スイカズラ(忍冬)|花や香りの特徴、咲く季節、種類など魅力を紹介
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スイカズラは、ハニーサックルという英名でも親しまれている、香りが魅力のつる植物。花の特徴や季節、香りの特徴、ジャスミンとの違い、種類、お茶やお酒など、魅力を解説します。これを読むだけでスイカズラに詳しくなれるはずです。
目次
- スイカズラ(忍冬)とは?基本情報
- スイカズラ(忍冬)の花言葉
- スイカズラ(忍冬)の花や香りの特徴
- スイカズラ(忍冬)の種類
- スイカズラ(忍冬)の育て方
- スイカズラ(忍冬)の香水や精油
- スイカズラ(忍冬)のお茶とお酒
- スイカズラ(忍冬)が登場する物語
- スイカズラ(忍冬)の外国語の名前
スイカズラ(忍冬)とは?基本情報
スイカズラ(忍冬)の基本情報
- 学名:Lonicera japonica
- 科名:スイカズラ科
- 属名:スイカズラ属
- 英名:Japanese honeysuckle
- 別名:忍冬、金銀花、ハニーサックル
スイカズラ(忍冬)の特徴
スイカズラは、スイカズラ科の半落葉性のつる植物です。日本の山野の明るい半日陰や日当たりの良い開けた場所に自生していて、甘く優しい香りの花を咲かせます。筒状の花の奥に蜜が溜まっているので、摘み取って花の付け根を吸うと、甘くさらっとした味わいを楽しめます。
スイカズラは、卵型の葉が2枚向かい合わせに生え、その葉の付け根から2つ花が咲きます。この葉は苞(ほう)が変化したものです。花は、つぼみは淡いピンクを帯びた白で、開花すると白く、咲き進むにしたがって黄色に変化します。スイカズラは生育力の強いつる植物で、フェンスなどに絡ませると良く繁茂します。日当たりがよければ大した手入れをしなくても毎年花を咲かせてくれます。
スイカズラ(忍冬)の名前と別名の由来
スイカズラという名前の由来は、花に甘い蜜があり蜜を吸うつる植物だから吸葛(スイカズラ)となったといわれています。子供の頃はおやつを食べに帰宅する時間も惜しく、この蜜でエネルギー補給をしたつもりになって森で遊んでいました。
忍冬という名前は、冬も枝先にグリーンの葉を残す様子から、冬を耐え忍ぶという意味で名付けられたといいます。また、花色が白から黄色へと変化することから金銀花という別名もあり、こちらは主に生薬で使用されています。他にも英名の Honeysuckle(ハニーサックル)という名前で呼ばれることもありますが、こちらは主に園芸品種に付けられた名前です。
スイカズラ(忍冬)の花言葉
スイカズラの花言葉は「愛の絆」「友愛」です。
花言葉の由来は、スイカズラが必ず2つ並んで花を咲かせる様子にちなんでいます。
スイカズラ(忍冬)の花や香りの特徴
スイカズラ(忍冬)の花咲く季節
甘い香りのスイカズラの花が咲く季節は、4月から6月くらいです。スイカズラは一つ一つの花は短命ですが、花数が多く、次々と咲くので長く花を楽しむことができます。
スイカズラ(忍冬)の花の特徴
スイカズラは、向かい合わせに付いた葉の付け根から、必ず2つの花を咲かせます。花の基部に付いた葉は苞(ほう)が変化したもので、この特徴が見られるのはスイカズラの仲間だけだといいます。上下に大きく分かれた花びらと、その中心から飛び出しているように見えるしべ類が印象的です。スイカズラの魅力的な花のフォルムは、古今東西多くの絵画や図案に使用されてきました。
スイカズラ(忍冬)の香りの特徴
春も深まってきた頃に咲き始めるスイカズラには、甘い芳香があります。スイカズラの香りの印象は、花に顔を近づけると甘く爽やかで、顔を離すと香りの記憶が薄らいでしまうような、はかなげな芳香といったところでしょうか。クチナシやジャスミンのような濃密な甘い香りではなく、どちらかというとスズランや柑橘類の花のような爽やかで優しい香りです。スイカズラの香りの成分は、リナロールやネロリドールなどです。リナロールは、キンモクセイやジンチョウゲ、クチナシなどにも含まれる香り成分で、熟れた果物のような芳香が特徴です。
ソメイヨシノの桜が終わった頃、どこからともなく甘く爽やかな香りが漂ってきたら、周囲を探してみてください。白と黄色の可愛らしいスイカズラの花が咲いているかもしれません。
スイカズラ(忍冬)とジャスミンの違い?
スイカズラとジャスミンが似ている、という表現はどこから生まれてきたのでしょうか。
ジャスミンと呼ばれている植物は、ハゴロモジャスミンやマダガスカルジャスミン、カロライナジャスミンなど、科の違うもので何種類もあります。それぞれ香りの良い白い花を咲かせるつる植物というのが共通点です。スイカズラも香りの良いつる性植物という共通点はありますが、ジャスミンとは花姿も香りも似ていません。
スイカズラの香りはとても独特で、ジャスミンよりもっと甘さは控えめで優しい香りです。ジャスミンのような甘く濃厚な香りを期待していると拍子抜けしてしまうかもしれません。できれば、スイカズラとジャスミンは切り離して認識していただきたいと思います。
スイカズラ(忍冬)の種類
スイカズラ科スイカズラ属の種類を紹介します。
スイカズラ科スイカズラ属の種類
ハマニンドウ
- 学名: Lonicera affinis
暖地の沿岸部の林などに自生しています。花の咲き方もスイカズラそっくりです。見分け方は茎に産毛がなく、花の付け根の苞がスイカズラより小さいのが大きな違いです。
パーフォリエイト・ハニーサックル
- 学名:Lonicera caprifolium
イタリアの野山に自生しているスイカズラそっくりの花です。スイカズラ( Lonicera japonica )よりも薄っすらピンクがかった花がうっとりするほど優美な花です。
ツキヌキニンドウ
- 学名: Lonicera sempervirens
スイカズラの仲間ですが、赤に近いオレンジの花で、花のフォルムも違います。ほとんど香りはしないという点も大きな違いです。2枚の対生している葉がくっついて1枚の葉の間から花が付き出して咲いているように見えること、冬でもグリーンの葉を残して耐え忍んでいるように見えることが名前の由来です。
ヒョウタンボク(キンギンボク)
- 学名:Lonicera tatarica var. morrowii
スイカズラそっくりの花が咲く、つるにならない落葉低木。真赤な果実が2つくっついてなるところがひょうたんのようだからヒョウタンボク(瓢箪木)、花色が白から黄色に変化するからキンギンボク(金銀木)というのが名前の由来です。
スイカズラ科スイカズラ属の園芸品種
スイカズラは日本や東アジア原産の植物ですが、海外に渡り多くの園芸品種が作出されました。中でも人気の品種をご紹介します。
ハニーサックル・グラハムトーマス
咲き始めは白、後に黄色に変化していく品種です。香りが良く、大輪で花数が多いのも魅力です。
ハニーサックル・ゴールドフレーム
花の外側は濃いピンク、内側は黄色からオレンジに変化していきます。色が鮮やかな品種です。
ハニーサックル・セロティナ
外はピンク、中は白から黄色に変化していきます。花数の多さ、優しい色合いと香りの良さが人気の品種です。
ハニーサックル・アメリカーナ
外側はピンク、内側は白から黄色に変化していきます。香りも良く、花付きも良いのが魅力です。
ハニーサックル・ウィンドワード
濃いピンク色の花と、蕾の赤に近いピンクのグラデーションがきれいな品種です。花の外側は濃いピンクのまま、中は淡いピンクから黄色に変化します。香りが良く、色の変化も楽しめる品種です。
ハニーサックル・テルマニアーナ
咲き始めは黄色、徐々にオレンジ色に変化していきます。明るいお日様のような印象の花が魅力です。
スイカズラ(忍冬)の育て方
スイカズラは非常に強健で育てやすい植物です。あまり手間もかからずに良く生長し、毎年香りのいい花を咲かせてくれます。地植えはもちろん、鉢植えでも管理できるのが魅力。我が家では、もう20年以上も鉢植えでスイカズラを咲かせ続けています。気軽にスイカズラを育ててみませんか。
植え付け・用土
スイカズラの植え付けは、春か秋の暖かい日を選んで行います。あまり土壌は選びませんが、日本の山野に自生しているような植物ですから、腐葉土がたっぷり入ったような肥沃な土壌で良く育ちます。
鉢植えのスイカズラは、市販の培養土で問題なく育ちます。
水やり・肥料
地植えのスイカズラは、根付いてからは特に水やりの必要はありません。
鉢植えは、土の表面が白っぽく乾いてきたら、鉢底から流れてくるくらいたっぷりと水やりをします。
スイカズラは、強健な植物です。特に追肥の必要はありません。過肥は株を弱らせる原因になります。花付きが悪くなってきたと感じたら、緩効性肥料を少量ずつ施します。
日当たり・置き場所
株の上部は日が当たり、足元は日陰になるような場所を好みます。日当たりが良い方が花付きは良くなりますが、明るい半日陰でも育ちます。
誘引
放っておくと風に吹かれて周囲の樹木に絡み付いていくので、適宜誘引を行ってください。スイカズラの誘引は、とっても簡単。絡ませたいアーチやトレリスにくるんと巻きつけるだけです。スイカズラの巻きひげは右巻きなので、それさえ気を付けてあげれば、あとは勝手に自ら絡みついていきます。
スイカズラ(忍冬)の香りの魅力!香水と精油
スイカズラの最大の魅力は何と言ってもその香りです。スイカズラ(忍冬)の芳香は「官能的」とも「爽やか」とも表現されます。
日本の山野や、ヨーロッパの田園風景に登場する花でありながら、濃密で官能的であり、意識をはっとさせるような爽やかさも併せ持つスイカズラ(忍冬)の香り。大人の女性の色気と少女の愛らしさを併せ持つような魅力的な香りの花です。
スイカズラ(忍冬)の香水
スイカズラの香りは香水でも楽しめます。ただし香水は、スイカズラの香りに似せた人工香料であることが多いので、精油にこだわりたい方はご注意ください。反対に花から抽出した精油は、咲いているスイカズラとはちょっと違う香りになるので、花の香りを身にまといたいという方は、調香師が作り出した香水の方が楽しめるかもしれません。
スイカズラ(忍冬)のアロマオイル・精油
スイカズラの天然精油は市販されているので、精油専門店などで購入が可能です。ただし、残念ながらスイカズラの花から香りを抽出すると、咲いている時とは違う香りに変化してしまいます。春から初夏にかけて風に乗って漂ってくるスイカズラの香りを期待していると少し違うと感じるかもしれません。
また、スイカズラの天然精油は高価なので、人工の香料が代用されていることが多くあります。探す際には必ず100%の天然精油であることを確認しましょう。
スイカズラ(忍冬)のお茶とお酒
スイカズラは、そのまま食用にすることはできませんが、お茶やお酒にして楽しむことができます。
金銀花茶(スイカズラ茶)
金銀花茶は、スイカズラの花を乾燥させたハーブティーです。スイカズラの花を乾燥させたものは、金銀花という生薬としても有名で、それを煮出したものが金銀花茶です。解熱、利尿作用、消化器系に効果があるといわれています。スイカズラ茶という名前でも流通しています。
忍冬酒(にんどうしゅ)
忍冬酒は、スイカズラの花を焼酎やホワイトリカーに付け込んだ薬草酒です。他の花を混ぜたり、砂糖を加えて漬けこんだりする作り方もあります。花の香りを楽しんだり、薬効を期待して飲まれています。
ハニーサックル・カクテルのレシピ
スイカズラの名前が付いたハニーサックルという名前のショートカクテルがあります。このカクテルの特徴は蜂蜜が使われているところ。カクテルにスイカズラの花が使われているわけではありませんが、名前が使われているというだけでちょっと親近感が湧きます。
基本の材料
※ショートカクテルなので、出来上がりが60~90mlくらいになるように配合してください。
- ホワイトラム 3/4
- レモン果汁 1/4
- 蜂蜜 1匙
作り方
すべての材料をシェーカーに注ぎ、ハチミツがしっかり溶けるよう、強くシェイクしてグラスに注ぎます。
蜂蜜は溶けにくいので、しっかり溶かすように意識しましょう。甘い方が好きな方は、蜂蜜の量を増やして調整してください。
スイカズラ(忍冬)が登場する物語
赤毛のアン モン・ゴメリー作
アンが少女から青春時代を過ごしたプリンスエドワード島には、たくさんのスイカズラが咲いていたのでしょう。様々な場面でスイカズラ(忍冬)の花が登場します。アンの幸せを祝福するように、彼女の記念すべき門出でもスイカズラが香りの良い花を咲かせています。
偉大なワンドゥードル最後の一匹 ジュリー・アンドリュース作
女優ジュリー・アンドリュースが書いたファンタジー小説です。ワンドゥードルという不思議な生き物に会うために、教授と子供たちが協力し合って冒険する物語。この小説の中でスイカズラは、みんなに希望を与えるようにその香りを漂わせて大切な場所のヒントを与えてくれています。
真夏の夜の夢 シェークスピア作
多くの人に愛されてきた、夏至の夜の妖精と恋人たちの物語。妖精の女王が眠る寝室には野ばらとスイカズラの天蓋のベッドが登場します。野ばらとスイカズラの天蓋のベッドで眠れたら、甘い香りで幸せな夢が見られそうです。この物語は夏至の夜が舞台なので、ちょうどスイカズラが咲き誇っている頃です。
スイカズラ(忍冬)の外国語の名前
日本だけなく、世界中で愛されるスイカズラ(忍冬)の花。ここでは各国の名前を紹介します。
- 和名:吸葛(スイカズラ)、忍冬(ニンドウ)、金銀花(キンギンカ)
- 英名:Honeysuckle(ハニーサックル)、Woodbine(ウッドバイン)
- 仏名:Chevrefeuille(シェーブルフォイユ)
- 伊名:Caprifoglio(カープリフォリオ)
スイカズラは、甘い香りと優美な曲線が魅力で、世界中で愛されている花です。反面、繫殖力が強いためにはびこりすぎて、一部外国では厄介な害草として扱われていることもあるとか。愛されるか嫌われるかは紙一重といったところでしょうか。
馴染みがあるようで意外と知らないスイカズラ。日本や東アジア原産の植物でありながら、海外での方が人気が高いちょっと変わったポジションにある植物です。初夏に漂う甘い香りとつる植物特有の優美な草姿も併せて、スイカズラの魅力を見直してみてください。
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