オリンピック2020花壇で使われている夏に強い花を取材してきました!
とまつあつこ
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東京2020オリンピック競技大会に向けて、数年前から夏に強い花のテストを繰り返して湾岸エリアに作られた、花で装飾された大規模なガーデンを知っていますか?シンボルプロムナード公園に整備された「マスコットガーデン」と「アートガーデン」の様子と、強い日差しの中で咲き誇る「夏の花」を取材してきました!
目次
2020花壇って何?
2020花壇は、植物で街を効果的に装飾してオリンピック競技大会を盛り上げるとともに、大会を世界に印象付けるために作られました。湾岸エリアにあるシンボルプロムナード公園の「石と光の広場」にマスコットガーデン、「夢の広場」には2014年から準備してきた「おもてなしガーデン」を含めたアートガーデンがあり、2つの広場の間に夢の大橋がかかっています。
夢の大橋に設置されたフラワーメリーゴーランド
2020花壇とは、「マスコットガーデン」「アートガーデン(おもてなしガーデン、和の庭、情熱の庭)」の総称です。それぞれテーマや思いがあり、猛暑の中での工夫も行われています。
例えば、写真のペチュニアが植えられているフラワーメリーゴーランドは、ソーラー電池で自動潅水ができます。水は内部に200ℓ入り、満杯に入れておけば2週間程度水やり不要だそうです。
和の庭に設置されたフラワーキャンバス
フラワーキャンバスには、ペチュニアでTOKYO2020の文字が作られています。キャンバスという名のとおり、植栽のメンテナンスをされている方が、まるで絵を描いているように見えます。
夏に強い花は長年に渡り開発・試験・研究され、2014年から公園内で実施してきた夏花トライアル(お台場おもてなしセレクション)にて選出された、暑さに強い花を使うことで、猛暑でも見ごたえのあるガーデンの展示が可能になっています。
写真左から東京港埠頭株式会社の兼子将さん、園芸家の杉井志織さん、 植物商店 KESHIKI 店長・松沼孝至さん
そんな2020花壇は、園芸家の杉井志織さんをはじめ、様々な方の細やかな手作業によって美しく保たれています。
2020花壇の植栽管理をされている杉井志織さん、東京港埠頭株式会社の兼子さんにお話を聞くことができ、猛暑の中でもイキイキと咲く花たちを教えてもらってきました!
杉井さんによると、「とにかく丈夫で次々と咲き、セルフクリーニングしてくれる植物(咲き終わった花が自然に落ちたり、咲き終わった花の上に新しい花が咲く、花がら摘みが不要なもの)を選ぶと管理が楽でおすすめです!」とのこと。後ほど、夏に強い花をたっぷりご紹介しますね。
▼過去に園芸家の杉井志織さんにインタビューした記事はこちら
2020花壇・それぞれのガーデンの特徴
マスコットガーデン
マスコットガーデンは、花で装飾した約5mの巨大マスコットモニュメントを中心としたデザイン花壇です。
マスコットの周囲にも夏に強い花がたくさん咲いています。マスコットに向かって右側はピンク系で統一。ニチニチソウ、センニチコウ、ペチュニアなどが育っています。
向かって左側は、アゲラタム、サルビア、ペチュニア、トレニアなどでブルー系の植栽が作られています。
▼アゲラタムについてはこちら
▼トレニアについてはこちら
マスコットの装飾に使われている花は、2644株ものペチュニア。花で作る立体のシンボルマスコットは、なんとオリンピック史上初だそうです。
▼ペチュニアについてはこちら
頭の部分の白いペチュニアが、太陽を浴びてイキイキと咲く姿が印象的でした。
手の部分のピンクのペチュニアもとってもきれいに咲いています!
モニュメントの後ろには、「TOKYO2020」の花文字が作られています。ビルの上から見たらさらにはっきり見えそうですね!
TOKYO2020の文字は赤のベゴニア、周りは白のセンニチコウ、ペンタス、ユーフォルビア’グラマー’などで飾られていました。
▼ベゴニアについてはこちら
マスコットガーデンがある「石と光の広場」の向かい側には「花の広場」があり、「花」という文字のモニュメントも。とてもインパクトが強くて驚きました。
(東京2020オリンピック競技大会とは特に関係がなく、「花の広場」のイメージモニュメントとして2018年に設置されたそうです。)
アートガーデン
おもてなしガーデン
おもてなしガーデンは、2014年からエリアごとに様々な企業や個人の方が参加して制作展示されてきたガーデンです。
写真はサカタのタネのエリア。東京の伝統工芸品である江戸切子のイメージを取り入れた和モダンガーデンです。ハンギングスタンドには、銅葉の美しいベゴニア品種「セネタ」、緑葉の「アンバサダー」が使われています。
ブルーサルビア、コリウス、サルビア、ペンタス、ジニアなどを使って、きれいなボーダーガーデンが作られていました。
▼サルビアの詳しい育て方はこちら
敷地内に大輪の赤い花が華やかに咲いている姿が目立ちました。赤塚植物園の「タイタンビカス」です。
タイタンビカスは、アメリカフヨウとモミジアオイの交配種。その性質は驚異的に強健で、日当たりさえ良ければ特に植える場所を選ばないとか。暑さに強く西日の当たる場所でも大丈夫だそうです。宿根草なので地上部を枯らして越冬し、春になるとまた芽吹いて花を咲かせてくれます。
飯塚園芸のエリアでは、「ジニア’プロフュージョンレッドイエローバイカラー’」と赤い「コリウス’ハイウェイ’」の組み合わせがとても美しく、目を引きました。
こちらは、「ジニア’プロフュージョンピンクバイカラー’」とライム色の「コリウス’ハイウェイ’」の組み合わせ。同じ草花でも色合わせが違うと全く違う雰囲気が作れますね。
ハルディンのエリアには、色とりどりの「栄養系コリウス」がみずみずしく育っていました。栄養系のコリウスは花が咲きにくく、鮮やかな色が時期に応じて変化するそうです。
▼コリウスについて詳しくはこちら
こちらもハルディン。1株から1000輪咲くというヒマワリは、「サンビリーバブル」という品種。「コリウス’レッドヘッド’」、「ペチュニア’粋な小町’」、「ポーチュラカ’夏ちゅらか’」などを使って、見事なサマーガーデンが作られていました。
▼ヒマワリ’サンビリーバブル’について詳しくはこちら
そして暑い中、真っ赤なバラが見事に咲いているエリアをみつけました。高松商事の「トゥルーブルーム」の「レッドキャプテン」という品種のバラです。
「バラは難しい。」と思っている方に楽しんでもらうために育種された、とても強いバラ。日本の環境に適していて、連続開花性に優れ、春から晩秋まで長い間花を楽しむことができるそうです。バラを育ててみたいけど手を出せなかった人が育ててみるのにぴったりなバラだそうです!
和の庭
和の庭は、日本庭園技術を遺憾なく発揮し、世界の人々をおもてなす「おもてなし」の花修景を実現させるため、桃山時代後期に興り近代まで活躍した、琳派の絵画手法を参考にしています。
「藍」を基調に、「曲線の流れは、水、滝、龍のように、花は涼し気に凛と咲く」琳派の絵をイメージしてデザインされました。
和の庭のピンク色に見える部分には、センニチコウ、ペチュニア’さくらさくら’、ペンタス’ラッキースターピンク’と’ラッキースターバイオレット’(M&Bフローラ)、アンゲロニア、ニチニチソウなどが使われています。
白×紫のアンゲロニア、ピンクのアンゲロニア、白のセンニチコウ、クレオメが混ざり合って咲いている場所もとても美しいグラデーションになっています。
藍色の信楽焼と五葉松(ゴヨウマツ)が数株配置され、和の庭のフォーカルポイントが演出されています。
藍色の信楽焼の鉢に、ブルーの桔梗(キキョウ)が咲いている姿も和のイメージにぴったりで美しかったです。
暑い日差しの中、八重咲き、絞り咲きなど、こだわりの桔梗が隣とした花姿で涼し気に咲いていました。
▼桔梗についてはこちら
情熱の庭
情熱の庭は「紅」を基調に、「世界から人々が集まり、暑く戦い、語り合う」世界の熱い思いをイメージしたデザインになっています。縁取りに効果的に使われている赤いコリウスは、サカタのタネ「ゴリラJr. シリーズ」。大きく育ちながら、伸びすぎずガッチリとした美しい草姿が魅力です。
赤い花はケイトウ。サカタのタネの「ケイトウ’チャイナタウン’」と「ケイトウ’レッドクリフ’」です。情熱的な赤い花穂と、銅葉色の葉が美しく存在感たっぷりです。
▼ケイトウについて詳しくはこちら
写真手前の赤い花は、ベゴニア。エッチ・アイ・ジェイ/フジフローラの「ベゴニア’ビッグデラックス銅葉レッド’」です。非常に強健で、梅雨時期も暑い時期にも花が途切れることなく咲き続けます。ベゴニアの向こう側には、茎を伸ばした先にできる丸い苞が可愛い、センニチコウが咲いています。
銅葉色の部分は、イチローカンパニーの「イポメア’ブラッキー’」、タキイ種苗の「トウガラシ’オニキスレッド’」です。ライム色の部分は、イチローカンパニーの「イポメア’ライム’」と、サカタのタネ「ゴリラJr. シリーズ」のコリウスが使われています。
情熱の庭には、様々な木が植栽されているので木陰もあります。猛暑には、人も植物もほっと一息できるエリアです。そんな木陰にも可愛い花が流れるようなフォルムを作って美しく育っていました。
ジニア’プロフュージョンファイヤー’(サカタのタネ)、アンゲロニアセレニータシリーズ(M&Bフローラ)などの花が混ざり合って咲く姿は、まさに花たちが集まって語り合っているようなイメージに思えました。
2020花壇に使われている夏に強い花をご紹介!
紹介しきれなかった夏に強い花を、アップの写真と一緒に紹介します!
ニチニチソウ
情熱の庭
写真は、ニチニチソウ’タイタンレッド’(M&Bフローラ)。花が大きく、耐暑性、連続開花性に優れています。紫のアンゲロニアとの組み合わせが情熱的で美しく、印象的でした。
和の庭
ピンク色のニチニチソウは、ピンク色のアンゲロニアと組み合わせると、この上なくラブリーな雰囲気になりますね。写真は、ニチニチソウタイタン’アイシーピンク’(M&Bフローラ)です。
和の庭
白のニチニチソウは、花壇の縁取りに使われていました。清楚で上品でどんな花とも合わせやすく万能です。ニチニチソウは咲き終わった花が自然に落ちて新しい花が開花するので、花がら取りの作業がいらない優れものです。落ちた花を拾って捨てておけば病害虫の心配もありません。写真は、ニチニチソウ’サンダーホワイト’(サカタのタネ)です。
▼ニチニチソウの育て方はこちら
ジニア
情熱の庭
ジニア’プロフュージョン’は、丈夫で病気に強く、花径約6cmほどの花が夏から秋まで咲き続けます。花が咲き終わると、咲き終わった花を覆い隠すように新しい花が咲く性質(セルフクリーニング性)があります。写真はジニア’プロフュージョンアプリコット’(サカタのタネ)です。
情熱の庭
真ん中の白い花は、小輪タイプのジニア。細葉百日草とも呼ばれます。ジニア’プロフュージョン’との違いは、葉が細く、花が小さ目(花径約4~5cm)なところです。プロフュージョンと同じように、セルフクリーニングしてくれる花です。写真はジニア’プチランドホワイト’(タキイ種苗)です。
▼ジニアの詳しい育て方はこちら
センニチコウ
情熱の庭
センニチコウは、真夏の暑い時期でも元気に咲き続け、株元がしっかりして倒れにくい特長があります。写真は、センニチコウオードリーシリーズの’パープルレッド’(タキイ種苗)です。
マスコットガーデン
センニチコウは「千日紅」と書くのですが、それは、花が色あせない性質に由来します。実は、花に見える丸い部分は、苞葉(ほうよう)という花の付け根の葉です。苞葉は乾燥しても色あせないので、長い間観賞できます。写真はセンニチコウ’オードリーピンクインプ’(タキイ種苗)です。
和の庭
センニチコウは茎が固く、切り花にも向いていて、ドライフラワーにしても楽しめます。写真はセンニチコウ’ネオンホワイト’(サカタのタネ)です。
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アンゲロニア
夢の大橋
アンゲロニアは、初夏から秋に小さな花(花径1cmほど)を次々と咲かせます。茎は直立して生長し、茎の先端や葉の付け根に穂状の花をつけます。夏の高温に強く、半日陰でも花を咲かせるなど、丈夫で育てやすい花です。写真はアンゲロニア’セレニータパープル’(M&Bフローラ)です。
和の庭
アンゲロニアの花色は紫色やピンク、白、二色混ざったタイプなどがあります。くせが無い爽やかな花なのでどんな花とも合わせやすいです。写真はアンゲロニア’セレニータピンク’(M&Bフローラ)です。
和の庭
二色混ざったた華やかなアンゲロニアはこちら。写真は、アンゲロニア’エンジェルフェイスウェッジウッドブルー’(ハクサン)。アンゲロニアの名は、天使をラテン語で表した「Angelos(アンゲロス)」が由来と言われ、別名では「エンジェルラベンダー」とも呼ばれることもあります。
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ペチュニア
和の庭
フラワーキャンバスの花文字に使われていたのは白とブルーのペチュニア。マスコットの装飾やフラワーメリーゴーランドにもペチュニアが使われていました。ペチュニアは上手に剪定すると枝分かれして、春から秋までたくさんの花を咲かせます。写真の白いペチュニアは、杉井明美さん作出のペチュニア’おゆきちゃん’です。
和の庭
ペチュニアは色幅も豊富で、一重や八重咲きなど咲き方も様々あり、花の大きさも大輪から小輪と様々です。写真は杉井明美さん作出のペチュニア’さくらさくら’。淡い桜色が美しく、病害虫や雨に強く、花付きが良いペチュニアです。高温期には花色が濃くなる特徴があります。
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クレオメ
情熱の庭
クレオメは、まるで蝶が舞っているような花姿をしています。主張しすぎず、他のどんな花とも調和した花壇を演出してくれます。写真はクレオメ’セニョリーカロリーナ’(ハクサン)。トゲがなく、ベタベタしない、臭くないクレオメです。種がつかず、庭で勝手に繁殖しません。暑さや乾燥に強く、分枝が良くたくさんの枝から連続開花します。
和の庭
こちらは、クレオメ’セニョリータブランカ’(ハクサン)。咲き終わった花は自然に落ち、さらに伸びた茎の先に新しい花が咲く、セルフクリーニング性が高い花です。
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ペンタス
マスコットガーデン
ペンタスは小さな星型の花が傘状に集まって可愛い花が咲きます。丈夫で夏の暑さに強く、咲き終わった花は自然に落ち、次々と新しい花が春から秋まで咲き続けます。花色は、白の他、ピンク、紫、赤などがあります。写真は、ペンタス’パニックタワーホワイト’(カネコ種苗)です。
▼ペンタスの詳しい育て方はこちら
ポーチュラカ
おもてなしガーデン
ポーチュラカは多肉質の葉と茎をもつ、暑さや乾燥に強い花です。這うように広がり、カラフルな花を初夏から秋まで次々と咲かせます。写真はハルディンの「ポーチュラカ’夏ちゅらか’」。真夏の直射日光に強く、花付き抜群でまとまりよく咲きます。低日照でも咲く特長もあります。花色はピンク、オレンジ、紫、複色、ストライプなど様々です。
▼ポーチュラカの詳しい育て方はこちら
観賞用トウガラシ
おもてなしガーデン
観賞用トウガラシはトウガラシの仲間ですが、あくまでも観賞専門で食用にはできません。実の色は、赤、黄色、オレンジ、黒、紫などカラフルな色合いで、形も食用のトウガラシのような形の他、丸い実など様々です。最近は葉っぱにもこだわった観賞用トウガラシもあり、カラーリーフの素材としても注目が集まっています。
写真はタキイ種苗の「オニキスレッド」。高温条件でも生育旺盛で、基本的に頂点に実ができます。花壇や寄せ植えにこんなダークカラーの葉を使うと、シックで大人っぽい雰囲気が演出でき、他の植物の鮮やかな色の美しさをさらに引き立てることもできます。
▼観賞用トウガラシの詳しい育て方はこちら
イポメア
情熱の庭
イポメアは、サツマイモの園芸品種。美しい大きな葉を楽しむカラーリーフです。暑さに負けず、つるがぐんぐん伸びて広がります。写真はイポメア’ライム’(イチローカンパニー)。ボリュームいっぱいで、日向でも葉焼けせず、涼しげな印象です。
情熱の庭
こちらは、イポメア’ブラッキー’(イチローカンパニー)。カエデの葉の形をした銅葉色のイポメアです。情熱の庭で、ライム色と銅葉色のコントラストがダイナミックに作られていました。
夏に強い花を育ててガーデニングを楽しもう!
オリンピック競技大会に向けて、様々な企業やプロのガーデナーの方、ボランティアの方によって、夏に強い花の研究やテスト、改良と植え付け、メンテナンスが行われ完成した2020花壇。それはとっても広大で美しく、訪れた人をもてなす気持ちがあふれ、心を癒してくれる素敵な場所でした。
皆様もぜひ、2020花壇に使われていた「夏にとびきり強い花」をご家庭でも育ててみてくださいね。
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