育ててワクワクたのしいエディブルガーデン|2月の作業
古幡真恵
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illustration:小野寺 葉月
エディブルガーデンとは?
野菜や果樹、ハーブなど食べられる植物を取り入れ、育てて収穫を楽しむことができる庭や菜園のことを意味します。
家庭菜園を始めようとしているみなさんと今年も一緒に楽しいエディブルガーデン作りを始めましょう。
目次
家庭菜園〜2月の作業
野菜作りの一番の基本は「土づくり」です。2月は家庭菜園の土の状態を診断してみましょう。いい土の条件とは?土の改良は必要なの?どんな土壌改良材があるのか、土壌改良材の使用方法は?など、理想的な土壌に近づけるために、足りない部分を補う土壌改良の方法をご紹介します。
みなさんが使っている土の状態はどうですか?植物を育てるための良い土の条件は「通気性」「保水性」「排水性」の三拍子が揃った土壌です。
通気性
団粒構造になっている土は「通気性」が良く、根に十分な空気を行き渡らせます。
※団粒構造とは、土は元々とても小さい粒でできていて、その粒がくっついて大小の団子状の塊になったものが集まっているのを団粒構造の土と呼びます。
保水性
育てる植物にとって適度な水分が保たれる「水持ちの良い土」です。
排水性
植物が根腐れしないように余分な水分を排水できる「水はけの良い土」です。
土質チェック方法
みなさんの家庭菜園の土が、どんな改良を必要としているのか診断するためのチェックの仕方をご紹介します。
手で握る
illustration:小野寺 葉月
・固まらない…砂の割合が多い
・おにぎり位に固まり、指で押すともろく砕ける…良い土、団粒構造
・固まる(指でおして凹む)…粘土質、単粒構造、通気のない土
指で押す
illustration:小野寺 葉月
・フワッと指がめり込む…良い土
・カチカチに固まっている…有機物が少なく、通気不足
目で見る
illustration:小野寺 葉月
乾いた状態の物を一つかみ手に乗せてみる
・荒い砂状?
・団粒構造?
・粘土質?
※団粒構造とは…土は元々とても小さい粒で出来ていて、その土がくっついて大小の団子状の塊になったものを団粒(だんりゅう)と呼びます。団粒が集まってできている土を団粒構造の土といいます。反対に単粒構造は、それぞれの土の粒がぎゅうぎゅう詰めになった状態で、空気があまり通ることが出来ず、根の呼吸が妨げられているような状態に陥っています。
illustration:小野寺 葉月
土にとって大切な「通気」「排水」「保水」を維持するためには、団粒構造のように大小の団子状の塊であるときに成り立つのです。
水はけチェック方法
土の状態が分かったら、次に排水性についてチェックしていきましょう。
水はけの良い土
illustration:小野寺 葉月
雨がやんだ1~2日後に足を踏み入れてもめり込むはない。1~2日後土を掘っても土がほぐれる。
水はけの悪い土
2~3日後でも、ぬかるんで足がめり込む。2~4日後でも掘り上げた土がネバネバしてほぐれない。
土壌改良に必要なものとは?
土壌チェックの仕方の次に、土壌改良に欠かせない堆肥と堆肥以外にも優秀な土壌改良材について合わせてご紹介します。
土壌改良に必要な堆肥
堆肥とは樹木の皮、藁(わら)、草、家畜の糞(ふん)を積み重ね、微生物によって分解、発酵したものです。この堆肥は、使用する目的で「土壌改良」と「肥料」の2つの使い方ができます。目的に合った堆肥を使って、作物が育つ良い環境を作りましょう。
土壌改良としての堆肥(植物質堆肥)
植物質堆肥とは、植物を積み重ね微生物によって時間をかけて分解、発酵させたものです。肥料成分というよりも土壌改良効果が高いのが特徴で、今回の土壌改良剤として積極的に取り入れたい排水性、保水性、通気性など作物が良く育つ環境に改良してくれる資材です。
・バーク堆肥
多孔質なので軽く、通気性と保水性、排水性全てに優れています。使用することで土をふかふかにさせ、土の通気性や保水性、排水性が改善されます。保肥力がアップする効果もあり土壌改良によく使用される資材です。
・もみ殻堆肥
もみ殻とは玄米を守っている固い殻の部分で、通気性や排水性を良くし、あらゆる土質に向く堆肥です。特に粘土質の畑で使うと土壌改良が進みます。完熟したものは保水性があるため、水持ちを良くすることもできます。
・腐葉土
ケヤキやコナラ、ブナなどの広葉樹の落ち葉を、土を間に挟んで積み重ね、水を加えて長期間発酵させ土状になったものです。腐葉土というように「土」という字が付いていますが、作物を育てる土を改善するための堆肥の一つです。植物の繊維分が多く含まれ、ミネラルも豊富に含まれています。保水性・排水性に優れ、保肥力もあり、土をふかふかにする効果に優れています。
肥料としての堆肥(動物質堆肥)
動物質堆肥は、主に動物の排せつ物を微生物に分解、発酵させたものをさします。土壌改良というよりもどちらかというと肥料としての側面が強いかもしれません。堆肥の中に窒素、リン酸、カリウムなどの植物の生長に必要な栄養素が含まれているため、元肥として利用することができます。
・牛糞堆肥(ぎゅうふんたいひ)
完熟発酵した牛糞堆肥には、有効微生物により植物が吸収しやすいよう有機物を分解してくれるため、土の 団粒化を進め良質な土壌にしてくれます。豊富な繊維分があるため、土壌の通気性や排水性、保水性が改善される性質を持っています。
・馬糞堆肥(ばふんたいひ)
牛糞堆肥同様、豊富な繊維分があるため、土壌の通気性や排水性、保水性が改善される性質を持っています。
・豚糞堆肥(とんぷんたいひ)
豚糞を堆積発酵させたもので肥料分を多く含み、繊維分は他のものに比べやや少なめになります。
・発酵鶏糞(はっこうけいふん)
鶏糞を堆積発酵させたもので鶏糞堆肥とも言いますが、おもに発酵鶏糞と呼ばれることの方が多いかもしれません。堆肥というよりも化成肥料並みの速効性のある肥料です。窒素・リン酸・カリの三要素を多く含みます。
その他の土壌改良材
バーミキュライト
バーミキュライトは酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムを主成分とする苦土蛭石(くどひるせき)を高温で焼いて膨張させているため、多孔質で極めて軽い保水性の優れた改良剤です。高温で焼いていることから、無菌の用土として発芽や挿し木の土と使用することにも優れています。
パーライト
黒曜石パーライト
黒曜石を高温で熱し、発砲させたものが黒曜石パーライトです。水分が急に蒸発し、気泡ができているため空気が多く含まれ軽い多孔質の作りになっています。
排水性と通気性に優れている性質から、軽量な鉢底石に使用されています。黒曜石パーライトは普通の水をミネラル水に変える性質があるため、根腐れ防止の効果もあります。
真珠岩パーライト
真珠岩を高温で熱し発砲させたものが真珠岩パーライトです。黒曜石パーライトと同じく、水分が急に蒸発して気泡ができた作りになっています。黒曜石に比べて真珠岩は水分量が多いため、熱されたときに大きく膨張し真珠岩の壁が破壊されたため、内部まで水分が染み込む形状になっています。
黒曜石と大きく異なることは、真珠岩パーライトは保水性を高める土壌改良材という点です。
ピートモス
水苔やシダ類が蓄積され、炭化し固まったものを細かく砕いたものがピートモスと呼ばれています。
酸度調整されていないピートモスは土を酸性に傾けたいときに使用したり、調整されているものは水や肥料のもちを良くしたい時や種まき用土としても使用します。
くん炭
もみ殻を炭化させたもので、通気性と保肥性を高めます。また、酸性土壌の中和に効果があるため酸度調整としても使用することができます。また、多少カリ分を含むため、根菜類の肥料としても期待できます。
日向土
宮崎県都城市付近から産出される霧島山の火山砂礫(かざんされき)で、鹿沼土ほど脆くなく、軽石ほど強くない硬さの土です。
多孔質の硬質軽石のため排水性と通気性に優れており、栽培用の土としてだけでなく土壌改良材としても使用されることがあります。
土壌改良診断シート
土質のチェック方法と、土壌改良材について分かったところで、実際に家庭菜園の土壌改良の診断をしてみましょう!
質問
昨年野菜を作った?
野菜は上手に育った?
土の状態は?
どこで育てる?
野菜用の培養土を購入しましょう
初心者さんの培養土準備
初心者さんには断然用土と肥料がバランスよく配合されている市販の培養土がおすすめです。酸度も調整されているか確認しましょう。
illustration:小野寺 葉月
〜培養土を選ぶポイント〜
・メーカー名、所在地が明記されていること
・土に混ぜてある主な原材料を確認
・PHの値の確認
・適用植物の項をチェック
・肥料の有無の確認
※土が同じ容量(ℓ)なら軽い方の土を選ぶと作業しやすいでしょう。
自分で土を配合するなら
赤玉土、腐葉土、バーミキュライト、パーライト等を作物の特性に合わせて配合します。
ベテランさんは昨年度から使用している土などを良質な「団粒構造の土」目指して、赤玉土などをご自身で配合して土づくりを楽しんでください。
プランターの準備
あくまで目安です。ご家庭で使用しているもので構いません。
プランターの大きさは作物の大きさによって決まります。根菜類などはある程度プランターの深さが欲しいですね。
〜目安〜
・葉物類・ミニ野菜~プランター5ℓ(27×14×高さ13cm)
・果菜類~10号鉢(30cm)8.4ℓ、プランター22ℓ(48×32×高さ26cm)
・根菜類~プランター40ℓ(73×41×高さ26cm)(根の長さに応じたもの)
基本の土作りでOK
昨年元気に野菜が生育し、土壌改良材などの資材の投入が必要のない健康な土壌は、基本的な野菜作りの「土の酸度調整」と「元肥投入」作業に入ります。
酸度チェック
illustration:小野寺 葉月
日本は雨が多いので、土が酸性に傾きやすいといわれています。そのため植物の生育に適した酸度に調整する事が大切です。
※酸度とは…単位はpH、酸性・中性・アルカリ性。土の酸度は環境により変わります。ほとんどの野菜はpH6.0~6.5の弱酸性の土を好みます。特に日本は雨が多く、土壌中のカルシウムやマグネシウムが消失しやすく、酸性に傾きがちと言われているので、酸性土壌の改良には石灰を投入する必要があります。
pH測定に挑戦
〜準備するもの〜
・蒸留水…バッテリー補充液1ℓで200円前後、なければ水道水でもある程度の精度で測定できます。
・測定液…700~2000円、もしくはPH試験紙…300~800円
〜測定方法〜
1. 測定する土は、地面から5~10cmの深さを移植ゴテで採取します。
2. 土:蒸留水=1:2.5の割でよく混ぜ合わせます。
3. 30秒後上澄み液で測定液やPH試験紙で測定します。
その他に酸度を測定する機器もありますので、お近くのホームセンターでお買い求めください
酸性土壌の改良
さて、いよいよ酸性に傾いた土壌を改良するために石灰を投入します。この時注意したいのは、くれぐれも消石灰や苦土石灰の入れすぎには気を付けるということです。例えば、ジャガイモはアルカリ性に傾きすぎると「そうか病」にかかりやすくなります。極端な入れすぎには注意しましょう。
石灰投入の方法
1. スコップ・クワ・レーキを使って20~30cmほど土を掘り返します。
2. 通常の目安は1㎡当たり100g位の石灰を投入します。(pHを1上げたい場合、1㎡当たり150~200gの石灰を投入すると良いでしょう。)
分量に自信のない方は牡蠣殻のような有機石灰をおすすめします。有機石灰は多少入れすぎてもアルカリ性に傾きすぎることなく、それ以上は土壌中に溶け出さない性質を持っているので初心者の方に安心です。
石灰投入の注意事項
illustration:小野寺 葉月
また、有機石灰以外の石灰は肥料・堆肥(肥料込)と一緒になると窒素がアンモニアガスとなって消失してしまう恐れがあるので、遅くとも肥料・堆肥(肥料込)を投入する1~2週間前には石灰を入れ土に馴染ませておきましょう。
〜どれも無理!酸度調整がよく分からない!という方〜
昨年同じ畑で作物を育てた方は、通常の石灰の量(目安は1㎡当たり100g位)を入れて酸度調整を行いましょう。
保水性UPの土壌改良
砂質土壌の改良材
腐葉土などの植物質堆肥、ピートモス、バーミキュライトや真珠岩パーライトを投入します。
(メーカーや品質にもよりますが、その他の改良資材のおおよその金額は植物質堆肥の1.5~2倍くらいです。)
土壌改良資材の量
資材の品質や土の状況などによって使用する改良材の量もまちまちです。
一般的な目安として、以下のような容量の資材を投入し、撹拌すると良いでしょう。
庭の土またはプランターの土:土壌改良材
7~8 : 2~3
排水性UPの土壌改良
粘土質土壌の改良材
腐葉土などの植物質堆肥、黒曜石パーライトを投入します。
(メーカーや品質にもよりますが、その他の改良資材のおおよその金額は植物質堆肥の1.5~2倍くらいです。)
土壌改良資材の量
資材の品質や土の状況などによって使用する改良材の量もまちまちです。
一般的な目安として、以下のような容量の資材を投入し、撹拌すると良いでしょう。
庭の土またはプランターの土:土壌改良材
7~8 : 2~3
暗渠(あんきょ)排水
暗渠(あんきょ)排水を作り土壌の水はけの改善を行いましょう。または、地面に勾配をつけて排水管で外に流しましょう。
※暗渠(あんきょ)排水…地中に溝を掘って透水管を埋め込み砂利や砕石を敷いて、地下の浸透水を外へ流すようにする。
通気性UPの土壌改良
寒ざらし~耕す
晴耕雨読…1~2月にかけて晴れた風のない暖かい日を選び、寒ざらしといって土をざっくりと荒おこししましょう。
スコップで20~30cmほど掘り返し、1ヶ月ほど寒さに当て、土中の水分の凍結・解凍を繰り返すことで土が団粒化し、通気性の良い土に改良されます。同時に害虫・病原菌を除去することができます。
土質~団粒構造の改良材
腐葉土などの植物質堆肥、黒曜石パーライト、ピートモス、日向土、くん炭を投入します。
(メーカーや品質にもよりますが、その他の改良資材のおおよその金額は植物質堆肥の1.5~2倍くらいです。)
土壌改良資材の量
資材の品質や土の状況などによって使用する改良材の量もまちまちです。
一般的な目安として、以下のような容量の資材を投入し、撹拌すると良いでしょう。
庭の土またはプランターの土:土壌改良材
7~8 : 2~3
いかがでしたか?
皆さんの家庭菜園の土の診断はどんな結果が出ましたか?
上手に堆肥を使用して、ふかふかの土作りに挑戦してみて下さいね♪
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