「盆栽家」山崎ちえさん/盆栽の本道を、しっかり歩んでいきたい

土屋 悟

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園芸雑誌や盆栽専門誌などでご活躍の山崎ちえさん。大学卒業後に就職した一般企業を辞めて、盆栽の道に入ったそう。でも、盆栽家ってどうやったらなれるんでしょう?山崎さんがどうやって盆栽家になったのかなどをインタビューしてきました。

目次

プロフィール

盆栽と出会ったきっかけを教えてください。

安定した会社勤めをやめて、盆栽家を目指すことに怖さはありませんでしたか?

盆栽家の修業とはどのようなものなのでしょうか?

独立してからはどんな風に仕事をしてるんですか?

今の仕事でやりがいを感じることは?

これからやりたいことは何かありますか?

プロフィール

■名前: 山崎ちえ  ■職業: 盆栽家。公益社団法人全日本小品盆栽協会認定講師  ■出身地: 神奈川県  ■居住地: 神奈川県  ■ボタニカル歴: 10年くらい

■名前: 山崎ちえ

■職業: 盆栽家。公益社団法人全日本小品盆栽協会認定講師

■出身地: 神奈川県

■居住地: 神奈川県

■ボタニカル歴: 10年くらい

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盆栽と出会ったきっかけを教えてください。

もともと野山に出て自然に包まれるのが好きで、大学時代はずっとワンダーフォーゲル部に所属して、休みのたびに山登りをしていました。  大学卒業後に就職すると、そんな機会もすっかりなくなってしまったんですが、たまたま本屋さんで手に取った盆栽の本に、「盆栽は一つの鉢の中に自然の風景を再現する」と書いてありました。  なかなか山に登りに行く機会ができないけれど、これならば身近に山の自然を感じることができるかも?と思って、盆栽教室に通うようになりました。  仕事をしながら、教室に1年ほど通って盆栽を学んでいました。ますます盆栽が好きになっていくとともに、会社勤めが向いていないなあと思うこともふえていきました。  それで、1年ほど教室に通ってから会社勤めをやめ、盆栽園に修業に入りました。

もともと野山に出て自然に包まれるのが好きで、大学時代はずっとワンダーフォーゲル部に所属して、休みのたびに山登りをしていました。

大学卒業後に就職すると、そんな機会もすっかりなくなってしまったんですが、たまたま本屋さんで手に取った盆栽の本に、「盆栽は一つの鉢の中に自然の風景を再現する」と書いてありました。

なかなか山に登りに行く機会ができないけれど、これならば身近に山の自然を感じることができるかも?と思って、盆栽教室に通うようになりました。

仕事をしながら、教室に1年ほど通って盆栽を学んでいました。ますます盆栽が好きになっていくとともに、会社勤めが向いていないなあと思うこともふえていきました。

それで、1年ほど教室に通ってから会社勤めをやめ、盆栽園に修業に入りました。

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安定した会社勤めをやめて、盆栽家を目指すことに怖さはありませんでしたか?

確かに毎月の収入があるというのは安心材料でしたが、そのまま会社員を続けていくことに対する不安がものすごく大きかったんです。自分が仕事を何年も続けていって、事務仕事のプロフェッショナルになるイメージが当時は全然湧いてこなくて。なので、せっかく仕事にするのなら、自分が熱中しているものに突き進んでいきたいなと思ったんです。

確かに毎月の収入があるというのは安心材料でしたが、そのまま会社員を続けていくことに対する不安がものすごく大きかったんです。自分が仕事を何年も続けていって、事務仕事のプロフェッショナルになるイメージが当時は全然湧いてこなくて。なので、せっかく仕事にするのなら、自分が熱中しているものに突き進んでいきたいなと思ったんです。

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盆栽家の修業とはどのようなものなのでしょうか?

多くの場合は、盆栽園で弟子として3年の修業を経て、一人前の盆栽家として独り立ちします。修業期間中はあくまで弟子入りの状態なので、従業員ではありません。なので、入って1年目は収入ゼロ。2年目と3年目は月5万円の手当が出ました。仕事中の食事などは出してもらったりしましたが、実家暮らしでもなかなかキツかったので、飲食店などのアルバイトなどをしながら、毎日盆栽の勉強をしました。  盆栽で扱う樹木の種類はたくさんありますが、それぞれの特徴を理解した上で手入れをしないといけません。なので、技術だけでなく樹木について覚えることがたくさんあります。私が弟子入りしたのは、神奈川県の大和園という盆栽園でした。ありがたいことに、大和園では最初から針金かけなどの作業をどんどんやらせてくれたので、おかげで様々な樹種について学ぶことができました。  しかし、それぞれの種類の春なら春の手入れは、年に1回しかできません。3年やっていても、それぞれの季節の手入れは3回しかできないことになります。なので、盆栽の技術を身につけることを考えると、3年というのは長いようでいて短すぎるくらいなんです。  修業、弟子入りといっても、割り振られた仕事をこなして、教えてもらえることだけを学んでいたんじゃ、十分なスキルや経験は積めません。自分からいろんな樹種に興味を持って実際に作業をするようにしていかないと、とても3年で独り立ちはできません。というか、3年修業してもまだまだわからないことは多いです。  今でも、ほかの人がつくった盆栽を見たり、先輩方に聞いたりして学びながらやっているというのが本音ですね。

多くの場合は、盆栽園で弟子として3年の修業を経て、一人前の盆栽家として独り立ちします。修業期間中はあくまで弟子入りの状態なので、従業員ではありません。なので、入って1年目は収入ゼロ。2年目と3年目はわずかではありますがお手当を頂きました。仕事中の食事などは出してもらったりしましたが、実家暮らしでもなかなかキツかったので、飲食店などのアルバイトなどをしながら、毎日盆栽の勉強をしました。

盆栽で扱う樹木の種類はたくさんありますが、それぞれの特徴を理解した上で手入れをしないといけません。なので、技術だけでなく樹木について覚えることがたくさんあります。私が弟子入りしたのは、神奈川県のやまと園という盆栽園でした。ありがたいことに、やまと園では最初から針金かけなどの作業をどんどんやらせてくれたので、おかげで様々な樹種について学ぶことができました。

しかし、それぞれの種類の春なら春の手入れは、年に1回しかできません。3年やっていても、それぞれの季節の手入れは3回しかできないことになります。なので、盆栽の技術を身につけることを考えると、3年というのは長いようでいて短すぎるくらいなんです。

修業、弟子入りといっても、割り振られた仕事をこなして、教えてもらえることだけを学んでいたんじゃ、十分なスキルや経験は積めません。自分からいろんな樹種に興味を持って実際に作業をするようにしていかないと、とても3年で独り立ちはできません。というか、3年修業してもまだまだわからないことは多いです。

今でも、ほかの人がつくった盆栽を見たり、先輩方に聞いたりして学びながらやっているというのが本音ですね。

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独立してからはどんな風に仕事をしてるんですか?

独り立ちしてからは、大きく分けて「売る仕事」と「教える仕事」をはじめました。  「売る仕事」というのは、盆栽展や盆栽祭りなどのイベントで盆栽や鉢、資材などを売る仕事ですね。真夏を除き、ほぼ月に1回はどこかのイベントで盆栽の販売を行っています。  独立直後は売れる盆栽のストックもなければ資金もありません。修業をした園の盆栽をイベントで委託販売で売らせてもらったりしていました。そうやって資金をつくって少しずつ自分で盆栽や鉢、資材を仕入れて売れるようになりました。  「教える仕事」は盆栽教室ですね。独立してすぐに教室を開き、週に1回のペースで、首都圏の数カ所で教室をおこなっています。

独り立ちしてからは、大きく分けて「売る仕事」と「教える仕事」をはじめました。

「売る仕事」というのは、盆栽展や盆栽祭りなどのイベントで盆栽や鉢、資材などを売る仕事ですね。真夏を除き、ほぼ月に1回はどこかのイベントで盆栽の販売を行っています。

独立直後は売れる盆栽のストックもなければ資金もありません。修業をした園の盆栽をイベントで委託販売で売らせてもらったりしていました。そうやって資金をつくって少しずつ自分で盆栽や鉢、資材を仕入れて売れるようになりました。

「教える仕事」は盆栽教室ですね。独立してすぐに教室を開き、週に1回のペースで、首都圏の数カ所で教室をおこなっています。

 

最近は上野グリーンクラブで盆栽のワークショップも行っています。上野グリーンクラブは盆栽協同組合の施設なんですが、盆栽や山野草、伝統園芸などを売る常設の売店があります。  私も常設売店に参加して盆栽を売っていて、店番をする日とは別に、月に2回クラブで教室を開催しています。教室はお客様が持っている盆栽の手入れを一緒に行い、季節の手入れをお教えする教室です。盆栽の育て方がわかれば安心して売店で盆栽を買えますし、自分の欲しいと思う盆栽の手入れができるのが良い点です。

最近は上野グリーンクラブで盆栽のワークショップも行っています。上野グリーンクラブは盆栽協同組合の施設なんですが、盆栽や山野草、伝統園芸などを売る常設の売店があります。

私も常設売店に参加して盆栽を売っていて、店番をする日とは別に、月に2回クラブで教室を開催しています。教室はお客様が持っている盆栽の手入れを一緒に行い、季節の手入れをお教えする教室です。盆栽の育て方がわかれば安心して売店で盆栽を買えますし、自分の欲しいと思う盆栽の手入れができるのが良い点です。

 

グリーンクラブでは盆栽のほか鉢も購入可能。

グリーンクラブでは盆栽のほか鉢も購入可能。

このほかに、盆栽のイベントの運営を行ったり、海外の盆栽展でのデモンストレーションをしに行ったりということもあります。

盆栽関連のイベントが月1回で教室が月に4〜5回。仕入れに行ったり盆栽誌の原稿、取材などもあるので、あまりまとまった休みはないですが、映画や読書、友人と出かけたりと息抜きしています。一人自営業で、考えることや作業に追われてキャパオーバーになりそうな時もあるので、息抜きを大切にして、ゆったりとした時間を持てるようにしながら毎日過ごしています。

もちろん、毎日盆栽の水やりをしますし、剪定や針金かけといった季節のメンテナンスをしたりというのもあります。これは、植物に関する仕事に共通でしょうね。

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今の仕事でやりがいを感じることは?

仕事で達成感を感じるのは、実は教室の生徒さんと生徒さんの盆栽の成長具合だったりします。  何年も通ってくれている生徒さんが、今まではいつもこちらが手直ししていたことを、直される前にできるようになっていたり、今まで針金が上手くかからなかった人が、上手くかけられるようになったり。そして、生徒さんの盆栽が元気にかっこ良くなっている姿を見ると、生徒さんに愛されている様子が分かり、嬉しくなります。  自分が手がけている盆栽も変化はしていくんですが、それ以上に、盆栽を始めた方たちの変化や成長を見るのが嬉しいし、やりがいを感じる部分です。

仕事で達成感を感じるのは、実は教室の生徒さんと生徒さんの盆栽の成長具合だったりします。

何年も通ってくれている生徒さんが、今まではいつもこちらが手直ししていたことを、直される前にできるようになっていたり、今まで針金が上手くかからなかった人が、上手くかけられるようになったり。そして、生徒さんの盆栽が元気にかっこ良くなっている姿を見ると、生徒さんに愛されている様子が分かり、嬉しくなります。

自分が手がけている盆栽も変化はしていくんですが、それ以上に、盆栽を始めた方たちの変化や成長を見るのが嬉しいし、やりがいを感じる部分です。

これからやりたいことは何かありますか?

イベントなどで盆栽を売って、来場者と話をしていると、ここ1年くらいで盆栽に興味を持ってくれる人はすごく増えたと思います。やはり、2017年に埼玉で世界盆栽大会が開かれたのが大きかった気がしますね。  新しく盆栽の世界に入ってくる人は、伝統的な盆栽をしっかり学んでつくりたいという人もいれば、ちょっとおしゃれな小さな木の鉢植えを飾ってみたいという人もいます。  また、盆栽に興味を持つ人が増えることで、盆栽界の若手にも光が当たるようになりましたが、そのなかにも盆栽の本筋を守ってやってる人もいれば、盆栽を軸に、新しいものをつくったり提案している人もいます。  これは、多くの人が盆栽の世界に入ってくることで、盆栽の楽しみ方が広がったということ何だと思います。そういう状況の中で自分に何ができるかなということは時々考えます。私は盆栽園での修業、独立というスタンダードなルートを通ってこの道に入ったので、盆栽家としては伝統的な盆栽というラインを守りつつ、新しいものにも目を配っていきたいなと思っています。  現代的な盆栽の楽しみ方をするときにでも、昔ながらの技術は必ず役に立ちます。カジュアルで今っぽい楽しみ方をしたい人に、適切なアドバイスをすることもできます。  逆に、伝統的な盆栽を学びたいという人には、今だとこんな楽しみ方もあるんですよ、ということを教えてあげたい。せっかく学んだ自分の技術や経験を生かして、より多くの人に豊かな盆栽の世界を楽しんでもらうための、懸け橋のような役割をして行ければいいな、と思っています。

イベントなどで盆栽を売って、来場者と話をしていると、ここ1年くらいで盆栽に興味を持ってくれる人はすごく増えたと思います。やはり、2017年に埼玉で世界盆栽大会が開かれたのが大きかった気がしますね。

新しく盆栽の世界に入ってくる人は、伝統的な盆栽をしっかり学んでつくりたいという人もいれば、ちょっとおしゃれな小さな木の鉢植えを飾ってみたいという人もいます。

また、盆栽に興味を持つ人が増えることで、盆栽界の若手にも光が当たるようになりましたが、そのなかにも盆栽の本筋を守ってやってる人もいれば、盆栽を軸に、新しいものをつくったり提案している人もいます。

これは、多くの人が盆栽の世界に入ってくることで、盆栽の楽しみ方が広がったということ何だと思います。そういう状況の中で自分に何ができるかなということは時々考えます。私は盆栽園での修業、独立というスタンダードなルートを通ってこの道に入ったので、盆栽家としては伝統的な盆栽というラインを守りつつ、新しいものにも目を配っていきたいなと思っています。

 

現代的な盆栽の楽しみ方をするときにでも、昔ながらの技術は必ず役に立ちます。カジュアルで今っぽい楽しみ方をしたい人に、適切なアドバイスをすることもできます。  逆に、伝統的な盆栽を学びたいという人には、今だとこんな楽しみ方もあるんですよ、ということを教えてあげたい。せっかく学んだ自分の技術や経験を生かして、より多くの人に豊かな盆栽の世界を楽しんでもらうための、懸け橋のような役割をして行ければいいな、と思っています。

現代的な盆栽の楽しみ方をするときにでも、昔ながらの技術は必ず役に立ちます。カジュアルで今っぽい楽しみ方をしたい人に、適切なアドバイスをすることもできます。

逆に、伝統的な盆栽を学びたいという人には、今だとこんな楽しみ方もあるんですよ、ということを教えてあげたい。せっかく学んだ自分の技術や経験を生かして、より多くの人に豊かな盆栽の世界を楽しんでもらうための、懸け橋のような役割をして行ければいいな、と思っています。

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▼山崎ちえさん公式サイト  BONSAIちえ  ▼山崎さんTwitter  @bonsai_chie  ▼山崎さんInstagram  bonsaichie  ▼上野グリーンクラブHP  上野グリーンクラブ  ▼上野グリーンクラブ常設売店について  https://www.bonsaichie.com/entry/2017/06/07/160556

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土屋 悟

長野県松本市生まれ。早稲田大学第二文学部在学中より雑誌編集部でのアルバイトの延長でライター活動を始め、卒業後もフリーライターとして活動。 その後、編集プロダクションをいくつか経て、2009年より約9年間NHK出版「趣味の園芸」テキストの編集兼ライターに従事。 最近は湿度を好む植物、特に着生ランをいろいろ育ててます。 また、ガラスケースとLEDを使った屋内での植物栽培、窓がないトイレで育てるパルダリウム「トイレリウム」などもやってます。ときどき実家の庭の手入れもしており、庭仕事では剪定が好きです。【twitter】 @tutti0514 【Instagram】 @satorutsuchiya_

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