暦(二十四節気)とガーデニング|「土用(どよう)」人も一休み、土も一休み

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白斑の葉が涼しげなハンゲショウ。雑節の半夏生の頃に花を咲かせます

みなさんは、「暦(こよみ)」をガーデニングに活用していますか? 暦には、「二十四節気」や「雑節」と呼ばれる季節の区切りがあり、農作業の目安になってきました。7月の暦にあるのは、二十四節気の小暑(しょうしょ)、大暑(たいしょ)と、雑節の半夏生(はんげしょう)、土用(どよう)。ガーデニングではそれぞれ何をすべき時期なのでしょうか。

目次

暦の基礎知識

暦は中国から朝鮮半島を通って伝わり、飛鳥時代の推古12604)年に日本初の暦が作られたとされています。当時の暦は「太陰太陽暦」で、月の満ち欠けをもとにして1か月を決めていました。

この太陰太陽暦は明治の初めまで長く使われましたが、近代化を進めるため西洋に学んだ明治政府が太陽暦の導入を決定。太陽暦とは、地球が太陽の周りを一回りするのにかかる時間を1年とする暦です。

太陰太陽暦がいわゆる旧暦、太陽暦が新暦です。日本の暦が旧暦から新暦に変わったのは明治51872)年のことでした。

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新暦で起こった混乱

二十四節気

この旧暦から新暦への移行で、現代にも続く混乱(?)が生まれました。旧暦が使われていたのは明治5年12月3日まで。その翌日が、新暦の明治6年1月1日となったのです。ほぼ1か月のずれがここで生じました。

2025年の正月は、新暦ではもちろん1月1日ですが、旧暦の正月(旧正月)は1月29日です。農作業の目安となる二十四節気も旧暦を基準に作られたものですから、季節感としても、同様のずれが起こりました。

もともと、二十四節気が生まれた中国と日本では気候も違い、季節感のずれはありました。それが、さらにずれたわけです。

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近年の気候でさらに混乱?

こうして旧暦と新暦で季節感がずれましたが、それとは別に季節感を狂わせている要因が近年の気候変動です。二十四節気の小暑は、暑さが厳しくなりはじめる季節の目安で、毎年7月7日頃からの15日間を指します。

ところが、2022年の日本は、5月には暑くなりました。5月29日に栃木県佐野市と群馬県高崎市で最高気温35℃以上の猛暑日になり、6月25日には群馬県伊勢崎市で40.2℃を記録し、6月の観測史上初めて40℃を超えました。

ちなみに、台風などの影響で気温が比較的に低かった2021年の東京でも、夏日(最高気温25℃以上)になった初日は5月28日、真夏日(30℃以上)の初日は6月8日でした。小暑よりも前に、暑さは始まっていたのです。

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7月の暦に沿って考えると・・・

ウリ科のスイカも夏の土用のおすすめ食材

7月の暦は、2025年を例に取ると、7月1日の半夏生に始まり、7日に小暑、19日に土用、22日に大暑と続きます。雑節の半夏生は、「天から毒気が降りる日」とされ、昔の農家は作業を休みました。厳しい夏を迎える前の休息日だったのでしょう。

そして、暑さが始まる小暑と、最も厳しくなる大暑の間にあるのが土用です。土用は春夏秋冬それぞれにあり、旬の食材で栄養を摂るといいとされてきました。夏の土用には「う」の字で始まるものを食べる習慣があります。

2025年の土用

冬の土用 1月17日 「ひ」で始まる食材 ひらめ、ひもの、ひじき など
春の土用 4月17日 「い」で始まる食材 いんげん、いも、いわし など
夏の土用 7月19日 「う」で始まる食材 うなぎ、うめぼし、ウリ など
秋の土用 10月20日 「た」で始まる食材 だいこん、たまねぎ など

※それぞれの日付から約18日間が土用

夏の土用のうなぎは、江戸時代に平賀源内がうなぎのPRのために思い付いたという話は有名です。多分に商売っ気のある習慣ですが、夏に梅干しで塩分を補給し、ウリで水分を補給するのは理にかなっていますよね。

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土用にしてはいけないこと

土用は気候が厳しくなる頃、もしくは季節の変わり目にあります。体調を崩しがちな時期に旬の食材で栄養補給し、人は体をいたわりました。そしてもうひとつ、この時期に農家がいたわったのが大地の恵みを生む「土」です。

土用には、土公神(どくじん=土の神様)が降りてきて、次の季節の収穫のために土を豊かにしてくれると昔の農家は考えました。そこに人が手をふれてはいけないと、農家は土を耕すようなことを避けたといいます。

これも理にかなっています。特に家庭菜園では、土を休ませる時期も必要です。冬と夏の土用に土耕作業をすれば人の体がまいってしまいますし、春と秋の土用は夏野菜、春野菜の準備期間としてゆっくり土をつくる時期です。

冒頭に紹介した暦の季節感のずれを考えると、本来の夏の土用は夏野菜の収穫を終える8月20日頃。「早く次の苗が植えたい!」という気持ちをちょっと抑えて、収穫後の菜園でしっかり土づくりをしておきましょう。

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今すぐ楽しめる植物は?

つりしのぶの涼感は心も体も癒やしてくれます

半夏生から小暑、土用、大暑の間は、人も土も一休み。それでもガーデニングをしたいという人には、メダカの鉢に入れる水生植物や室内の観葉植物がおすすめです。庭に新しい景色をつくるなら、「つりしのぶ」はいかがでしょうか?

つりしのぶは、シダ科のシノブを丸い玉に植え、軒下などに吊るして楽しむものです。江戸時代に生まれ、その涼しげな姿から、今では夏の季語にもなっています。風鈴をつけた商品もあり、園芸店などで購入することができます。

日本の夏のガーデニング作業には、新暦どおりの7月でも熱中症の危険があります。庭や畑の土は休ませつつ、つりしのぶと風鈴の音で体も休ませてあげましょう。「それだけでは物足りないな・・・」という方は、来夏の計画にこんな草花を取り入れてみませんか?

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園芸業界は暑さに強い植物を重視

近年の暑く長い夏に、園芸業界も手をこまねいているわけではありません。草花のタネや苗を販売する種苗会社では「暑さに強い植物」の開発を重視して、さまざまな品種を紹介しています。

例えば、ペチュニアやインパチェンス、ジニア、ニチニチソウ、トレニア、ランタナなどで日本の夏対応の品種が充実しています。カラーリーフでも、元気いっぱいのコリウスや、風に揺れて涼感を誘う観賞用イネが多数登場してきました。

暑さに強い代表的な品種

スーパーチュニア® ラヴィドゥヴィ(販売元:PROVEN WINNERS®)

耐暑性と強健さを併せ持った暑さに強いペチュニアのシリーズ「スーパーチュニア®」。そのなかのひとつ「ラヴィドゥヴィ(Lovie Dovie)」は、名前にある通り「きみの可愛さにくびったけ!」になるほどの、可愛らしく、カラフルでポップな桃色の花色が魅力です。長く続く雨にも草姿が乱れることがありません。

ユーフォルビア ダイアモンドスノー(販売元:PROVEN WINNERS®)

夏の暑さや乾きに強く、晩秋まで咲きあふれるユーフォルビアのダイアモンドシリーズ。なかでも「ユーフォルビア ダイアモンドスノー」は、次から次へと純白の花が咲き、常に美しい状態が楽しめます。生育旺盛で手間もかからず、夏花壇を真っ白に演出してくれますよ。

スーパートレニア カタリーナ ブルーリバー(販売元:PROVEN WINNERS®)

スーパートレニアは、夏の直射日光にも強く、太陽の光を浴びてぐんぐん育つ最強の夏のお花です。花壇や地植えであれば雑草も生えてこないほどの驚きの生育力で、グランドカバーにも最適です。その力強さとは対照的に、優しく透き通った花色も魅力。「ブルーリバー」は、澄んだ青色で、川の流れのようにしだれる姿が美しい、一番人気の品種です。

サンパラソル(販売元:サントリーフラワーズ)

夏のガーデニングは水やりが大変…という方は、水切れに強く、夏も元気に咲き続けてくれる「サンパラソル」はいかがでしょう?「これぞ夏の花!」といったトロピカルな花と輝く葉で、おうち周りを元気に彩ってくれます。赤系、ピンク系、白系、黄系の花色ラインアップがあり、つる性なので鉢植えで支柱に這わせたり、ハンギングでしだれさせたりと多彩な楽しみ方ができます。

フェアリースター(販売元:サントリーフラワーズ)

日本の酷暑に負けず元気に咲き続けてくれるのが、夏花壇の代名詞ニチニチソウです。でも、普通のニチニチソウは定番すぎてちょっとマンネリ…という方には、ニチニチソウのなかでも、小さく愛らしい花が満開になる「フェアリースター」がおすすめ。線香花火のような可憐な小花が、次から次へと満開に咲いてくれますよ。

サンク・エール(販売元:サントリーフラワーズ)

ホワイトやブルー系の花色で、目にも涼やかなのが、「サンク・エール」。主張しすぎず、他の草花とも組み合わせやすいので、寄せ植えにもおすすめ。サンク・エールの名前の由来は、花の形からフランス語で「サンク=5つの」「エール=羽」という意味と、英語で「サンク=感謝」「エール=応援」の意味から。その名の通り、5枚の羽のような花が暑さに負けず満開になります。

 

ペチュニア ラブリーアイ(販売元:タキイ種苗)

タキイのペチュニア史上別格の強さ・育てやすさ!の「ラブリーアイ」は、生育がとても旺盛。春から秋まで株全体に中輪花を咲かせ続けます。蒸し暑い梅雨時期や酷暑の期間にもスクスク育ちますよ。

ガーデンアルストロメリア インディアンサマー(販売元:タキイ種苗)

猛暑をものともしないガーデンアルストロメリア「インディアンサマ-」は、エキゾチックな雰囲気漂うオレンジ色の花で大人気。暑さだけでなく寒さにも強いため、越冬させると翌春には大きな株で楽しむことができます。

ビンカ スターカイト パールピンク(登録品種〈品種名TO906〉販売元:タキイ種苗)

コンパクトな草姿で小輪花がたくさん咲き続けます。多分枝で短節間のため、株がこんもりまとまります。分枝力旺盛で、ピンチなどは不要で株が張ります。花色は「パールピンク」含め、「ローズ」「バイオレット」「コーラルピンク」「ピュアホワイト」の5色です。

サンパチェンス® (販売元:サカタのタネ)

真夏の強い日差しにも耐え、春から秋まで長い期間にわたりトロピカルな美しい花をたくさん咲かせてくれるのが「サンパチェンス®」。暑さに強いだけでなく、春から秋まで長く咲き、1株でも大きく育つので、玄関前などに1鉢あるだけで、おうちの景観を華やかに変えてくれます。「サンパチェンス®」よりコンパクトに育てられ、小さくても花いっぱいの「サンパティオ®」もあります。

ジニア プロフュージョン (販売元:サカタのタネ)

暑さに強い花の定番といえばジニア。その中でも「ジニア プロフュージョン」は特に長く親しまれている安定の夏花です。株がコンパクトで伸びにくく、耐暑性があり乾燥に強く管理が簡単。古い花がらを覆いつくすように新しい花が次々と咲くので、メンテナンスフリーで広い花壇にもおすすめです。抜群の花付きで日本のみならず、世界で親しまれています。

コリウス ゴリラ®Jr. (販売元:サカタのタネ)

夏花壇を彩るのは、花だけではありません。カラーリーフを取り入れることにより、花壇にアクセントを与えてくれます。「コリウス ゴリラ®Jr. 」は、生育旺盛で大きな葉と草姿が魅力。伸びすぎずガッチリとした美しい草姿で、花壇やコンテナガーデンにおすすめです。

コリウス フレームスローワー(販売元:M&Bフローラ)

「コリウス フレームスローワー」も、耐暑性に優れた日向でも楽しめるコリウス。花が咲きにくいので、カラーリーフとして、美しい葉色が初夏から晩秋まで楽しむことができます。

アンゲロニア セレナ(販売元:M&Bフローラ)

高温多湿の日本の夏でも初夏から秋まで次々と開花する「アンゲロニア セレナ」。摘心しなくてもコンパクトにまとまります。花壇の植栽などに特におすすめ。

ハイブリッドインパチェンス バウンス(販売元:M&Bフローラ)

真夏の直射日光下でも元気に育つ耐暑性に優れたインパチェンス。草姿がドーム状になるので、鉢植えでも花壇の植栽でも抜群のパフォーマンスです。

 

暦では土も人も一休みの時期ですが、こうした草花の暑さに負けない元気な姿は、私たちの心と体を元気にしてくれます。庭で元気に育つ草花を見て、夏のグッタリ感を吹き飛ばしましょう。そのときは、旬の食材で栄養を摂ることもお忘れなく!

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