ナス(茄子)とは?育て方・栽培方法|植物図鑑
- 植物名
- ナス(茄子)
- 学名
Solanum melongena
- 英名
- Aubergine, Eggplant
- 和名
- 茄子
- 科名
- ナス科
- 属名
- ナス属
- 原産地
- インド
ナス(茄子)の特徴
ナスの原産はインドです。日本には奈良時代に中国から伝わり、古くから日本人に親しまれた野菜のひとつです。ナスの形は、丸や卵、中長、長形など様々な品種が栽培されています。幅広く料理にも使えるので和洋中問わず、味を楽しむことができます。
みなさんがよくご存じの縁起の良い初夢の順番「一富士、二鷹、三茄子」ですが、江戸時代の初物のナスは1個がなんと1両。そのため庶民が正月に初物のナスを食べることは、夢のまた夢…叶わぬ夢でした。初夢にナスが登場すると縁起が良いとされるのもこのことからうかがえます。
現在のようにハウス栽培がない江戸時代で、冬に高温作物のナスを作るためには、油紙障子でハウスのようなものを作り、馬糞や麻屑(あさくず)などを踏み込んだ発酵材でエコに温度を上げるなどして、手間暇かけて栽培していたそうです。
ナス(茄子)の詳細情報
園芸分類 | 野菜 |
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草丈・樹高 | 80~100cm |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | やや強い |
耐陰性 | やや弱い |
花色 | 紫色 |
開花時期 | 6月~10月 |
ナス(茄子)の種類
千両ナス(センリョウナス)
一般的によく流通しているナス。長卵形をしていて、濃い黒紫色でツヤがある。
長ナス(ナガナス)
20cm~25cmほどの細長い形をしたナス。
大長ナス(オオナガナス)
40cmから60cmほどにもなる、とても長いナス。
丸茄子(マルナス)
ふっくらと丸い形をしたナスの総称。
水茄子(ミズナス)
水分が多く、皮が薄いため生食できるタイプのナス。
米茄子(ベイナス)
アメリカのナスを日本で品種改良して作ったナス。ヘタが緑色で大型のナスの総称です。
白茄子(シロナス)
皮の色が白いナス。紫色のナスに含まれているアントシアニン系の色素「ナスニン」が含まれていません。
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ナス(茄子)の育て方カレンダー
時期 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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種まき | ||||||||||||
植え付け | ||||||||||||
収穫 |
ナス(茄子)の栽培環境
日当たり・置き場所
ナスは日当たりの良い場所を好みます。風通しの良い場所で育てましょう。
温度
ナスの生育適温は23〜28℃です。
用土
プランター栽培のナスは、野菜用の培養土で育てましょう。
ナスは乾燥に弱いため、保水力のあるよく肥えた土が適しています。また、長期間収穫する野菜のため、元肥(もとごえ)をやや多めに施したふかふかの土に植えると育ちやすいです。
畑栽培のナスは、植え付け前に土を耕す準備が必要です。畑の土が酸性に傾いている場合は、まず植え付けの2週間前位には石灰を入れ、耕しましょう。その1週間後に完熟堆肥と元肥を入れ土になじませます。土の酸度は、市販の酸度測定液などを使うと安価で簡単に調べることができます。
窒素分を含む肥料は、石灰と合わさることで窒素分がアンモニアガスとなって消失してしまうため、同時に使用してはいけません。
なお、この場合の石灰とは「消石灰」や「苦土石灰」をさします。牡蠣殻などの「有機石灰」ではそのような化学反応は起きないので、どうしても日数がない場合は「有機石灰」「完熟堆肥」「有機肥料」を使うと同時に混ぜ込むことが可能で、すぐに種まきや植え付けができます。
\ナスの元肥は有機肥料がおすすめ!/
ナス(茄子)の育て方のポイント
水やり
ナスは水を好む性質があります。日頃から乾燥させないように管理しましょう。
通常、畑で栽培する際は雨のはね返りによる病害虫を防いだり、夏の乾燥を防ぐために敷きわらを敷きます。
春夏のプランター栽培のナスは、バーク堆肥などを苗の周りに敷いて梅雨時期の雨のはね返り・乾燥を予防するとよいでしょう。
肥料
ナスは、とても肥料を好む野菜です。植え付けた2週間後から追肥を始めましょう。
肥料を施す位置は、葉が広がった先よりも少し先の方に施します。というのも、だいたいナスの根の広がりは、葉の広がりと同じくらいといわれています。そのため葉先を目安に肥料を施します。
ナス(茄子)の詳しい育て方
選び方
良いナスの苗の条件|葉の緑が濃く、厚みがある。
ナスの葉はフワフワした厚みがあります。見た目でしっかり判断しましょう。
実際にホームセンターや園芸店で、葉をやみくもに触るのはナスの苗に負担がかかります。お店への配慮のある対応を心がけましょう。
良いナスの苗の条件|節間がしまっている。
節間(葉と葉の間の茎の長さ)が短いものを選びましょう。
良いナスの苗の条件|蕾または花が付いている。
一番花の下2本のわき芽を伸ばして整枝していくので、目印としても蕾か花が必要です。
この部分がナスになりますが、一番果は幼苗の負担になるので、小さいうちに摘み取ります。
良いナスの苗の条件|病害虫が付いていない。
葉の裏に病害虫の卵が産みつけられていることがあります。
良いナスの苗の条件|苗の先端に勢いがある。
種まき
ナスの苗は、4月ごろに育苗ポットに種をまいて苗を作ります。
植え付け
1.苗に充分な水分を与える
バケツの中に苗ごと沈めて、しっかり水分を与えてください。ジョウロで水を与えても構いません。
2.植え付け
プランターに苗と同じくらいの穴を開け、苗を軽く手で押さえ、根鉢を崩さないように植え付けます。根を傷つけないように植えましょう。
3.植え付けのコツ
苗の周りを少し凹まして、苗にしっかり水が浸透するように植え付けます。根が新しい環境にしっかりと活着するまで乾燥させないことが大切です。
4.支柱立て
箸か小さめの支柱を立てて、麻ひもで誘引します。
強風で茎が折れたり、倒れたりしないように麻ひもで誘引します。その際、植え付け後に生長できるように、あまりきつく縛らず八の字にして緩めに括り付けましょう。苗を傷めないように、支柱のところで結びます。
5.最後は水をしっかり与えます。
植えたばかりの苗は、土に活着するまでに少し時間がかかります。その際、根が乾燥してしまわないためにも、植え付けから1週間位はしっかりと水を与えます。水の代わりに病害虫予防のために、ニームを希釈したものをかけてもよいでしょう。
6.寒冷紗
まだ苗が小さいので、寒冷紗に入るうちは出来るだけ中に入れて育てましょう。ナスを植え付けたばかりの日中は、だんだんと暖かい季節になりますが、日が暮れると気温は下がります。害虫対策だけでなく、寒さ対策のためにもこの時期は寒冷紗の中に入れてあげましょう。
仕立て方
ナスのわき芽とは
わき芽とは、上の画像のように「葉や茎の付け根から出てくる芽」の部分のことをいいます。
このわき芽を放置してしまうと、いろんな部分から枝が伸び、主枝の栄養分も奪ってしまい、充実した実が収穫できません。
仕立て方
「秋茄子は嫁に食わすな」ということわざにもあるように、ナスは上手に育てると、秋まで長く収穫できます。長く元気に育てるために、しっかり仕立てていきましょう。
ナスの苗を植えて1週間以上がたち、そろそろ新しい土に活着して一番花が咲いた頃、一番花を起点に3本に仕立てていきます。
3本仕立て
一番花の下のわき芽を2本伸ばし、それより下のわき芽はカットしましょう。
一般的なナスの支柱の立て方
支柱でナスの根を傷めることのないように注意しながら立てましょう。
ナスは主茎1本と、側枝2本合わせて、3本に仕立てします。支柱は、150cmの長さを3本使用します。まず1本を垂直に立て、残りの2本を交差して挿し、アスタリスク状にします。
スペースが狭い場合は、主茎とわき芽を1本だけ伸ばす「2本仕立て」にすると少しコンパクトにまとまります。その際は支柱は2本用意し、V字に交差して支柱を立てます。
誘引
苗を支柱に誘引するときは、節の下に麻ひもを固定します。交差させることでズレずに固定することができます。
また、苗を傷めないように緩く、支柱の方で結びましょう。
摘芯(摘心)・摘果
ナスの一番果は摘果しよう
せっかく綺麗に咲いたナスの花ですが、小さい苗の状態でナスの実をつけてしまうと、苗が体力を消費してしまい生長に遅れが出てしまいます。
この一番最初になった実を「一番果」といい、大きくしないうちに取り除くことを「摘果」といいます。
剪定・切り戻し
更新剪定
夏の時期は、高温と乾燥によって実の質が落ちたり、花が咲かなくなったりして、どんどん収穫量が減ります。苗も疲労してきたところで、良い秋ナスを収穫するために思い切って更新剪定しましょう。だいたい目安として7月下旬から8月上旬頃が更新剪定の時期です。更新剪定は遅すぎると秋ナスの収穫に間に合わなくなるので気をつけましょう。
それぞれの枝を1/3~1/2程切り詰めます。その時元気なわき芽が出ている少し上で切り戻すと失敗しないでしょう。切り戻したナスは生長が促され、下の方からも葉が出てきます。葉には植物の生長に大切な葉緑体があります。秋ナスにとっても大事な葉緑体ですので、更新剪定の後は下の方の葉を取らないようにしましょう。
さらに勢いのある秋ナスの苗を目指す場合は、根切りをします。畑栽培のナスは根元から30cm程離れたところ、プランター栽培のナスはできるだけ根元から遠いところにスコップで垂直に差し込んで根を切ります。
更新剪定や根切りをしたときは、同時に追肥を行って株の勢いを回復させましょう。
花
ナスが良い状態のサイン
濃い紫色の美しい花が咲き、雌しべが雄しべより長い。
雌しべが雄しべより長くなっているのは、草勢があり肥料のバランスも整ったとても良い状態です。
手入れが必要なナスのサイン
このナスの花は、雄しべが雌しべより長くなったり、同じ長さになったりしています。この状態では、受粉がスムーズにいかなくなり、実にならず花が落ちてしまいます。
もし、受粉ができたとしても石ナスといって実が硬くなります。
育てているナスの花の状態が悪いときは、追肥と水をしっかり与え、草勢を回復させましょう。
収穫
ナスの収穫時期の目安
ナスは、だいたい開花から25~30日ほどで収穫できる大きさに生長します。
上の画像のように一般的なナスの収穫は、手のひらサイズが収穫適期です。ちょっと早いかなあと思う頃が採り頃です。
収穫する際は、ナスのヘタの上からハサミで切り取りましょう。
ナスの品種ごとの収穫適期
ナスは品種によって収穫適期は異なります。ナス、大長ナス、縞ナス、水ナス、米ナスなど、ご自身で育てているナスの収穫適期を必ず確かめましょう。
品種にもよりますがだいたいの目安として
一般的なナス:10~15cm
長ナス:35~40cm
ひもナス:25~30cm、太さ2~2.5cm
ボケなす
外皮の艶がなく、色の褪せている状態のナスをボケなすといいます。
日光不足や水分・肥料が不足した場合、ボケなすができやすくなります。混みあった枝葉があれば整理し、果実にも日が当たるようにして、追肥や水分を与えてあげましょう。
石なす
ナスの花の状態が悪い時は、雄しべが雌しべより長くなります。このような状態では、受粉がスムーズにいかなくなり、実にならず花が落ちてしまうか、受粉できても石ナスといって実が硬いナスができます。
花の状態が悪いときは、追肥と水をしっかり与え、草勢を回復させましょう。
ナスの草勢が落ちているとき
ナスの苗全体の草勢が低下している場合は、ナスの実が小さいうちに摘果し、実を充実させる栄養を苗の草勢の復活にまわします。
ナスの苗の草勢が戻ったら、通常の大きさまでナスを生長させ収穫しましょう。
夏越し
ナスは一通り収穫した7月下旬頃、苗が疲れて実付きが悪くなります。更新剪定や根切りをして、苗の復活をはかりましょう。