タンポポ
- タンポポは、春に明るい黄色の花を咲かせる、キク科の多年草。日本全国の街中や、河原、田畑の畔など身近な場所で見かける、春を代表するような花です。花だけでなく、花の後にできる綿毛も愛らしく、人気があります。 タンポポは、冬の間も葉を地面につけるように、放射状に広げています。この形状をロゼットと呼びます。ロゼットに広がった葉はまんべんなく日光を浴びることができるので、効率よく光合成を行えます。中心から伸びた茎は中が空洞で、その先に花を1つだけ咲かせます。タンポポの花は、花びらのように見えるものが一つ一つ小さな花を形成しています。花は日が昇ると開き、陰ると閉じるを繰り返し、数日で萎れます。萎れると茎は枯れたように下を向き、種子が熟すのを待ちます。種子が完全に熟すと、茎は再度上を向き、真ん丸な綿毛を開きます。開いた綿毛は、風に乗って遠くまで運ばれ、新しい土地で根付き、花を咲かせます。 タンポポは、雨の日は綿毛を開きません。これは綿毛を雨にぬらさずに、効率よく風に乗せようとするタンポポの知恵です。また、根は、地表見える部分からは想像もできないほど深くまで伸びていて、抜くのは困難です。さらに、根や葉茎を折ると白いベタベタとした乳液を出します。この乳液によって、虫の食害から身を守っています。すべては、タンポポが逞しく生き延びるための生存戦略です。 タンポポの学名 Taraxacum は、アラビア語で苦い葉という意味の「tharakchakon」に由来しています。タンポポという和名は、花のフォルムが鼓(つづみ)に似て切ることから、鼓を鳴らすときの「タン」「ポポ」という音に例えて、名付けられたのではないかと考えられていますが、諸説あって定かではありません。英名の「dandelion(ダンデライオン)」や、ドイツ名「Löwenzahn(レーヴェンツァーン)」は、タンポポの葉のギザギザとした鋸歯から連想して名付けられたとされています。フランスやオランダでは、柔らかいタンポポの葉を食用にします。中国では、全草を生薬として利用します。タンポポは、花や綿毛を愛でる以外にも、人々の役に立つ植物として愛されてきた存在です。