椿の花|季節や実の特徴、山茶花との見分け方
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古くから日本で愛されてきた花、椿について、花の咲く季節、実の特徴。種類、山茶花との違いと見分け方について紹介します。
目次
椿とは|特徴や名前の由来、言い伝え
- 学名:Camellia
- 科名・属名:ツバキ科ツバキ属
- 分類:常緑高木
椿の特徴
椿は、ツバキ科ツバキ属の常緑高木。ふっくらとしたバラのような花と、つやのあるグリーンの葉が特徴の花木です。日本や中国、東南アジアまで、広く分布しています。古くから日本人に愛されてきた花木で、寺院や庭園に植えられてきました。
椿の花は、直径5~10cm。花の中心には黄金色のしべ類が集まり、周囲の花びらとのコントラストが美しく、華やかな印象です。椿の花は、その華やかさと美しさから、着物を始め、多くの物の図案にされてきました。花びらは水分が多く厚みがあり、葉が触れたり、こすれたりするだけで傷がつきやすいのが特徴です。切り花で飾る際には、花の周りの葉は取り除くようにしましょう。
椿は、江戸時代に品種改良が盛んに行われ、今では数えきれないほどの園芸品種が存在します。また、欧米に渡ってからその美しさが評価され、多くの美しい花を咲かせる品種が作出され、日本に逆輸入されました。花色は赤、ピンク、白、黒赤それらが混じり合った複色など。咲き方も一重咲きから八重咲き、大輪など様々です。
椿の名前の由来
椿という名前の由来は、春に咲く木の花であることにちなみます。これは日本オリジナルの漢字で、中国語で「椿」というとチャンチンという違う樹木のことを指します。
カメリアとは椿の学名を日本語読みしたもので、海外で作られた品種の名前として使用されています。
椿の花言葉
椿の花言葉は「控えめな素晴らしさ」「気取らない優美さ」
華やかでありながらどこか奥ゆかしさを感じる、椿らしい花言葉です。
椿の言い伝え
椿は、花首からぽとりと落ちることから、武士の切腹の介錯(かいしゃく)を連想させるとして、縁起が悪いといわれるようになりました。このことから、お見舞いに持っていくのは禁忌だとか、庭に植えるのは良くないという言い伝えができたようです。反対に椿を植えると長寿になるという言い伝えもあります。これは、八百年生きたといわれる八百比丘尼が、椿の花を持ち歩いていたという言い伝えによります。
また、常緑樹であることから、霊力がある木と信じられ、寺社境内に好んで植えられたそうです。同じく霊力のある木であることから、道具作りに使ってはいけないという言い伝えがある地方もあります。
椿の花咲く季節
椿の花が咲く季節は、11月~4月です。11月から咲き始めて極寒期に少し休み、2月~3月に咲く品種と、3月~4月に咲く品種があります。さらに9月頃から咲き始める早咲き種もあります。開花時期の長く、冬の寂しいお庭に彩りを与えてくれる花木です。
木に春と書いて椿ですが、春だけではなく晩秋から咲き続けます。
椿の実の特徴と使い方
椿の実が熟すのは秋。春に花が終り、夏ごろにはまだ青い椿の実が確認できるようになります。椿の実は表面に光沢があり、まるでリンゴのようです。夏の間に熟した椿の実は秋になると割れて、中から数個の黒い実が顔を出します。
この黒いタネを圧搾して、抽出したのが椿油です。椿油は昔から、日本女性の髪や肌にツヤを与え、美しく整えてくれるとして重宝されてきました。他にも食用や家具のツヤ出しなど、様々な使い方があります。
また、裂けた実のからは、フォルムのかわいらしさから、ドライフラワーやインテリア雑貨として人気があります。椿の実の殻を拾ったら、洗って、色付けしたり、リースやクラフトの材料にしたりと、遊んでみましょう。
椿の種類
日本で見られる椿の種類と、基本の4種類から生まれた園芸種も紹介します。
ヤブツバキ
- 学名:Camellia japonica
ヤブツバキは日本に自生する常緑高木。九州から青森まで分布しています。花色は赤、一重咲き。その昔椿ブームが起こり、ヤブツバキからたくさんの品種が作出されました。
ヤブツバキの園芸種
- 源氏車(げんじぐるま)…白に赤の絞りの入った椿
- 侘助…ふっくらとした小花がかわいらしい椿
ユキツバキ
- 学名:Camellia japonica ssp. rusticana
ユキツバキは日本海側を中心に自生する常緑低木。花は小さめで、色は赤、一重咲き。変異が多く、八重咲きや白花などがあります。ユキツバキからもたくさんの園芸種が作出されています。
ユキツバキの園芸種
- 乙女椿…豪華な八重咲きが美しい椿
- 桜貝…フリルのような花びらが美しい八重咲きの椿
- 都の春…和菓子のような丸いフォルムがかわいらしいピンクの一重咲き
トウツバキ
- 学名:Camellia reticulata
中国に自生する常緑低木から高木。花も葉も大きく、花色はピンク、八重咲き、半八重咲き。豪華な花から主に海外で多くの園芸種が作出されています。
トウツバキの園芸種
- ディスカンソ・ミスト…フリルのような花びらと濃いピンクが美しい八重咲きの椿
- ローズ・ジェム…バラのようなたっぷりとした花びらの八重咲き
キンカチャ
- 学名:Camellia chrysantha
キンカチャは中国から東南アジアに自生している黄色の花を咲かせる椿。ヤブツバキとの間で園芸種も作出されています。
椿と山茶花の見分け方
山茶花の花
椿と山茶花はよく似ています。それもそのはず、山茶花もツバキ科ツバキ属の常緑樹。椿と山茶花、この2つの見分け方を紹介します。
花の散り方で見分ける
山茶花の花の散り方
椿の花の散り方
椿と山茶花は、花の散り方が違います。椿の花は花首からぽとりと落ちるのに対して、山茶花の花は花びらを1枚ずつ散らせていきます。
花が咲く時期で見分ける
主な椿の開花時期は11月~4月、山茶花の開花時期は10月~12月です。椿は晩秋から春まで咲いているのに対し、山茶花は秋から冬に咲く花なので、咲いている時期で見分けます。
葉の違いで見分ける
椿の葉は縁の鋸歯があまりなく、葉裏に毛がありません。対して、山茶花の葉は椿に比べてサイズが小さく、鋸歯が深く、葉裏に毛があります。花が咲いていない時期でも、葉の縁の鋸歯と葉裏の毛を確認すれば見分けられます。
▼椿と山茶花の見分け方について、さらに詳しく説明しています。
椿の育て方
場所・用土
椿は日陰でも育ちますが、日当たりが良い方が花数を多く楽しめます。保水性が高く、水はけの良い土壌を好みます。鉢植えの椿は市販の園芸用培養土で問題なく育ちます。
水やり
根付いた椿は特に水やりの必要はありません。降雨に任せます。
肥料
花後にお礼肥、冬に寒肥として緩効性肥料を適宜与えます。
剪定
花後に剪定します。椿はその年に伸ばした枝に花芽をつけるので、少なくとも夏までには剪定を済ませましょう。どこで切っても新しい枝を出しますが、枝分かれさせたいところで切るとよいでしょう。その他、暴れている枝や弱い小枝を整理します。
病害虫と対処法
椿はチャドクガの幼虫の被害にあいやすいので注意しましょう。見つけ次第薬剤を散布します。チャドクガに触れると、腫れたりかぶれたりするので素手で作業しないようにしてください。
大きくふっくらとした椿の花は、冬の間わたしたちの目を楽しませてくれる美しい花です。
たっぷりとした花びらの八重咲き種はバラと見紛うほどの美しさ。お庭に椿を植えて、花が少なくなる冬の季節を賑やかに過ごしてみてはいかがでしょうか。
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