暦とガーデニング|「啓蟄」虫たちが動きはじめます
LOVEGREEN編集部
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みなさんは、「暦(こよみ)」をガーデニングに活用していますか? 暦には、「二十四節気」や「雑節」と呼ばれる季節の区切りがあり、農作業や生活の目安になってきました。3月の二十四節気は「啓蟄(けいちつ)」と「春分」。いよいよ春のガーデニングシーズンが始まります。
目次
暦の基礎知識
暦は中国から朝鮮半島を通って伝わり、飛鳥時代の推古12(604)年に日本初の暦が作られたとされています。当時の暦は「太陰太陽暦」で、月の満ち欠けをもとにして1か月を決めていました。
この太陰太陽暦は明治の初めまで長く使われましたが、近代化を進めるため西洋に学んだ明治政府が太陽暦の導入を決定。太陽暦とは、地球が太陽の周りを一回りするのにかかる時間を1年とする暦です。
太陰太陽暦がいわゆる旧暦、太陽暦が新暦です。日本の暦が旧暦から新暦に変わったのは明治5(1872)年のこと。旧暦が使われていたのは明治5年12月3日まで。その翌日が新暦の明治6年1月1日となりました。
二十四節気の季節感
暦には、1年を24に分けた二十四節気があります。旧暦から新暦への移行で、この二十四節気は約1か月ずれました。例えば立春は、旧暦では1月中~下旬、新暦では2月上~中旬に変わったのです。
立春は、春を感じ始める季節を指しますが、旧暦・新暦のどちらにせよ、体感的にはまだまだ冬。ただ、春への期待は新暦の2月のほうが高まっています。春への準備と考えるといいのではないでしょうか。
3月の啓蟄も同じです。啓蟄の「啓」は開く、「蟄」は虫が閉じこもることを意味します。つまり啓蟄は、冬の間は休んでいた虫たちが、春の訪れを感じて開く=動き始める季節。虫への対策を準備しませんか?
七十二侯では
二十四節気には、約15日間を3つに分けた七十二侯があります。2024年の啓蟄の期間の七十二侯は、次の3つです。
初候3月5~9日 | 蟄虫啓戸 (ちっちゅう こを ひらく) |
冬ごもりの虫が出てくる |
次侯3月10~14日 | 桃始笑 (もも はじめて わらう) |
モモの花が咲き始める |
末侯3月15~19日 | 菜虫化蝶 (なむし ちょうと けす) |
アオムシが羽化してチョウになる |
初候の頃には、冬ごもりの虫たちが戸を開けて外へ。モモの花が咲き、その後にはナバナなどアブラナ科葉をかじっていたチョウなどの幼虫が羽化して、空を舞い始めるということです。
虫たちが動き出します
啓蟄で動き出す虫には、さまざまな種類がいます。古くはカエルやヘビなども虫と呼ばれました。また、6本の脚を持つ昆虫だけでなく、多数の脚を持つクモやムカデ、ダニ、脚を持たないナメクジなども含まれます。
越冬の仕方もさまざまです。カマキリやバッタの仲間は卵、セミやカブトムシは幼虫、チョウは蛹(さなぎ)の姿で冬を越します。テントウムシやカメムシ、ダンゴムシは、成虫が落ち葉の下などに隠れて冬越しします。
ハチやアリも成虫が巣の中に集まって、寒い冬をじっと耐えます。そして、これらの虫たちは、春が近づいて日照時間が少しずつ長くなり、植物も育ち始めると、それぞれに活動を始めるのです。
益虫? 害虫?
こうして命をつないできた虫たちには、人間にとって大切な存在になる種類と、逆にやっかいな存在になる種類があります。農業で生計を立てる人はもちろん、ガーデニングを楽しむ人は特にそれを感じているでしょう。
例えばミツバチは、はちみつを作ってくれるだけでなく、花の受粉を助けてくれる「益虫」。人の役に立つ虫です。テントウムシも、植物の新芽や新梢から汁を吸う害虫のアブラムシを退治してくれる益虫です。
モンシロチョウは微妙かもしれません。エキナセアやブッドレアなどを植えてバタフライガーデンを造っている人には癒しの益虫。でも、アブラナ科の野菜を育てている人からすれば、幼虫のアオムシは害虫です。
害虫防除は不可欠
多様な生き物が生息するのが本来の自然。益虫か害虫かという区別は、人間の身勝手な都合かもしれません。ただ、菜園や庭、ベランダガーデンは、私たちの暮らしの場。害虫はやっぱり防除したいものです。
啓蟄の頃に気を付けたい主な害虫
アブラムシ | 新芽や新梢の汁を吸って群棲。ウイルス病を媒介する |
カイガラムシ | 枝や茎、葉に寄生し、すす病などを誘引する |
アオムシ | モンシロチョウなどの幼虫で、アブラナ科を食害 |
ネキリムシ | ヤガ科の幼虫。夜間に地表を出て地際の茎を食害 |
エカキムシ | ハモグリバエなどの幼虫で葉を食害する |
ダンゴムシ | 湿った場所に生息し、植物の茎葉を食害する |
(注釈)
参考資料 住友化学園芸「病害虫ナビぺージ」
https://www.sc-engei.co.jp/resolution/
春分にはさらなる害虫も
啓蟄の次の二十四節気は、春分(2024年は3月20日~4月3日)。この頃になると、やっかいな害虫はさらに増えていきます。
春分の頃に気を付けたい主な害虫
ハダニ | 4月に発生が始まり、梅雨明け~夏に多発 |
コナジラミ | 草花、野菜に寄生し、ウイルス病を媒介する |
ハマキムシ | 庭木の葉を巻いて生息し、葉や芽を食害する |
コナガ | 幼虫が葉を食害し、植物の生育に影響を与える |
ヨトウムシ | 野菜・草花への食害。夜間に活動する |
ハバチ | ハチの仲間の幼虫で、バラの葉を食害する |
カメムシ | 果実、果菜などの食害。大量発生する年も |
4月中下旬になるとナメクジが出はじめ、梅雨時になるとケムシなど、もっと多くの害虫が現れます。放っておけば、大切に育てていた草花や野菜、樹木が台無しになってしまうかもしれません。
環境にやさしい防除剤で
それでも、「防虫はしたいけれど、身近な庭やベランダで農薬を使いたくないな」という方はいますよね。家庭園芸用の薬剤メーカーでは、そういう人も安心して使える、環境負荷をかけない製品開発を進めています。
写真は、住友化学園芸が2023年春に発売した天然・食品由来成分の殺虫殺菌剤「ベニカナチュラルスプレー」と、酢から生まれた家庭園芸用特定防除資材「ピュアベニカ」。安心・安全な病害虫対策に期待の新商品です。
あなたの庭の暦を作りましょう
暦は、古代の中国で作られました。それが日本に伝わり、明治時代に新暦で日付が変わりました。肌で体感する季節とは違うかもしれませんが、ガーデニングや家庭菜園の作業の準備には必ず役立つでしょう。
啓蟄は、もうすぐハチやチョウが飛びはじめ、テントウムシも出てきて、人の心も浮き立つ季節。一方で、やっかいな虫も出てきます。その年の気候や、あなたが何を育てているかによっても、準備しておくことは違います。
昔の人たちが自然と暮らす中で作った二十四節気を参考に、「私の庭の暦」「私の家庭菜園の暦」を作ってみませんか? きっと、あなたのガーデニングライフ、菜園ライフは、もっと楽しくなるはずです。
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