エディブルガーデン12か月|3月の作業
古幡真恵
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illustration:小野寺 葉月
エディブルガーデンとは?
野菜や果樹、ハーブなど食べられる植物を取り入れ、育てて収穫を楽しむことができる庭や菜園のことを意味します。
今年から家庭菜園を始めようとしている皆さんと一緒に楽しいエディブルガーデン作り始めましょう。
さあ、エディブルガーデン12か月の始まりです!
目次
二十四節気〜3月は啓蟄(けいちつ)・春分
〜啓蟄〜
冬眠していた虫たちが、春陽に目覚め、冬籠りから這い出ます。フキノトウの花が咲き、春の訪れを実感する季節がやってきました。
〜春分〜
昼と夜の長さがほぼ同じになり日照時間がこれからどんどん長くなります。いよいよ家庭菜園のスタートですね。
※春分、夏至、秋分、冬至などでおなじみの季節をあらわす二十四節気。季節と共に生長する植物たちにとってもゆかりの深い昔ながらの暦です。
2月の作業のおさらい
illustration:小野寺 葉月
〜冬の土作り〜
・寒ざらし~団粒構造
・土質・酸度チェック~土壌改良
・初心者さんの土・プランターの準備について
家庭菜園〜3月の作業
本格的に今年の家庭菜園のスタートをきる3月。作物の住まいとなる畝立てから開始しましょう。
なぜ畝立てをするのか?
お部屋の整理整頓と同じです。あっちこっちに野菜を植え付けるより、野菜を育てるスペースと作業する通路を分けることにより、限られた敷地の中で効率の良い野菜作りをすることができます。
また、畝の立て方で排水性が悪く、水持ちの悪い土質を改善することも可能です。高畝は排水性のアップさせ、低い畝は水持ちをアップさせることができます。
畝を作る方向は?
次に、畝を作る方向ですが、畝の向きは東西の方向に作るべきなのか…それとも南北の方向に作った方が良いのか…迷いますね。
一般的な畝の方向〜南北
作物により様々な考え方がありますが、家庭菜園の場合は日光がまんべんなく当たることに重点を置き、南北に伸ばすように畝を作ると作物に陽を当てることができるでしょう。
小さなスペースでの畝の方向〜東西
小さなスペースで多種類の野菜を育てる場合には、東西に伸びる畝をおすすめします。南側から順々に背の低い作物を植え、北側には半日陰を好む作物を植えましょう。
肥料について
2月に土作りをしっかりした後は、種まき前の最後の仕上げ肥料を加えましょう。肥料とは、植物を生育させるために必要な栄養分です。肥料の三要素と呼ばれる成分は、窒素・リン酸・カリこの3つです。他にカルシウム、マグネシウムを加えると肥料の五大要素となります。
窒素の働き
主に植物を大きく生長させる作用があり、特に葉を大きくするため葉肥(はごえ)といわれています。過剰に与えると、植物体が徒長し、軟弱になるため病虫害に侵されやすくなります。
リン酸の働き
リン酸は、花肥(はなごえ)または実肥(みごえ)と言われ、その名の通り「花」や「トマト」などの実を肥やす働きがあります。
カリウムの働き
主に根の発育に関係するため根肥(ねごえ)といわれます。
元肥とは?
種や苗の植え付けをする前に、作物が元気に生長するために最初から与える肥料を元肥(もとごえ)といい、「窒素・リン酸・カリ」この3要素を含む肥料です。作物の育てる最初に施す肥料というところから、葉を育てる窒素分を多く含みます。
肥料の種類
肥料には有機質からできているものと、無機質からなるものがあります。
有機質肥料
〜原料が植物か動物由来のもの→効果がゆっくり持続〜
有機肥料の代表的なものをあげると以下のようなものがあります。
・油粕類(主に窒素)
・米糠(主にリン酸)
・魚粉類(主に窒素とリン酸)
・骨粉質類(主にリン酸)
・発酵鶏糞(三要素)
・草木灰(主にカリウム)
・野菜栽培用にバランスよく混合された有機肥料等
無機質肥料(化成肥料)
〜鉱石由来のもの→早く良く効く〜
無機質肥料の代表的なものをあげると以下のようなものがあります。
・硫安・尿素(窒素分)
・過リン酸石灰(リン酸)
・硫酸カリウム(カリウム)
・野菜栽培用にバランスよく混合された無機質肥料等
初心者はどんな肥料を使えばよいの?
肥料を使用する時、家庭菜園はじめてさんがトラブルを起こしやすいのは、「肥料の与えすぎ」と「間違った肥料の配合」です。
「肥料の与えすぎ」を防ぐために、容量を守るというのは第一条件ですが、万が一肥料の量を多く与え過ぎても、ゆっくり効果が持続する有機質肥料を使用することでトラブルを最小限に抑えることができます。
また、肥料をご自身で配合して使用する際は、使用する肥料の組合わせによって、一緒に使用していいものと悪いものがあり「間違った肥料の配合」が生じます。
以上のことから考えて、家庭菜園はじめてさんはホームセンターや園芸店で肥料を購入するときに迷ったら、野菜用のバランスよく混合された顆粒状の有機質由来の肥料を購入されてはいかがでしょうか。
野菜作りに慣れてくると鶏糞や魚粉などの天然成分100%のものを組み合わせて使用したり、ご自身で作った堆肥を使うことで野菜の味も変わってくると思います。野菜の栽培は奥が深いので、ご自身のレベルに合わせて使用する肥料を進化させてみてください。
畝を立てるまでの工程
畝を立てる方向や使用する肥料について分かったところで具体的に畝を立てるまでの工程をみていきましょう。
畑での堆肥や石灰を使った土壌改良後の肥料を入れるタイミング
こちらは育て終わった苗を抜き取ったところからスタートします。
1. 土を耕す。
深さ30cmほどをスコップや鍬でほぐします。植物の根に酸素が行き渡るように、根が土に張りやすいように耕します。
2. 土壌改良材である腐葉土、バーク堆肥など肥料分を含まない植物質堆肥を土に投入。
土壌の排水性、通気性、保水性や保肥性を高めるために堆肥を土に混ぜ込んで、ふかふかな良質な土質に改良します。
▶︎注意点〜肥料分の入った動物質堆肥を使用する場合は、1~2週間あけてから次の3の工程の石灰を施します。
3. 石灰(消石灰・苦土石灰・有機石灰など)を投入。
良質な土質に変えた後は、酸度調整といって植物が好む弱酸性に土を整えます。
※酸度とは…単位はpH、酸性・中性・アルカリ性。土の酸度は環境により変わります。ほとんどの野菜はpH6.0~6.5の弱酸性の土を好みます。特に日本は雨が多く、土壌中のカルシウムやマグネシウムが消失しやすく、酸性に傾きがちと言われているので、酸性土壌の改良には石灰を投入する必要があります。
▶︎注意点〜有機石灰以外の消石灰・苦土石灰は次の4の工程の肥料の前の1~2週間前に施しましょう)
4. 肥料または肥料分のある堆肥など元肥として投入。
元肥の施す場所は畑の前面に肥料をまき良く耕します。種や苗の植え付けをする前に、作物が元気に生長するために最初に与える肥料を元肥(もとごえ)といい、「窒素・リン酸・カリ」この3要素を含む肥料です。ゆっくり効果のあらわれる緩効性肥料の有機肥料がよく使用されます。
注意点?石灰と肥料の関係って?
酸度調整を行った後の土壌に肥料を使用する際注意すべき点は「肥料」と「有機石灰以外の石灰」を施すタイミングです。
窒素分を含む肥料は石灰と合わさることで、窒素分がアンモニアガスとなって消失してしまうため同時に使用してはいけません。そのため、石灰と肥料を合わせて使用する際は最低でも1~2週間ほど日数をあけて投入することをおすすめします。
また、この場合の石灰とは「消石灰」や「苦土石灰」をさします。牡蠣殻などの「有機石灰」ではそのような化学反応は起きないので、どうしても堆肥と石灰を使用するために必要な日数がない場合は「有機石灰」の使用をおすすめします。
畝の立て方
1. クワを使って畑の土をフカフカに耕します。
フカフカ具合の目安として、スコップを上から真っすぐに落とした時さっくりと刺さるくらいが目安です。
2. 通路を作りながら、作る数だけおおまかに畝の山をクワで作ります。
illustration:小野寺 葉月
3. 畝を作るときは作業がスムーズにいくように畝の幅を指先から肘の長さ50cm位に、畝と畝の通路は足のサイズ30cm位を目安に作りましょう。
高畝は排水性のアップさせ、低い畝は水持ちアップさせることができます。
種まきについて
植物にはそれぞれ生長する特性が違います。同じ植物でも品種により発芽温度や生育適温が違います。種を選ぶときは種袋の裏を必ず確認して下さい。
種のまき方〜直まき
移植を嫌う直根型のニンジンなどの根菜類や30日位で収穫できるベビーリーフなどはこの直まきの方法で種をまきます。それぞれすじまき・点まき・ばらまきと種袋の裏にお勧めのまき方が記載されています。
※好光性(光を好む)の種と嫌光性(光を嫌う)の種がありますので、覆土の量は植物に合わせた量にしましょう。
すじまき
illustration:小野寺 葉月
みぞを作って種を1cm間隔でまいていきましょう。
点まき
illustration:小野寺 葉月
女性の握りこぶし程の円の凹みを作り、3~4粒ずつまきます。
ばらまき
illustration:小野寺 葉月
なるべく均等になるようにばらまきましょう。
種のまき方〜ポットまき
illustration:小野寺 葉月
中心をくぼませて3~4粒種をまきましょう。トマトやナスなどの苗を育苗するときのまき方です。生長に合わせて移植できるので効率よく育てることができます。
種をまいたら寒冷紗
illustration:小野寺 葉月
せっかくまいた種を害虫や鳥から守るためにも寒冷紗をかけましょう。U字支柱といって半円に曲げられた形のものを使用します。風などで寒冷紗が飛ばないようにレンガなどで押さえると安心でしょう。
その他の寒冷紗をかける目的
種をまいた後の強すぎる光は発芽の妨げになりますし、水分を必要とする発芽にとって温度上昇による急激な水分の蒸発は大敵です。温度が低い時期は発芽温度を安定させるためにも防寒対策は欠かせません。
使用方法として、トンネル用支柱を40~50cm間隔に畝の周りにしっかりと土中に差し込みます。その上からレンガなどで風に飛ばされないように押さえます。
寒冷紗は、暑さ寒さは防ぐことが出来ても、雨が多くなる梅雨の時期は湿度が高くなると根腐れをおこしたり、日照不足になったりするので気を付けましょう。
3月にまける野菜の種
ほとんどの作物の発芽温度は15℃~20℃以上です。3月は気温の上昇とともにまくことができる作物の種類がぐんと増えます。
ジャガイモ
illustration:小野寺 葉月
プランター、畑、麻袋などで栽培でき、初心者さんにもオススメです。
ルッコラ
illustration:小野寺 葉月
ゴマの香りが特徴のサラダにお勧めオリーブオイルと相性抜群です。
いかがでしたが?
春の陽ざしを浴びながら気持ちよく3月のエディブルガーデン生活をお送りください。
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