同じ花が咲かない?クリスマスローズ(ヘレボルス)の原種7選
LOVEGREEN編集部
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クリスマスローズは株分けで大量に増やすことはできません。そのため、ほとんどの育種家の方は種で増やしています。しかし、種で増やしても花色、花形、花の模様が安定せず、同じ花は咲きません。それがクリスマスローズの最大の特徴であり、最大の魅力です。そのため、園芸品種をつけられないのがこのクリスマスローズなのです。 同じ花が咲かないからこそ、好みの花を見つけて、育て、新しく交配する楽しみができるクリスマスローズ。初心者からプロの園芸家の間まで、様々な段階に応じた楽しみがあるクリスマスローズの原種7選をご紹介します。
目次
クリスマスローズ(ヘレボルス)の原種と交雑種
ヘレボルス・アーグチフォリウス・ジャネットスターン
クリスマスローズは、クレマチス、ラナンキュラス、アネモネなどと同じキンポウゲ科の植物です。
日本では他のヘレボルス属を全てひとくくりにクリスマスローズと呼びますが、欧米ではヘレボルスが一般的な名前として使われており、ニゲルのみがクリスマスローズと呼ばれます。
クリスマスローズの原種をご紹介する前に、クリスマスローズを語る上で知ってもらいたい用語として、まず原種と交雑種の違いについて説明を致します。
原種とは
交配・選抜などにより改良された栽培品種のもとになった「野生種」や、一般栽培用の「種子を採るために育成した植物の種子」のことです。
現在分かっているクリスマスローズ(ヘレボルス)の原種の種類は約20種類ほどで、地中海沿岸、黒海沿岸を中心としたヨーロッパに自生しています。ただ、一種「チベタヌス」という原種のみが中国(甘粛省、湖北省、四川省など)に自生しており、幻の植物と言われていたようです。
原種ごとに自生地の環境下で適応するために進化してきたたくましい原種ですが、現在市場に出回る交雑種または交配種に比べて華やかさはありません。しかし、原種ならではの素朴で、清楚な印象を与えてくれます。
交雑種とは
遺伝的組成の異なる品種間の受粉によって新しく作り出されたもので、交雑の結果としてできたものを指します。類似した言葉として交配種があります。一般的に交雑と交配は、ほぼ同義として使用されることが多いです。
▼クリスマスローズの交配についてはコチラ
クリスマスローズ「ハイブリット」
無茎種の種間雑種である交配種には個別の種小名が無く、一括して「ハイブリッド」として扱われています。
人気のハイブリッドは、クリスマスローズの何とも言えない美しさを感じます。清楚なんだけれども、贅沢で華やかさも感じます。交配して、種をとって、花を付けるまで3年ほど育てて、ようやく交配したクリスマスローズが花咲く。長い時間をかけてようやく結果が分かるクリスマスローズ。改めて、育種家の方、生産者の方々の苦労を感じます。
クリスマスローズ(ヘレボルス)の交雑種の模様名と特徴
交雑することにより多彩な模様を形成するのが特徴です。クリスマスローズの模様には名前がついています。
フォルム名 | |
ノンスポット | 模様のないほぼ一色の花 |
スポット | 点状のそばかす模様 |
ブロッチ | やや大きめの濃色の斑点が広がる |
フラッシュ | 花弁の中心から星状の模様 |
ベイン | 花弁に脈状の模様 |
バイカラー | 花弁が2色の花色 |
ピコティー | 花弁の縁に濃色の線(覆輪) |
ネクタリー | 蜜腺が濃色 |
アイ | 蜜腺と花弁の中心が濃色 |
クリスマスローズ(ヘレボルス)の有茎種と無茎種
クリスマスローズ(ヘレボルス)は葉や花のつき方などによって「有茎種」と「無茎種」に分けられます。その種類によって栽培方法も違ってきます。
有茎種とは
茎が立ち上がって葉を展開し、その頂部に花を咲かせます。根茎は未発達で細い根が生えるのが特徴です。
無茎種とは
葉柄と花柄が根茎から別々に直接出ています。根茎は丈夫で太い根が生えます。
クリスマスローズ(ヘレボルス)の原種7選
クリスマスローズ(ヘレボルス)の花の色や形の違うの要因として、原種と交雑種、有茎種と無茎種があります。
その中でも、今回はクリスマスローズ(ヘレボルス)の原種の中から以下7種類について特徴をご紹介します。
1,Helleborus argutifolius(ヘレボルス・アーグチフォリウス)
原生地 | コルシカ島(フランス)、サルデーニャ島(イタリア) |
草丈 | 40~120cm |
花径 | 2~3cm |
花色 | 黄緑 |
有茎種
小種名は「鋭い鋸葉を持つ葉」という意味です。ヒイラギのようなギザギザの葉で、3裂した葉を持ち、花色・花形にばらつきがほとんどない品種です。 一つの花茎から30輪以上の花を咲かせます。日本の高温多湿な気候に順応する育てやすい原種の一つです。
2,Helleborus odorus(ヘレボルス・オドルス)
原生地 | スロベニア、ハンガリー、ルーマニア、ボスニア・ヘルツェゴビナなど |
草丈 | 25~50cm |
花径 | 5~7cm |
花色 | 緑、黄色がかった薄い緑 |
無茎種
小種名は「香りのよい」という意味です。その名の通り香りが良い品種です。強健で、庭に植えでも良く育ち、とても栽培しやすい原種です。葉は常緑性で、5つに分かれ、外側サイドの葉は更に3つ以上に分かれます。花形は半球形のカップ咲きが多く、花色・花形・大きさは地域的な変異がありますので、それぞれの個性が出る楽しみがあります。1つの花柄に5~6輪の花をさかせます。
3,Helleborus foetidus(ヘレボルス・フェチダス)
原生地 | イギリス、ドイツ、フランス、スイス・イタリア、スペイン、ポルトガルなど |
草丈 | 40~70cm |
花径 | 1~1.5cm |
花色 | 黄緑 |
有茎種
種小名は「異臭のする」という意味をもち、実際に青臭い匂いはありますが可愛らしいベルの形でとても美しい草姿です。大株になると100輪近い花を咲かせることもあります。葉は常緑性で、8枚以上の小葉に分かれています。
4,Helleborus niger(ヘレボルス・ニゲル)
原生地 | スロベニア、ドイツ、クロアチア、スイス、イタリア、オーストリアなど |
草丈 | 20~30cm |
花径 | 3~5cm |
花色 | 白(薄いピンク) |
有茎種(中間種)
有茎種と無茎種の両方の特徴・性質をもち、どちらとも交雑する謎めいた原種です。種小名は「黒」という意味で、根が黒いことからきています。横向きに開花する傾向の強い花で、花が良く目立ちます。常緑性で、他の原種よりも肉厚な葉をしています。花形はバラつきが多く、種をまくとかなり乱れた花も出現します。
花茎に1~3輪花を咲かせ、他のクリスマスローズ(ヘレボルス)は咲き進むにつれて緑色になっていきますが、ニゲルは咲き進むにつれてややピンクへと色づいていき、かなり赤に染まるものもあります。 イギリスでクリスマス時期に、アレンジメントやクリスマスカードによく登場する最も有名な品種です。
5,Helleborus torquatus(ヘレボルス・トルカータス)
原生地 | ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ、セルビア |
草丈 | 30~40cm |
花径 | 3~4cm |
花色 | 紫~緑 |
無茎種
小種名は「襟飾り」を意味し、花首の付け根が薄い色になっている事に由来してます。開花後の4~5月にかけて葉が展開します。幼葉には軟毛があり紫色がかります。葉が紫から緑色に変わっていく様もカラーリーフとしての楽しみのひとつですね。花形・花色が変異に富んでいるため様々な表情を見せてくれます。
6,Helleborus thibetanus(ヘレボルス・チベタヌス)
原生地 | 中国(甘粛省、湖北省、四川省など) |
草丈 | 30~50cm |
花径 | 4~6cm |
花色 | 白~ピンク(赤いベインが入るもの) |
無茎種
東アジアに原生する唯一のクリスマスローズ(ヘレボルス)で、小種名は「チベット」を意味します。1869年にフランス人宣教師に発見されてから、120年余りの間生きた状態の植物が見つからなかったため、幻の植物と言われていましたが、1989年に日本人によって再発見されました。交配種の親としても優れており、他のものとの交配で驚くほどの変異が期待できるクリスマスローズ(ヘレボルス)なんだそうです。
7,Helleborus vesicarius(ヘレボルス・ヴェシカリウス)
原生地 | トルコ、シリア |
草丈 | 20~40cm |
花径 | 2~5cm |
花色 | 緑、花弁の中心に赤い模様 |
有茎種
種小名は「膀胱に似た」を意味し、結実すると大きく膨らむ子房の形状に由来しています。花がフェチダスに似ていますが、それ以外は他のクリスマスローズ(ヘレボルス)とは違う形をしています。花よりも膨らんだ房に観賞価値があるともいわれる草姿、性質ともにクリスマスローズ(ヘレボルス)らしくない原種です。
いかがでしたか?
原種でも様々な個体差が生じるクリスマスローズ(ヘレボルス)の奥深さに世界中の人々が魅了されています。みなさんの育てているクリスマスローズ(ヘレボルス)はどんな種類ですか?
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