和のハーブとは?身近な薬味から薬草まで27種。種類や利用法、料理など
山田智美
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和のハーブって何?どんな種類があるの?そんな疑問にお答えします。種類、利用法や楽しみ方、料理、ハーブティーなど。和のハーブについて詳しく紹介します。
目次
和のハーブとは?
和のハーブとは、古来より日本で親しまれてきた薬草や香草のことです。
ハーブ(herb)とは、薬草や香草のことを指す英語。薬用や食用、香りなど、人間にとって有用な植物を総称してハーブと呼びます。
ハーブとカタカナで書くと西洋のイメージが強くなりますが、日本でも古来より様々なハーブを生活に取り入れてきました。
例えば、1月7日に食べる七草粥は、冬の寒さを乗り越えて出てきた新芽を体内に取り入れることで、邪気を払い、健康を祈願するためのものです。
10月10日の重陽の節句には菊酒を飲み、菊の香りを身にまとって、長寿を祈願したといいます。
今でも薬味として大葉やショウガを用いたり、体を温めるために葛湯を飲んだりと、和のハーブは私たちの生活と密接な関係にあります。
和のハーブの種類27種
和のハーブと言われるものを紹介します。こんなものまで、というような身近な植物ばかりです。
浅葱(アサツキ)
- 科名・属名:ヒガンバナ科ネギ属
浅葱(アサツキ)は日本原産のネギの仲間。明るいグリーンとネギ特有の香りが魅力です。薬味や料理の彩りとして多用されます。
山椒(サンショウ)
- 科名・属名:ミカン科サンショウ属
山椒(サンショウ)はピリリとした風味が特徴のミカン科の落葉低木。葉だけでなく、春には花、初夏には果実まですべて食用になります。ウナギの薬味として有名です。
大葉(青紫蘇)
- 科名・属名:シソ科シソ属
大葉(青シソ)は爽やかな香りが特徴の一年草。生長が早く、初夏から秋まで次々と収穫できます。こぼれダネでも増えるので、なぜか毎年庭に生えてくるというようなこともあります。
香りの良い葉を薬味にするほか、花の部分は花穂シソ、実は穂シソと言って、同じく薬味に使用します。
赤紫蘇
- 科名・属名:シソ科シソ属
赤紫蘇はシソ科の一年草。葉の色がグリーンの種類は大葉(青紫蘇)、赤い種類は赤紫蘇と呼ばれます。赤紫蘇は主に梅干しの色付けに使用されます。
生姜(ショウガ)
- 科名・属名:ショウガ科ショウガ属
生姜(ショウガ)は熱帯アジア原産の多年草。食用にするのは主に根の部分です。生姜(ショウガ)は世界中で利用されているハーブです。日本では奈良時代には栽培されていたとされています。
料理の薬味の他、肉料理や魚料理の臭み消し、シロップ、ジンジャーエールなど、楽しみ方は多岐に渡ります。
ミョウガ
- 科名・属名:ショウガ科ハナミョウガ属
ミョウガは日本に自生するショウガ科の多年草。食用にするのは花のつぼみと新芽です。ミョウガはシャキシャキとした食感と独特の風味が特徴です。
わさび(山葵)
- 科名・属名:アブラナ科ワサビ属
わさび(山葵)は日本原産のアブラナ科の多年草。葉茎や根茎を食用にします。鼻にツンとくる風味が特徴です。昔からわさび(山葵)には殺菌力があるとされ、刺身の薬味として使用されてきました。
フキ
- 科名・属名:キク科フキ属
フキは日本原産のキク科の多年草。日本の山野に自生しています。食用にするのは葉柄(ようへい)の部分です。初春に姿を見せるフキノトウはフキの花のつぼみです。フキノトウは春の味覚として人気の山菜です。
ヨモギ
- 科名・属名:キク科ヨモギ属
ヨモギは日本の河原や野原に自生するキク科の多年草。昔から春に新芽を摘んでヨモギ餅にするほか、天ぷらやお浸しなど、食用にされてきました。また、お灸のもぐさや、薬用酒などにも使用される、日本の万能ハーブです。
蓼(タデ)
- 科名・属名:タデ科タデ属
蓼(タデ)は独特の香りと辛味が特徴のタデ科の多年草。鮎の塩焼きに添える蓼酢の原料として有名です。
ウイキョウ
- 科名・属名:セリ科ウイキョウ属
ウイキョウは別名フェンネルとも呼ばれるセリ科の多年草。糸状に裂けた明るいグリーンの葉と、全草に甘い独特な香りを持つハーブです。ウイキョウは葉茎、花、果実まですべてが食用になります。果実を乾燥させたものが生薬の茴香(ウイキョウ)です。
ハハコグサ
- 科名・属名:キク科ハハコグサ属
ハハコグサは春に黄色の小さな花を咲かせるキク科の越年草。別名をゴギョウ(御形)と言い、春の七草に数えられます。昔は草餅に入れるのはヨモギではなく、このハハコグサだったそうです。
ナズナ
- 科名・属名:アブラナ科ナズナ属
ナズナは春に小さな白い花を咲かせるアブラナ科の越年草。春の七草の一つとしても有名です。1月7日に七草粥を食べて万病を防ぐという風習は平安時代からあったとされています。
ドクダミ
- 科名・属名:ドクダミ科ドクダミ属
ドクダミは全草に独特の臭いを持った多年草。名前の由来は、毒や痛みを取るという意味の「毒痛み」がなまったという説、毒を全草に溜め込んでいるから「毒溜め」がなまってドクダミになったという説もあります。毒矯めはドクダメと読み、毒を抑える薬草という意味です。
名前の由来には諸説ありますが、ドクダミは薬草として重宝されている植物です。毒があるどころか10の効果があると言われ「十薬」という異名も持ちます。
スイカズラ
スイカズラは日本の山野に自生するつる植物。学名はLonicera japonica、日本原産です。花には甘い蜜と芳香があるのが特徴です。スイカズラの花色は白から黄色へと変化していくので金銀花という別名もあります。花を乾燥させたものはお茶や生薬として利用されます。
菊(キク)
- 科名・属名:キク科キク属
菊(キク)は中国原産の多年草。昔の中国では不老不死の薬草と信じられ、重陽の節句には屋外で菊酒を飲み、災いを退けたり不老不死を願ったりしていたそうです。その習慣が日本にも伝わり、重陽の節句に菊酒を飲み、菊を包んだ綿や菊の香りを染み込ませた布で体を拭くなどして、若返りを祈願するようになったと言われています。
藤袴(フジバカマ)
- 科名・属名:キク科ヒヨドリバナ属
藤袴(フジバカマ)は秋に薄紫色の花を咲かせる多年草。遠い昔に薬草として中国から渡ってきたとされています。葉に桜餅を思わせるような芳香があるのが特徴です。
藤袴(フジバカマ)の香りには邪気を払う力があると信じられ、昔の日本の貴族たちは乾燥させたフジバカマの葉を着物に忍ばせて香りを身にまとったそうです。
スギナ(ツクシ)
- 科名・属名:トクサ科トクサ属
スギナ(ツクシ)はトクサ科の多年草。ツクシはスギナの地下茎から出てくる胞子茎です。春に顔を出すツクシはお浸しやキンピラにして食用にします。スギナは乾燥させてお茶や生薬の問荊(もんけい)にされます。
クサノオウ
- 科名・属名:ケシ科クサノオウ属
クサノオウはケシ科の越年草。初夏に黄色のかわいらしい花を咲かせます。昔はクサノオウの茎を折ると出てくる黄色い液体を止血に使用したと言います。ただし、この液体はアルカロイドを含んでいるので間違っても口に入れることのないようにしましょう。クサノオウは乾燥させて白屈菜(はっくつさい)という生薬として利用されます。
クコ
- 科名・属名:ナス科クコ属
クコは秋に赤い果実を実らせる落葉低木。クコの実はビタミンB群やCを多く含み、ゴジベリーという別名で美容フードとして人気があります。また乾燥させた葉は枸杞葉(クコヨウ)、根皮は地骨皮(ジコッピ)という生薬にされます。
葛(クズ)
- 科名・属名:マメ科クズ属
葛(クズ)は日本の山野及び街中の公園や空き地などで見かけるつる性の多年草。秋の七草の一つとしても有名です。秋に咲く花にはブドウのような芳香があります。
葛(クズ)の根を掘り上げて外皮を取り、細かくして乾燥させたものを原料としているのが生薬の葛根湯です。また、葛(クズ)の根から抽出したでんぷんは葛粉といってお菓子や料理に使用されます。
ユズ
- 科名・属名:ミカン科ミカン属
ユズは香りが良いのが特徴のミカン科の常緑高木。果皮や果汁を薬味や香りづけに使用します。冬至に入るユズ湯には邪気払い、厄除けなどの意味があるとされています。
橙(ダイダイ)
- 科名・属名:ミカン科ミカン属
橙(ダイダイ)はミカン科の常緑高木。橙色の語源にもなっているように、きれいなオレンジ色の果実を実らせます。英名はビターオレンジ。橙(ダイダイ)の名前と「代々」をかけて、正月の縁起物としてお飾りに使用されます。
橙(ダイダイ)の乾燥させた果皮は橙皮(とうひ)、未熟な果実を乾燥させたものは枳実(きじつ)と呼ばれ、生薬にされています。
ムベ
- 科名・属名:アケビ科ムベ属
ムベはアケビ科のつる性常緑木本。アケビと違い常緑で、果実は割れません。その昔は不老長寿の果実と言われていました。
果実は甘く食用にされます。茎や根を乾燥させたものは野木瓜(ヤモクカ)という生薬になります。
ニワトコ
- 科名・属名:ガマズミ(レンプクソウ)科ニワトコ属
ニワトコは日本の山野に自生する落葉低木。春に白い花を咲かせます。エルダーフラワーと呼ばれるのはセイヨウニワトコのことで、ヨーロッパ原産の近縁種です。
ニワトコは花、葉、茎、根まで生薬にされます。それぞれ、接骨木花(せつこつぼくか)、接骨木葉(せつこつぼくよう)、接骨木(せつこつぼく)、接骨木根(せつこつぼくこん)という名前で区別されています。
クロモジ
- 科名・属名:クスノキ科クロモジ属
クロモジは日本の山野に自生する落葉低木。クロモジの枝は爪楊枝の原料にされています。幹や枝に爽やかな香りがあるのが特徴です。クロモジから採れる精油は爽やかで香り高く、和の精油として人気があります。乾燥させたクロモジの枝や幹からはウショウ(烏樟)という生薬が作られます。
チャノキ
- 科名・属名:ツバキ科ツバキ属
チャノキは緑茶や紅茶の原料となる常緑低木。葉を摘んでお茶にします。日本では古くから緑茶を嗜好品として楽しんできました。カフェイン、タンニン、フラボノイド、ビタミンCを含みます。
和のハーブの利用法や楽しみ方
薬味や料理の香りづけ
私たちがすでに日々の食生活に取り入れている利用法です。ショウガや大葉、ミョウガなど、香りの良い種類を料理の薬味として使用します。もっとも身近で手軽な利用法です。
香りを楽しむ
ユズや橙(ダイダイ)、フジバカマのような香りの良い植物を乾燥させて、ポプリにして楽しむ利用法です。ふわりと自然な香りが部屋の中に漂います。
お茶にする
好きな和のハーブを乾燥させ、煎じてお茶にするという楽しみ方もあります。
眺めて楽しむ
和のハーブにはスイカズラや菊、フジバカマのような美しい花を咲かせる種類もあります。育てて、観賞して、生活に取り入れてみるのはいかがでしょうか。
和のハーブでチンキ作り
ドクダミなど抗菌作用のある植物を乾燥させて家庭でチンキを作ってみませんか。
▼ドライハーブのチンキの作り方
和のハーブを料理に
和のハーブを料理に取り入れましょう。気軽に楽しめる和のハーブを使ったレシピを紹介します。
しその育て方と塩漬けの作り方
生長が早く、次々と収穫ができるしその楽しみ方です。自宅で育てれば、いつでも薬味に使用できます。まとめて収穫したら、塩漬けにして保存しましょう。
▼和のハーブ!しその育て方と保存法「しその塩漬け」
ポン酢の作り方とポン酢を使った料理
基本のポン酢の作り方と柚子ポン酢の作り方、ポン酢を使った料理レシピまで。香り良いポン酢を自宅で堪能してください。
▼ポン酢の基本や柚子ポン酢の作り方、料理レシピまで!
山うど(山独活)の下ごしらえからおいしい食べ方
山うど(山独活)も和のハーブの一つ。歯ごたえがたまらない山菜です。ここで紹介している下ごしらえや料理レシピは、スーパーで売っているうどにも活用できます。
▼山うど(山独活)のあく抜きや下ごしらえ|美味しい食べ方と栄養
和のハーブティー
ハーブティーとは、植物の葉や茎、花、果実などを煎じた飲み物です。ハーブは乾燥させたもの、あるいはフレッシュのものを使用します。
スイカズラ、ドクダミ、ユズや橙(ダイダイ)の果皮などが和のハーブティーに向いています。
ハーブティーの目安は、ティーカップ1杯分のお湯にティースプーン1杯強のドライハーブです。95~98℃程度のお湯を注ぎ、3~5分蒸らしたら出来上がりです。
▼ハーブティーについて詳しくはこちら
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