ユズリハってどんな植物?昔からの日本の縁起木である理由
山田智美
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縁起の良い木といわれるユズリハについて、基本情報や特徴、縁起木である理由、名前の由来や種類など。ユズリハについて紹介します。
目次
ユズリハとは?基本情報
- 学名:Daphniphyllum macropodum
- 科名属名:ユズリハ科ユズリハ属
- 分類:常緑高木
- 樹高:10~15m
ユズリハの特徴
ユズリハは、ユズリハ科ユズリハ属の常緑高木。1つの科に1つの属しか存在せず、東アジアの温帯から熱帯に約10種が分布しています。日本では本州の福島より南に自生しています。
樹高10~15mにまで達する高木で、公園や庭園、寺社の境内などに植えられています。春に新しい枝を伸ばし、新葉は放射状に広がるように展開します。赤い葉柄と光沢のある濃いグリーンの葉が印象的で、地味ながら色気があります。葉の長さは15~20cmと大きく、縦に長い楕円形です。
雌雄異株で、5月頃に葉の脇からたくさんの花を咲かせ、秋に黒い実を付けます。ユズリハの花は、茶色でとても小さく、非常に地味なので、咲いていてもほとんど気づかれることはありません。開花の時期に下を通ると茶色い花が落ちているようなことがありますが、虫か何かのように見えて、ちょっとドキッとします。
葉や樹皮にアルカロイドが含まれていることから、昔は虫の駆除に使用したり、新芽を加熱して食用にしたそうです。
ユズリハが縁起木といわれる理由
ユズリハは昔から、家の永続、順調な世代交代、新旧の移り変わりの象徴として、縁起木とされてきました。今でも正月飾りに使用されています。
ユズリハが縁起木といわれる理由は、春に上に向かって伸びる新葉と、場所を譲るように下垂する古葉が、同時に見られることに由来します。新しい世代に家長を譲り、隠居をして見守る、順調な世代交替を連想させることから縁起が良いといわれるようになりました。
「新葉に譲るように古葉が落ちて入れ替わる」と解釈されているようですが、古葉はなかなか落葉しません。それどころか、しばらく新葉の生長を見届けるように存在します。単純な世代交代ではなく、若い世代が生長するまで見届けるという、温かく優しい関係です。
ユズリハは、清少納言の枕草子に登場していることから、平安時代には縁起の良い木とされていたことがうかがえます。枕草子では、歯固めの食事の飾りとされていることに触れているので、この頃にはすでに正月の縁起物として使用されていたようです。
ユズリハの伝承
他にも地方によって、様々な伝承があります。「縫い始め(1月2日)にユズリハを2枚縫い合わせて神様に供える(それまでは針仕事はしない)」「お腹をこわしたときは、正月飾りに使ったユズリハを焼いて飲む」「ユズリハにおまじないを書いて枕の下に敷いて寝ると湿疹に効く」などなど。ユズリハは、縁起の良い木であり、わたしたちにとって身近な存在だったようです。
ユズリハの漢字や名前の由来
ユズリハは、漢字で「楪」「杠」と書きます。また「譲葉」「楪葉」「杠葉」という表記も目にします。ユズリハの漢字が幾通りもあることについては、諸説あり判然としません。
ユズリハという名前の由来は、「新しい葉に場所を譲る様子」に由来しています。ユズリハの中国名は「交譲木」です。文字通り、新葉に古葉が場所を譲ることに由来しています。
ユズリハの使い方
ユズリハの使い方は、主に鏡餅の下敷きです。鏡餅は、半紙やユズリハを敷いた上に置き、そのうえに橙を乗せて飾ります。
正月飾りのグリーンといえば、松が主流ですが、昔はユズリハも使用されていたそうです。ユズリハは、永遠を象徴する常緑樹であり、世代交代の縁起木です。しめ縄に付けたり、松と合わせたり、正月飾りのちょっとしたアレンジに使用してみてはいかがでしょうか。
他にも、鏡餅の下敷きにされるように、大きく面積のある葉は、何かを乗せるのにぴったり。鏡餅だけでなく、真赤な南天の実を乗せたり、小さなアレンジメントの下敷きにしたり、正月飾りに使用できます。
ユズリハの種類
ユズリハはとても大きくなるので、個人のお庭で育てるのはちょっと難儀な木です。ユズリハのなかでもヒメユズリハなどは、あまり大きくならないので、庭木として利用されます。
ヒメユズリハ
- 学名:Daphniphyllum teijsmannii
- 樹高:5~10m
ヒメユズリハは、ユズリハよりも樹高も葉も、全体的に小ぶりな品種。葉の密度が高く、ある程度の耐陰性もあるので、庭木としても利用されます。
ユズリハと同じく、本州の福島以南に分布しています。ユズリハが山地に多いのに対して、ヒメユズリハは海岸近くを好むようです。ヒメユズリハもユズリハと同じように、正月飾りに使用されます。
エゾユズリハ
- 学名:Daphniphyllim var. humile
- 樹高:1~2m
エゾユズリハは、高さ1~2m程の小型種。ユズリハの変異種で、北海道から日本海側で見られます。幹が直立せず、高さが低いのが特徴です。さらにエゾユズリハとユズリハが交雑して、樹高4~5mのものなどもあるそうです。
ユズリハの実ってどんな実?
ユズリハの実は、10月~11月頃に黒く熟します。葉の付け根の脇からたくさんの実を、ブドウのように垂れ下げます。ユズリハの葉は大きく、常緑で秋から冬の間も茂っているので、木を斜め下からのぞくように確認しないと、見えないかもしれません。
黒い実は、ブルーベリーのように外側に白いブルームをまとい、柔らかそうに見えますが、食用にできるという話は聞いたことがないので、食べないようにしましょう。
縁起の良い木として有名なユズリハについて、興味を持っていただけましたか?意外と身近なところで見かける木です。ちょっと立ち止まって眺めてみませんか。
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