塩害とは?塩害にも強い植物があるの?
小野寺葉月
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塩害というと、沿岸部でしか発生しないと思っていませんか?私もそう思っていました。海風や塩水による直接的な被害だけだと。しかし、実際には内陸部においても塩害はおこりうるのです。
目次
塩害とは?
塩害とは、塩分による作物の被害のことを言います。
植物の葉に塩が付くとどうなるか。塩が付いたところから水分がどんどん蒸発して、最後には枯れてしまいます。また、土壌の塩分濃度が上昇すると、浸透圧が変化して植物は根から水分を吸い上げることができなくなってしまいます。料理で野菜の塩もみをするときに水がたくさん出ますよね。あれは浸透圧の変化により、野菜の中に入っていた水分が外に出るしくみです。土壌の中でも同じことが起こっているんですね。
塩害の発生要因とは?
塩害は大きく二つに分けられます。
A. 自然界からもたらされるもの:海水・台風・津波
B. 人的要因のもの:灌漑によるものや過剰肥料により土壌の状況が変化しているもの
A. 自然界からもたらされるもの
直接海水が高潮や津波、海水の遡上(そじょう・海水が川を逆流してくること)などにより植物、農作物にかかってしまうものと、台風などの暴風雨で海から巻き上げられた海水の飛沫が風によって運ばれ、内陸部でも塩害の被害を被ることがあります。畑に海水が浸水してしまうと、例えすぐに水が引いても塩分は土壌に残ってしまうので、除塩作業が必要になります。
こうした自然からもたらされる塩害(とくに台風・暴風雨)を防ぐためにできることは、台風の進路になってしまった場合は早めに鉢植えを屋根のある場所へ移動させることです。台風後の対策は対処方法の箇所で説明しています。
B. 人的要因のもの
灌漑による塩害
灌漑とは畑や田んぼを作るときに水路をひく方法のことです。灌漑が必要な地域というのは、その土地の気候条件だけでは作物が育たないために工夫をしています。灌漑農法といいます。これは乾燥地でよく行われる方法ですが、乾燥地で雨が少ない場合、土や農作物から水分が蒸散する速度のほうが、土に補給される水の量を上回ったとき、地下に蓄積されていた塩分が地表に上昇してきます。すると、その土壌の塩分濃度が上昇し、作物を植えると浸透圧が変化し、水分を吸えなくて干上がってしまう・・・といった塩害が発生します。
連作障害で起こる塩害
連作障害でも塩害と同じ状況になる場合があります。過剰に与えた肥料を作物が吸収しきれず、土壌に肥料の成分が残ります。肥料には塩分が含まれていなくても、土の中にある金属イオンと結合することで、塩化ナトリウムになることがあります。結果、土壌の塩分濃度があがり、塩害が起こってしまうのです。
塩害にあった植物の対処方法とは?
では、実際に塩害にあってしまった植物はどうしたらいいのでしょうか。
真水で塩を洗い流す
できるだけ早く対処するのがポイントです。台風の被害があった場合には、台風一過で翌日はとてもいいお天気になることがあります。晴天の日差しと気温の上昇によって植物の蒸散が進み、一気に被害が進行してしまうことがままあるようです。
変色した部分を切り戻す
茶色く・黒くなってしまった部分(塩がついて水分が蒸発・枯れまで一気に進んでしまった部分)は戻らないので、切り戻します。脇芽が出てくればまた生長が期待できます。
肥料・直射日光は控える
植物は塩によって弱った状態にあります。その状態で肥料をあげたり直射日光にさらすと弱ってしまうことになるので気をつけましょう。水もあげすぎないようにしましょう。
塩害にあった土壌の対処方法とは?
塩害に見舞われた場合、植物だけではなく土壌も被害を受けています。
塩害から改善するために「除塩」をしよう
除塩とは、土壌から塩分を取り除くことです。真水で塩分を洗い流すことで除塩ができます。ですが、鉢植えはまだしも広大な土地の場合、真水のみで除塩するのは効率が悪いです。そのために専用の土壌改良剤や地下に排水を作るなど工夫がなされています。土壌改良剤の中には石灰が含まれています。石灰は土壌のなかのナトリウムを吸着することで、土壌の塩分を排水と一緒に排出しやすくします。
土はよく掘り起こして耕します。そうすることで土壌で石灰とナトリウムが結合しやすくなり、排水されやすくなります。それを繰り返すことで土壌の塩分濃度が下がります。
塩生植物とは?塩害に強い植物がある?
塩害に強い植物はどんなものがあるのかな?そう思いいろいろ調べていたら、塩生植物というキーワードを知りました。
塩生植物とは海水に浸かっていても生育可能な植物のことです。先ほど「土壌の塩分濃度が上昇すると浸透圧が変化し、水分が吸えない、または水分を排出できずに根腐れを起こしてしまう」と書きましたが、植物の中には違った進化を遂げたものがいます。
塩生植物は、海水のような高濃度塩水でも生長できます。例えばマングローブ。マングローブは海水の湿地帯で元気に成長します。ハマボウなどもそうです。
塩に耐性がある植物
海岸沿いに自生している植物は基本的に塩への耐性は強いはずですよね。
街路樹・防風林におすすめ
海沿いの防風林や街路樹に植えられているような木々です。中には非常に大きくなったり、生育場所の気温・気候にも差がありますので、植える場所のスペースと植えたい植物の特徴をよく考えてから植えましょう。
アスナロ、イヌビワ、ウバメガシ、オオシマザクラ、クロマツ、シイノキ、ソテツ、タイサンボク、タブノキ、ポプラ、ヤシ、ネズミサシ、ヒメユズリハ、カシワなど
シンボルツリーにおすすめ
サルスベリ、ニセアカシア(ハリエンジュ)、プルメリア、ゲッケイジュ、タイサンボク、キョウチクトウ、マルバグミ、ヤマモモ、ナンキンハゼ、ザクロなど。
生垣におすすめ
ハマヒサカキ、サンゴジュ、イヌマキ、マサキ、ヤブツバキ
中低木・葉を楽しむもの
アオキ、ギョリュウ、シャリンバイ、トベラ、ハイビャクシン、ウェストリンギア(オーストラリアンローズマリー)
中低木・花を楽しむもの
グレビリア、ガクアジサイ、ハマナス、ハコネウツギ、ハマゴウ、カンナ
多年草
ラベンダー、ローズマリー、サルビア、タイムなど地中海原産のハーブは潮風に強い傾向があります
グランドカバー
クラピア、タマリュウ、ノシラン、地這性ローズマリー、ワイヤープランツ、ブライダルベール
人気の庭木シマトネリコやモミジなどは塩害に強くないようです。鉢植えは屋根付きの場所や屋内へ避難させたりすることができますが、庭に地植えをするときは、沿岸部や潮風が吹く場所のお庭では種類の選定に気をつけましょう。また、塩害に強くても塩水を浴びてしまったり、台風などで塩水の混ざった雨がかかった場合には、塩害対策をしましょう。
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