表現されます。
また、ユリの香りは夜になると強くなるといわれています。夜に香りが強くなる花の多くは、蛾など夜間に活動している虫を呼び寄せるためだと考えられています。受粉のために、夜間に甘い香りで虫を呼び寄せながら、私たち人間も魅了するユリ。姿も香りも美しい花です。
ユリの歴史|日本原産といわれる理由
ユリは、非常に種類が多い植物で、100種類以上が北半球の温帯から亜熱帯、亜寒帯に分布しています。日本にはそのうち13種の自生が確認されています。
日本のユリがヨーロッパで愛されてきた歴史は古く、1800年代にまで遡ります。日本原産のユリは、香りが良く、見た目も美しいものが多いのが特徴。シーボルトを始めとする昔の植物学者が、日本で発見したユリをヨーロッパに持ち帰ったことから、ヨーロッパで人気となりました。
1840年に初めてヨーロッパで開花したテッポウユリは、その美しさから瞬く間に人気となり、マドンナリリーに代わってキリスト教の宗教行事に使用されるようになったそうです。
カノコユリは、シーボルトに「最高に美しいユリ」と称賛され、ラテン語で「美しい」という意味の「 speciosum 」が種小名になりました。
さらに日本のユリから改良されて作出されたユリは、オリエンタルハイブリッドと呼ばれ、世界中で人気があります。オリエンタルハイブリッドの代表種であるカサブランカは、日本原産のヤマユリ、ササユリ、カノコユリなどを親としてオランダで作出されました。
現在流通しているすべてのユリが日本原産というわけではありませんが、日本原産のユリやそれを親に改良された品種がたくさんあります。私たちが海外の花だと思っている美しいユリは、日本原産のユリから生まれた改良品種であることが多いようです。身近なものほど、その美しさを見逃してしまうのかもしれません。
こんなにある!ユリの種類
カサブランカ
- 学名:Lilium ‘Casa Blanca’
- 開花時期:6月~8月
カサブランカは、日本のヤマユリなどを親に作出されたオリエンタルハイブリッドと呼ばれるユリです。花は真白で大輪、香りが良く華やかなことから、花嫁のブーケにも好まれます。
ヤマユリ
- 学名:Lilium auratum
- 開花時期:7月~8月
ヤマユリは、日本原産のユリ。山林の中などで見かけます。大きな花は香りが良く、白い花びらの内側に赤や褐色の斑点があるのが特徴です。球根は食用にできます。
テッポウユリ
- 学名:Lilium longiflorum
- 開花時期:6月~8月
テッポウユリは、日本原産のユリ。花は白く、漏斗のようなフォルムをしています。マドンナリリーの代わりとして使用されることもあります。
スカシユリ
- 学名:Lilium maculatum
- 開花時期:6月~8月
スカシユリは、海岸などに自生するユリ。花色は、オレンジ色で上向きに咲くのが特徴です。香りはほとんどありません。多くの園芸種の親となっているユリです。園芸種には、オレンジ色の他に、黄色、赤、暗い赤、ピンク、白などの花を咲かせるものがあります。
ササユリ
- 学名:Lilium japonicum
- 開花時期:6月~7月
ササユリは、日本原産のユリ。本州から九州にかけて自生しています。淡いピンク色の花を咲かせます。名前の由来は、葉が笹の葉に似ているから。ヤマユリやテッポウユリに比べるとずっと小ぶりで、楚々とした野花のような雰囲気の可憐なユリです。
カノコユリ
- 学名:Lilium speciosum
- 開花時期:7月後半~8月
カノコユリは、日本原産のユリ。花の基部に鹿子のような模様が入ることが名前の由来とされています。花色は濃いピンク色、花びらが反り返るようなフォルムをしています。かつてシーボルトが美しさを絶賛し、ヨーロッパに広めたと言われています。
オニユリ
- 学名:Lilium lancifolium
- 開花時期:7月~9月
オニユリは、東アジア原産のユリ。日本や中国、韓国などアジアの国では球根を食用とします。花色はオレンジ色、花びらが反り返るようなフォルムで、内側には茶褐色の斑点があります。
ヒメユリ
- 学名:Lilium concolor
- 開花時期:6月~7月
ヒメユリは、大陸からやってきたとされているユリ。花色は赤や濃い赤、花は上向きに咲きます。花径は3~4cmと小ぶりなユリです。
知っているようで知らなかったこともあったのではないでしょうか。ユリの多くは日本原産。初夏から夏に山野を散歩すると、思いがけず美しいユリの花に遭遇することがあります。高嶺の花だなんて敬遠しないで、野に咲く姿を見に行ってみませんか。
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